ソーシャルコマースの可能性 ~ソーシャル3人娘の座談会より~

フェイスブックなど企業の間で次第に注目が高まっているソーシャルメディアだが、ネットマーケティング支援を展開するメンバーズでもそうした需要に対応している。そのメンバーズに在籍する吉居、田中、加瀬の3氏はそれぞれ他社のフェイスブックページなどソーシャルメディア立ち上げや運営、あるいは自社のSNSの“中の人”などを担当している。そうした実績から同社では彼女たちを“ソーシャル3人娘”と名付けている。彼女たちは実務面での活躍に加え、実際の体験を活かして、セミナーなどの場でも精力的にソーシャルメディア運営について講演を行う。今回、噂の“3人娘”に集まってもらい、ソーシャルメディアの現状や問題点、運用方法、ソーシャルコマースの可能性といった側面について語ってもらった。ウェブ版ではその座談会の様子をロングバージョンで採録する。

ソーシャル3人娘の面々。ロゴとして使われている定番ポーズだ(詳細はフェイスブックページ→http://ja-jp.facebook.com/mem.socialgirl)

編集部:まずは、皆さんが携わっておられる業務内容を教えてもらえますか?

吉居遥香:フェイスブックページの構築・運用を行っています。後は、フェイスブックでのキャンペーンやアプリ開発の際の規約を調べてアプリケーションの可否を調べています。運用を含め今まで20社を超える企業のお仕事に携わってきました。

田中陽子:私は、企業さんの通販サイトをソーシャル化するために機能追加などのお手伝いを行っています。自社サイトにプラグインを入れたり、フェイスブック、ミクシィ、ツイッターなどとの連携という面に携わってます。一からのコミュニティーの立ち上げのご支援だったりとかも行います。後は海外や国内の事例を見て、何がいいのかを判断したりもしています。海外のほうがソーシャルコマースが進んでいるので、海外の事例などを見ながら例えばタイムラインはどうあるべきかなどを検討しています。

加瀬可奈子:私はメンバーズ自体のマーケティング担当をしています。フェイスブックやツイッターのいわゆる“中の人”として運用を行っています。スライドシェアという資料共有の仕組みやセミナー開催時にユーストリームの中継、自社サイトの運営などを行っております。

編集部:自社の事例は、1つのモデルケースとなるのでプレッシャーはありませんか?

加瀬:下手な事はせずに等身大でやるしかないので、試行錯誤しながらやってますね。

“誰の”クチコミかが重要に

吉居 遥香氏

編集部:海外の事例ですと、どういうものをチェックしているのですか?

田中:例えば、アメリカのリーバイスさんのフェイスブック活用などは有名ですね。ただ、国内でも海外でも全部をソーシャル化と言っていいのかという問題はあります。

編集部:どういうことですか?

田中:例えばリーバイスさんのサイト場合は、友達が「いいね!」を押したという情報だけが分かります。

加瀬:その商品を欲しいから「いいね!」を押したのか、持っているから押したのかが分かりません。

田中:そうそう、そこのレベル感が分からない。一方、例えば良品計画さんのソーシャルサイト「my MUJI」の場合は、商品に対してクチコミが書けたり、「持ってる」というボタンが押せたり、「ほしい!」というボタンがあったり。その結果どうなるかというと、これは実際にあったんですが、吉居が“このクッションほしい”と投稿した際に、社内の別の人が「私いらないからあげるよ」ともらったり。また、ある商品を持っていて「すごくいいよ」とコメントして、それをフェイスブックