歯科医院向け通販を展開する歯愛メディカルは5月9日、ニッセンホールディングス(HD)を子会社化すると発表した。セブン&アイ・ホールディングス(HD)子会社のセブン&アイ・ネットメディアより、7月1日付で株式を譲受する。取得価額は41億9900万円(アドバイザリー費用9900万円含む)。歯愛メディカルでは、歯科医院の女性医療従事者向けにニッセンのアパレルなどを販売したい考え。
かつての雄も企業規模は縮小
セブン&アイHDでは2014年1月、セブン&アイ・ネットメディアを通じ、TOBと第三者割当増資によりニッセンHDの発行済み株式を過半数取得。金額は合計で約133億円だった。
かつてはカタログ通販の雄だったニッセンHDだが、ネット販売企業やユニクロなどのSPAに押される形で、買収直前となる13年12月期のニッセンHDは、最終赤字を計上するなど業績が低迷していた。ただ、セブン&アイHDでは「ニッセンHDのカタログ販売やインターネット技術を高く評価しており、当社グループのリアルな店舗という強みと融合することで、新たなシナジー効果が生まれる」(当時の村田紀敏社長)と判断、子会社化に踏み切っていた。
しかし、その後もニッセンHDの業績は低迷。当時、セブン&アイHDが推進していた、オムニチャネル戦略からも事実上外されるなど、苦境が続いていた。15年8月には大規模な経営合理化を実施、ソファーやベッドといった大型家具事業から撤退したものの、これにより想定以上に稼働客数が減少。16年には債務超過寸前まで陥ったこともあり、同年11月にセブン&アイ・ネットメディアとの株式交換を実施、ニッセンHDはセブン&アイ・ネットメディアの完全子会社化に。その後は「大きいサイズ」アパレルなど、ニッチ分野を強化、企業規模は大きく縮小していた。
富裕層の女性もターゲットに
ニッセンHDの24年2月期連結業績は、売上高が前期比3.6%減の395億7100万円、営業利益は同40.0%減の2億1100万円。純資産は237億2300万円のマイナスで、大幅な債務超過だった。
そのため歯愛メディカルでは、7月1日までにセブン&アイ・ネットメディアがニッセンHDの第三者割当増資を引き受けることにより、グループ内貸し付けの全額と債務超過が解消されることを前提に、株式取得を実行する予定。なお、ニッセンHDは外部金融機関からの借り入れはないため、第三者割当増資により借入金はなくなる見込み。
買収の狙いについて、歯愛メディカルの三好誠治取締役経営管理部長は「歯科医院は女性従業員が多いため、ニッセンの手がける衣料品やサービスとの相性が良いのではないか」と説明。歯科は個人医院の経営者など、比較的年齢層の高い富裕層が多い。歯愛メディカルでは富裕層のシニア女性向けフリーペーパーで直販を展開しており、好調に推移しているという。こうした層に向け、ニッセンの商品を提案していく考えもあるようだ。
一方、歯愛メディカルは歯科医院向けにオーラルケア商品を通販しており、近年は一般消費者向けでもこうした商材の需要が高まっていることから、ニッセンの顧客に販売していく。
ニッセンのブランドについては今後も維持するほか、現経営陣も続投する予定。また、生命保険代理業のニッセンライフや、クレジットカード事業のニッセン・クレジットサービス、そのたBtoB事業なども引き続き展開する。なお、後払い決済事業のSCORE(スコア)については、合弁先であるDGフィナンシャルテクノロジー(旧ベリトランス)に全株式を譲渡する予定。
ニッセンHDの成長性について、三好取締役は「減収が下げ止まった段階なので、効率化を進めるなど、収益力を高めていきたい」とした。
歯愛メディカルの23年12月期連結業績は、売上高が前期比6.4%増の456億2800万円、営業利益は同25.1%減の29億8900万円。ニッセンHDの買収で一気に売上高が拡大する。
昨年12月には、肌着の通販を手掛ける白鳩の株式を小田急電鉄より取得し、関連会社化していた。これについて、歯愛メディカルの三好取締役は「女性向け商品ということで当社と親和性が高いほか、ECに特化した企業なので、当社がECを強化するにあたり、白鳩のノウハウが活用できると判断した。一方、当社が展開するカタログに白鳩の商品が展開できるのではないかと考えている」と狙いを説明している。