中国発SNS「TikTok」のECサービスである「TikTokShop(TTS)」が6月30日より日本でも始まった。先行する海外ではその市場規模が急速に拡大しており、国内のEC企業や大手メーカーなどにとっても若年層を中心に新たな顧客が獲得できる売り場として期待が寄せられている。TTSのサービスの具体的な内容や今後の市場展望、また、支援企業によるTTSのサポート体制などについて見ていく。
TikTokShopとは?
動画の強み活かすことで「第一想起」になれるか
動画投稿アプリ「TikTok」は6月30日、アプリ内で商品の販売から購入が可能となるEC機能「TikTokShop」の提供を開始した。ショッピング機能付きの動画やライブ配信を、アプリの「おすすめ」フィードに表示することで、事業者はアプリ内のショッピング対応コンテンツを通じて消費者に直接販売できるようになる。
日本市場への展開はグローバルで17市場目となり、2024年12月以降では8市場目。日本では、毎月数千万人のユーザーがTikTokを来訪しており、動画を楽しむユーザーが自分に合った魅力的な商品をTikTok上で発見し、購入できるサービス。ショッピング動画やライブ配信を通じてユーザーはお気に入りのアイテムに出会い、その場で購入が可能となる新しい購買体験を、TikTokでは「ディスカバリーEコマース」と位置づけている。
TikTokShopでは、ショッピング機能付きの動画やライブ配信を「おすすめ」フィードに表示することで、ユーザーはフィードに表示される動画やライブ配信においてタグ付けされた商品を、その場で直接購入することが可能となる。事業者は、ショッピング動画では商品の特徴をデモンストレーションして強調することができるほか、ライブ配信では商品を紹介しながらリアルタイムでユーザーと対話して質問に答えることができる。
また、各ブランドのプロフィールページにて、商品一覧の閲覧やレビューの確認に加えて、商品を直接購入できる。企業は、自社ブランドの世界観に沿った商品コレクションを自由に構成・掲載できる。
数カ月後に導入予定の「ショップ」タブでは、企業の商品を一覧で掲載できるほか、ユーザーは検索機能を活用して、商品やプロモーションを簡単に発見し、購入することができり。注文の管理やおすすめ商品の表示なども、このタブ内で完結するという。
また、アフィリエイトプログラムも導入、クリエイターとセラーをつなぐ成果報酬型のプロモーション機会を提供する。クリエイターは、ショート動画やライブ配信を通じて商品を紹介することで報酬を得ることができ、セラーは自社ブランドに最適なアフィリエイトプランを選択のうえ、効果的な商品訴求を実現することが可能。
TikTokShopにおける商品掲載は、TikTokShopポリシーおよびコミュニティーガイドラインに準拠する必要がある。TikTokでは、技術と人間によるモデレーション審査を組み合わせることで、ポリシーの遵守を徹底するとしており、ガイドラインに違反していると判断したセラーや商品については、削除等の対応を行うという。
サービス提供開始と同時にI-ne、アンカー・ジャパン、ウィゴー、MTG、花王グループのKATE、CAGUUU、KINUJO、SHOPLIST、日清食品、丸善ジュンク堂書店、ヤーマン、yutori、ユニリーバ・ジャパン、Yogibo、ラコステジャパン、ワイ・ヨットなどをはじめとする多くの日本およびグローバル企業がTikTokShopに参画している。
「有力店舗」が台頭?
TikTokShopがスタートして2週間あまり。日本の消費者はどのように受容したのか。BASEのネットショップ作成サービス「BASE」では、利用店舗の商品情報や在庫数の自動連携を可能とする公式API連携機能「TikTokShop連携App」を独自に開発、「BASEApp」で提供している。同社の和田広大ソーシャルコマースセレクションマネージャーは「日本は海外と比較した場合、実店舗にアクセスしやすい環境にある。現状のTikTokShopは中国系のブランドが目立っており、『SHEIN』のようは『安かろう悪かろう』的な『ガチャ感』があると、『少し高くても実店舗で買った方がいいか』となってしまいかねない。商品の品質面で受け入れられるかどうかが、購入者アカウントを増やすためのポイントになるのではないか」と分析する。
その一方で、さまざまな仮想モールなどで商品を販売してきた事業者側からすると、TikTokShopは「新たな販路」であることは間違いない。品質が保証されている商材をアピールする絶好の機会でもあるからだ。和田マネージャーは「大手仮想モールで商売している事業者からすれば、『割引クーポンを発行することで垂直立ち上げをしよう』と考えるのは当然のこと。仮想モールで戦い慣れている事業者はすぐに台頭するのではないか。最終的には、そういった事業者がアルゴリズム的にも優遇されるのでは」とみる。
「2秒のヒキ」が大事
TikTokShopの広告ソリューションにより、セラーは自社商品の認知拡大および購買促進を図ることができるという。では、広告を出稿したり割引クーポンを発行したりすることが難しい、中小規模のEC事業者はどのようにTikTokShopを活用すれば良いのだろうか。和田マネージャーは「良く言われるのは、動画における『最初の2秒のヒキ』。つまり視聴継続率が大事になってくる」とアドバイスする。
TikTokを良く研究しているEC事業者の場合、同じ商品のクリエイティブを10本作り、反応の良かった数本だけ残すといった手法を使っているという。和田マネージャーは「商品の品質と同等、あるいはそれ以上に『プラットフォームのハック』が大事と割り切り、そこにリソースを割けるかどうかが大事になってくる」とした上で、「当社としても、TikTokShopで戦う上で、そういったことが重要だと伝えなければならないのは当然だが、反面そういったことをやりたくない事業者もたくさんいるわけで、何が『(BASEの)マーチャントファーストなのか』ということはしっかり考えないといけないだろう」と明かす。ただ、こうした「プラットフォームのハック」は、購入者にとって必ずしもメリットを生み出すとは限らない。品質の低い商品、あるいは景品表示法などの法律に違反した商品がバズるようなプラットフォームになっては元も子もない。
TikTokでは「すべての商品掲載は、TikTokShopポリシーおよびコミュニティーガイドラインに準拠する必要がある。TikTokでは、技術と人間によるモデレーション審査を組み合わせることで、ポリシーの遵守を徹底しており、ガイドラインに違反していると判断したセラーや商品については、削除等の対応を行う」としているが、近年アフィリエイト関連では「ステマ」など景表法の取り締まりが厳しくなっている。「行儀の良いプラットフォーム」になれるかどうか、EC事業者も注目すべきだろう。
「転換」起きるか
今後、TikTokShopが国内で流通額を拡大していく上で、何が重要になってくるのか。和田マネージャーは「ユーザーにとっての第一想起になれるかどうかがカギだろう」と断言する。例えばアマゾンや楽天市場といった仮想モールの場合、ユーザーが最も気にするのは「くちコミ」だ。しかし、TikTokの強みは動画。和田マネージャーは「『商品のユースケースが見られるから、TikTokで買ったら間違いないよね』という転換が起きるかどうか。ニッチなし好品を探すというよりは、これまで仮想モールで買っていた日用品の需要を取り込めるかどうかがカギになるのでは」と推測する。