本誌姉妹紙「週刊通販新聞」が行ったファッション商材の通販売上高調査では、ECモール運営企業を除いた売上高ランキングトップ10のうち、通販会社は4社、有店舗アパレルは6社で前年と同数だった。通販市場でも有店舗アパレルの存在感が高まっているが、店頭の回復に伴う在庫配分の変化に加え、OMOの推進に伴う物流費の増加や店頭スタッフの負担増といった課題も出てきており、アパレル大手も順風満帆ではない。一方でECモールは引き続きゾゾの強さが目立つ。ファッション通販市場における有力企業の動向を見ていく。
ファッション通販の市場分析
有店舗はモール型自社EC優位にゾゾは取扱高で6000億円突破
カタログや新聞、テレビなどに売り場を持つ総合系通販会社は前期、苦戦した企業が多い。通販会社としては毎年トップで、ファッション通販売上高ランキングで3位となったベルーナの2025年3月期は、円安や原材料・資材価格高騰の影響で、仕入れ原価が上昇。紙代・印刷費も値上がりしたため、収益性を重視して紙媒体の発行数量を減らすなど広告宣伝費の抑制を図った。新規顧客数は獲得効率が改善したことで増加したものの、稼働顧客数は既存ユーザーのリピート率が計画に届かず横ばいとなったが、アパレル・雑貨事業の赤字幅は縮小した。
千趣会の24年12月期は、基幹の通販事業で収益性の改善を図るためにオリジナル商品を中心とした価格の見直しなどを実施したものの、カタログ配布戦略の見直しや、LINE・SNSを活用した販促、優待プログラムの改定といった顧客接点再構築の取り組みが想定通りの効果を得られなかった。
テレビ通販については、通販専門放送大手のジュピターショップチャンネルが7位、QVCジャパンが9位とトップ10を守った。両社とも売上高の3割程度を衣料品およびジュエリーなどのファッション商材が占めていると見られる。
ショップチャンネルは、顧客視点での商品・番組、サービスの品質向上施策によって25年3月期は過去最高の売り上げを記録。主力のファッション分野も伸ばした。オフラインの取り組みでは、数量限定で希少性の高い高級バッグやジュエリー、衣料品などの販売とキャストによるトークショーなどを実施する「心おどるショップチャンネル特別ご招待会」を開催するなど、顧客と直接コミュニケーションがとれる機会を増やしている。
QVCジャパンも、ファッションアイテムを販売する通販番組に顧客を招いて観覧番組を行うなどユーザーとの接点作りを強化しているほか、売れ筋の衣料品を紹介するイベントを千葉・幕張の大型商業施設で開催。スタイリストによるコーディネート提案や、来場者参加型のファッションショー、著名人によるトークショーなどを行ったが、同社と同じ千葉市内に本社を構えるゾゾもイベントに参加して専用ブースを設けたほか、両社の社員によるファッション対決を行うなど、通販大手同士のコラボ企画も実現した。
衣料品がメインの通販企業は、フェリシモが主力の定期便事業において冬物商品が好調に推移したほか、売れ筋商品や関連商品のおすすめを強化したことで顧客購入単価が前年に比べて向上した。一方で新たな顧客獲得手法や潜在顧客へのアプローチが不十分だったこともあって通販サイトへの流入数が減少し新規顧客獲得数が減った。
靴のヒラキの25年3月期は、オリジナル商品としては高価格帯となる手を使わずに履ける靴を20デザイン投入し累計受注数が6万5000足を突破するなどヒット商品も生まれたが、仕入れ価格の上昇などによる価格改定に見合った商品の提供ができず、トータルの受注件数で前年を下回った。
モール利用の拡大傾向続く
ファッション専業のECモールについては、コロナ禍を経て消費者のEC利用が定着したこともあり、圧倒的な規模を誇るゾゾを中心に上位企業は業績を伸ばした。
ゾゾやジェイドグループ、丸井に加え、数値非公開のため表には掲載していないが、楽天の「楽天ファッション」やアマゾンの「アマゾンファッション」がテレビCMやウェブCMなどを通じて露出を強めており、ファッションアイテムをECで購入する層の裾野拡大に貢献している。
表は決算会計上の売上高(※丸井は取扱高)で、商品取扱高ベースでは、ゾゾの25年3月期は前年比6.9%増の6143億円で断トツとなる。
ゾゾの前期は、気候変動の影響を受けたが、未消化だったプロモーション費用を第4四半期(1~3月)に積極投下するなど機動的な販促施策が奏功。売上高こそ期初予想を0.6%下回ったものの、商品取扱高、営業利益、営業利益率、当期純利益などで計画値をクリアした。
セールイベント「ゾゾウィーク」や夏と冬の本セールおよびブラックフライデー期間にテレビCMを放送して集客強化を図ったほか、コスメを含めた品ぞろえの拡充を進めたことなどで順調に取扱高を伸ばした。ゾゾタウン本店の年間購入者数は1221万人(約16万人増)、アクティブ会員数は1121万人(約19万人増)だった。
また、ゾゾタウンヤフー店などのLINEヤフーコマース事業の取扱高は、LINEヤフーによる「本気のZOZO祭」などの販促費投下もあって前年比20.6%増の約696億円に拡大。グループの総合力が生きた。
靴とファッションの「ロコンド」を運営するジェイドグループの25年2月期は、マガシークの買収効果で商品取扱高が前年比75.6%増の504億円に拡大した。一方、買収によって「マガシーク」および「ffashion」が主力のECモール事業に加わったものの、在庫共有による売り上げの押し上げ効果は想定を下回った。とくにアクティブユーザー数が前期途中から減少傾向となったことを受け、各運営サイトのUI・UXの見直しなど、細部まで改善活動を進めている。
丸井の25年3月期におけるEC事業は、リアル店舗と連動したイベント型ECの拡大に加え、外部からウェブ専門人材の採用を拡充して通販サイト「マルイウェブチャネル」のUI・UX改善に努めたこともあり、EC取扱高は引き続き着実に伸ばしている。
クルーズの前期はEC事業が過渡期で、25年2月末にファッションECモールの「ショップリスト」を韓国のアパレルEC企業メディコトス社に売却。4年前には取扱高271億円まで育ててきた「ショップリスト」の事業を手放し、今後のEC事業はオリジナル商品と他社ブランドのアイテムを扱うオンラインセレクトショップ「エイダ」を「ゾゾタウン」内で展開することに集中する。
「ショップリスト」はSHOPLIST社がメディコトス傘下で運営する。