加藤浩輔●dinos代表取締役社長 ーー 新生dinos始動、新たな形の総合通販へ

フジサンケイグループの通販企業、dinos(=ディノス)が“変革”を進めている。豊富で多彩な品ぞろえという総合通販の強みはそのままに、その中から魅力あるものを顧客それぞれが見つけられるよう展開方法や訴求を変え、新たな総合通販の形を模索する。7月1日付で商号を「dinos」に変更、新たにスタート切った。加藤浩輔社長が描く新生dinosのこれからとは──。

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なぜ、この商品が売れているのかをしっかり掘り下げるべきだった

カテゴリー間の連携という強み

─近年の業績は伸び悩んでいる。現状をどう捉えていますか。

 特にコロナ禍においては、いわゆるコロナバブルによって、自然とモノが売れる状況でした。それ故に見失ってしまったものがあったのではないかと思います。本来はなぜ、この商品が売れているのか、売り上げをけん引している原動力は何なのかなどをしっかりと掘り下げて分析し、次につなげていく必要がありました。

 つまり、中長期的な視点で、お客様の声にどう応え、どのような商品を扱っていけばよいのかをもっとしっかりと考えていくべきでした。そうしなかったため結局、売れた理由がよく分からず、アフターコロナへの対応が後手にまわってしまったことが近年の業績悪化を招いた一因だろうと思います。

 中長期的な視点に立ってお客様ニーズをどう捉え、どのような商品を展開していくべきかが重要な課題だと認識し、2年程前から組織面でも顧客データを分析して販売に落とし込んでいく部署「顧客戦略グループ」と商品部門である「商品戦略グループ」の両グループを同じ役員が統括する体制として体制を強化したことなどもあり、23年度は営業赤字となってしまいましたが24年度には再び黒字化し、業績は回復してきています。

─かつて総合通販は市場をけん引する存在でしたが近年は苦戦を強いられています。総合通販というビジネスをどう考えていますか。

 総合通販は幅広く多様な品ぞろえを展開しており、「何でもある」ということが1つの“売り”になっています。

 もちろん、家具を求める方、ファッションを求める方とお客様のニーズはそれぞれ異なるわけですが、それぞれのカテゴリーには親和性があります。例えば、衣料品を購入頂いたお客様が興味を持って頂けそうな別のカテゴリーの商品を各媒体を通じて紹介して購入頂くこと。これは様々な商品を取り扱って間口を広げつつ、一つのカテゴリーの商品を入り口としてリーチしたお客様に他のカテゴリーの商品も訴求できるという総合通販ならではの強みと言えるわけですが、このカテゴリー間の連携をいかに効果的に展開できるかが総合通販会社の大きな課題です。

 あらゆるカテゴリーの商品を掲載した総合的なカタログを一律で送り、様々な商品を訴求、購入頂くという形がうまくいっていた時代もありました。しかし、インターネットの普及で様々な商品を簡単に検索して購入できる状況となったこともあり、分厚いカタログの中から欲しい商品を自分で探し出す時間を割いてはくれず、総合的なカタログでは以前ほど購入頂けなくなってきています。当社では例えばテレビ通販で紹介した商品を購入された方に当該商品と関連性の高い商品群を掲載した従来のカタログよりも小さな冊子やチラシを作ってお送りするなどの手法をこの1年推進してカテゴリー間の連携を図ってきており、これまで以上にカテゴリー・商品間の関連性を意識した取り組みを進めています。総合通販の強みである「カテゴリー間の連携」を実現するため、時間をかけずとも興味があるもの、欲しいものをきちんとお届けするやり方ができるか否かが今、総合通販各社に問われていると思います。

 従来型の総合的なカタログを軸としたモデルから脱する過程ではある程度のカタログ部数を削減することは致しかたないことだと思います。カタログに興味がなく、購入頂く確率が低い方に多くのカタログを送るという手法は見直さねばならないからです。当社がここ数年、売り上げが下がっていたのはそうしたフェーズだったからです。

 ただ、効率化だけを進めていけばシュリンクしていく一方です。必要な人に必要な情報を届けられる手法、体制は構築できたため、ここからまたお客様を増やし、売り上げをあげていくフェーズに入っていかねばなりません。

 具体的には例えば当社では「スぺパ(スペースパフォーマンス)家具」を打ち出していますが、洗濯機の上のスペースに設置できるランドリーラックなどの隙間家具や、著名人、インフルエンサーと組んで開発した掃除用品や調理器具など、あるカテゴリーの中でも当社の独自企画商品などで強みが出しやすく、かつテレビ通販とも連携し優位性が出しやすい商品群を「強化ジャンル」と定め、カテゴリーの中でもメリハリをつけて販促を強化するなどし、それらはこの1年の結果を見てもしっかりと売り上げが伸びてきています。お客様にとって欲しい商品が集まっており、かつ買いやすい売り場を作ってリーセンシー、フリークエンシーをあげていこうと思っています。今期から再拡大のフェーズに進んでいくところです。

「テレビ」をどう活かしていくか

─改めて「dinos」の強みどう考えていますか。

 ディノスの強みは大きく2つあると思っています。1つは「テレビ」です。テレビがカタログやECと密接に連携しながら事業を展開できる企業は多くありません。もう1つは総合通販として幅広い商品を手掛けてきており、多様なお客様のニーズに向き合ってきたという実績です。こうした「強み」は以前から何ら変わっていません。ただ、先ほど申し上げたように、近年においては、世の中の変化にうまく対応できず、この強みを活かしきれていなかったのではないかと感じています。改めてこれらの強みを活かして事業を進めていきたいです。

─フジサンケイグループのグループ会社としてフジテレビでのテレビ通販は競合にはない大きな武器です。テレビ通販単体で言えば、近年の業績はむしろ伸びています。テレビ通販の戦略を教えてください。

 テレビ(通販番組)からディノスを知って頂けるお客様も多く、テレビは「カテゴリー間の連携」の入り口としても重要です。テレビの活用で当社がずっと大切にしているのは「半歩前」。「一歩前」では離れすぎてしまうので半歩前の距離感で視聴者、お客様に寄り添いつつ、まったく新しいものを紹介するというよりは、ちょっと便利な商品や提案を提供して、お客様にとって“発見”につながるような番組作りを心掛けてきました。

 番組自体の放送も長く、フジテレビとも番組制作のコンセプトを共有できており、そうした番組がお客様から評価頂いているのではないでしょうか。ただ、新たな挑戦もしていきたいです。当社としてもですが、テレビ局の広告収入が右肩下がりとなっている中で、やはりフジテレビ側でも新しいビジネスチャンスの開拓が必要だと考えている状況でもあるためです。

 私は2024年6月にディノスに入社する直前まで、フジテレビで他局の事例などを参考にしながら、営業部門や編成部門などを含めてフジテレビでも新たな取り組みについて様々な議論、検討を行うような仕事をしていましたが、そうした観点で言えば、グループ内にせっかく小売機能があるわけなので、例えば、様々な企業や自治体と組んで番組や企画、プロジェクトを行ってその中の商品開発や小売りの部分をディノスが担っていくなど色々な可能性は考えられるのではないかと思っています。もちろん、そうした取り組みは簡単なことではなく、様々な要素がかみ合わないと実現しないと思いますが検討、研究を進めていこうと思っています。

フジテレビとの関係は

─フジテレビとの連携で言えば昨年末にいわゆる「フジテレビ問題」がありました。ディノスへの影響は。

 人権・コンプライアンスに関する取り組みの強化についてはグループ全体の課題として取り組んでいるところですが、率直に言うと、業績面に関して言えば大きな影響は出ていません。当社として問題発覚後、これまでやっていた通販番組をやめていないことと、120秒のインフォマーシャルなど通販枠が増えていることもあります。

 一連の問題を機にフジテレビは様々な改革に向けた取り組みを行って再生に向けて動きだしているところです。当社としても数十年来のビジネスパートナーということもあり、足並みをそろえて取り組んでいきたいです。

 先ほど申し上げたようなお互いにとってビジネス上のメリットがあるような新たな取り組み、企画なども進めていきたいし、テレビ通販で言えば、例えばタレントのヒロミさんが司会の「ヒロミの集結!スゴ腕カリスマバイヤーズ」や西村博之さんを起用した「論破王ひろゆきがヒット商品を論破!?~それってアナタの感想ですよね~」といった土曜日の午後に放送している特番は好評で当社としても枠を増やしたいと思っており、フジテレビとしてもこうしたエンターテインメント性のある通販番組が増えることで視聴率アップにつながるというメリットもあります。視聴率がとれる通販番組は非常に難しいがトライしていく価値はあると思っています。

─視聴率と売り上げを両立する通販番組は過去にも各局で挑んできたが、エンタメに寄せると売り上げは上がらず、通販に寄りすぎると視聴率がとれない。難しい挑戦です。

 番組作りにはプロデューサーら制作者側の不可侵と言える“こだわり”があって、番組を通じて通販を含めてビジネスをしていく際に、そのこだわりとどう折り合いをつけていくかが難しいところでした。

 ただ、フジテレビにいた時に感じていたのはここ数年、そうした空気は大きく変わってきたということです。現状は従来の広告収入だけに頼っているのではなく、この番組、コンテンツからどれだけ広告収入以外の収益を生み出せるかということを制作側も意識して考えるようになってきているし、制作セクション自体もそうした考えのもとに変化しようとしており、従来型のコンテンツを作るだけのプロデューサーではなく、コンテンツからビジネスを生み出していく「ビジネスプロデューサー」を育てることが大きなテーマになっています。

 ディノスの立場からすればこれまで以上に新たな通販番組や新しいビジネスについて話し合いがしやすい環境になってきているわけで、様々な取り組みを今後行っていける素地はできていると思っています。

─体験型コンテンツなどで取得したデータをどのように活用しているのでしょうか。

 まさに今、データ活用に力を注いでいるところです。体験コンテンツの裏側にはデータを活用したオムニチャネル戦略があります。例えば、お客様が3D骨格診断を体験した後に、スタッフが三井ショッピングパークの会員IDを聞いて電子カルテのように診断結果を記録します。計測した骨格タイプのほか、診断結果を受けてスタッフが提案して試着してもらったコーディネートについても記録しています。こうしたデータを有効活用してメールマガジンやLINEで骨格別のおすすめコーデを提案します。

 ビジネスとして、体験だけでなくコーディネートで使用したアイテムをECや実店舗で買ってもらうことは狙いの一つではありますが、店頭だからこそ取得できるお客様の濃い情報をデジタルに落とし込むことが非常に大事です。ららぽーと内を活性化させるだけでなく、運営する通販サイト「アンドモール」も含めたオムニチャネル戦略に貢献できます。

「お客様に寄り添っていく」をシンプルに示したい

商号変更、ブランドメッセージの狙い

─7月1日付で商号をDINOSCOR-PORATIONから「dinos」に変更しました。狙いは何ですか。

 これまでの商号は「CORPORA-TION(コーポレーション)」という文言が入っていることが示すように企業としての価値を前面に出そうというようなイメージが強かったのではないかと思います。当社がずっと大切にしてきた「お客様に寄り添っていく」ということをより示すにはシンプルでこれまで親しんで頂いてきた「dinos」という商号がいいのではないかと考えました。

 当社はこれまで何度か商号を変えてきましたが、創業時と同じ「dinos」(※創業時はカタカナ表記の「ディノス」)という商号により原点に改めて立ち返るという意味もあります。リブランディングの一環でブランドメッセージを新たに策定したことに加えて、2024年に、27年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画を策定しましたが、2025年はその初年度ということもあって、新しい一歩を進んでいくこのタイミングで商号も変更することにしました。

─新たに策定したブランドメッセージ「私の『好き』、みつけた。」の意味は。

 2024年に社内公募をして、予想以上に多くの社員から応募が寄せられて、その中から選んだものです。最終的になぜこれを選んだかと言えば、競合との競争が非常に激しい中で、「ディノスは何を提供するのか」を伝えられなければお客様に選んでもらえないわけで、そのことをお客様に非常に分かりやすく伝えることができるのではないかと感じたからです。

 お客様一人ひとりのニーズに合った新たな発見や体験をディノスがご提供できると。つまりディノスは単に機能を満たす商品を販売しているということではなく、お客様のニーズをしっかりと捉え、理解して、そうした商品を通じてよりよい体験をプロデュースできる会社なのだとお客様に分かってもらえると思っています。

 社内的にもそうしたことをやっていく会社なのだと周知できます。『私の』、つまりお客様の情報、し好をしっかりと把握し、いかに『好き』と言って頂ける商品を開発していくか。また、『みつけて』もらうために各媒体の中でいかに商品を訴求したり、情報発信を工夫していくかという、すべての部門のやるべきことがここに凝縮されており、非常に気に入っています。

「お客様に寄り添っていく」をシンプルに示したい

ロイヤルカスタマーを増やす

─商号変更を行い、ブランドメッセージも策定した。また、今年は新中期経営計画の初年度でもあり、新生dinosとしてのリスタートの年となります。今後の方針は。

 新中計では当社でお買い物をして頂いたお客様にまた次も買いたいと思って頂ける商品・サービスを提供しつつ、ファン、つまりロイヤルカスタマーを増やし、そうしたお客様がどれを選んでよいか分からなくならないよう多くの商品を並べるだけでなく、お客様が買いたい商品がしっかりとセレクトされている買いやすい売り場を作り、安定的に利益を生み出していくことを目的としています。

 先ほど申し上げたように総合カタログの中から商品を探さなくても手軽に目的の商品の情報を集められる時代になりました。顧客セグメントをしっかり捉えて、お客様それぞれに本当にフィットするキャンペーンやおすすめ商品情報などを、カタログはもちろん、メールやSNSなどを通じて分かりやすくお届けし、適切な商品を開発していくというサイクルをしっかりと回していくことでディノスを選んで頂き、今のロイヤルカスタマーの方々が離れないよう、また新しいお客様に対してもこれからロイヤルカスタマーになって頂きたいと思っています。今期、2025年度はそのための経営基盤をしっかり作ることに注力していきます。

─3年後、中計の最終年度の目標は。

 業績の目標数値は開示していませんが、最も重きを置いているのはロイヤルカスタマーをいかに増やすことができるかです。カテゴリーごとに若干、異なりますが、大まかに言えばリーセンシーとフリークエンシーをKPIとして定義した当社にとってのロイヤルカスタマーの数を最重視しています。これを達成することで目標となる売り上げ、利益を達成するための最善の道になると考えています。

グループ間の連携がカギ

─市場環境も決してよくなく、また参入者も多く競争が激化する通販市場の中で勝ち抜くための条件をどう考えますか。

 現場から最近よく聞くのですが、商品の短命化が進んでいます。かつては同じ商品を繰り返し販売してもある程度の期間は売れていたわけですが、その期間がかなり短くなってきています。また、類似品が出てくるスピードが明らかに早くなってきています。そういった中でどう商品を提供していけばよいかが大きなポイントになるでしょう。1つはオリジナル商品。完全にオリジナルでメーカーと組んで開発するものもあれば、既存商品に付加価値を付けた当社仕様の商品もあると思いますが、いずれにせよ「ここでしか買えないもの」をどれだけ作れるかがより重要になると思います。また、先ほど申し上げた通り、フジテレビなどグループ各社といかに密に連携していくかも重要になるでしょう。グループ内にはテレビはもちろん、ラジオ、雑誌、新聞というメディアもあります。さらにそれ以外のフジサンケイグループ各社との連携も検討したいです。グループ内で商品開発から販売、配送までを行える小売り会社は当社だけということもあり、グループ各社のビジネスに役立つこともできるはずです。今後、アイデアを出し合いながら、互いにとってメリットのある形で連携して、オリジナルあるいは当社ならではと言える商品をグループ各社と連携しながら展開していきたいです。そうした強みを活かせるか否かが大きなポイントになると思っています。

─6月23日付で代表取締役社長に就任しました。意気込みは。

 2024年6月に取締役としてディノスに入社して、一生懸命に様々なことを学んできました。中期経営計画を策定し、将来に向けた計画が動き始めており、やるべきことははっきりしています。なおかつ中計自体も社内の色々なセクションが関わって、ボトムアップで作ってきたこともあり、全社的にも中計の実現に向けて一丸となってがんばっていこうと士気が非常に上がっている状態です。私としてはその勢いを少しでも強めていく旗振り役として寄与できればと思っています。



加藤浩輔(かとう・こうすけ)氏
1987年4月フジテレビジョン(現株式会社フジ・メディア・ホールディングス)入社。2008年6月に同社デジタルコンテンツ局デジタル企画室部長、2009年6月に同社デジタルコンテンツ局デジタル企画室室長、2012年6月に同社総合メディア開発コンテンツ事業局統括担当局長、2021年3月に同社編成制作局コンテンツ事業センター局長職、2023年6月に同社ビジネス推進局局長補佐、2024年6月にDINOSCORPORATION取締役就任。2025年6月23日に同社代表取締役社長に就任した。1964年9月23日生まれ、60歳。筑波大学第二学科卒。

◇ 取材後メモ

かつて通販市場をけん引してきた様々なジャンルの様々な商品を取り扱ってきた、いわゆる総合通販を展開する各社の多くが苦戦を強いられています。ECの登場や各種デバイスの発達で瞬時に求める商品を探し出せるようになり、総合通販各社が展開していた分厚いカタログの中から、自ら欲しい商品を探し出すことを楽しみではなく、面倒と思うようになってしまったことも一因でしょう。ただし、様々な商品を取り扱って間口を広げつつ、一つのカテゴリーの商品を入り口としてリーチした顧客に他のカテゴリーの商品を訴求できるという総合通販ならではの強みは決してなくなってしまったわけではありません。いかに顧客が欲しくなる、求める商品を揃え、さらにそれを最適な形で訴求できるか。次代の総合通販の在り方を示すことができるか。新生dinosの今後に期待したいです。

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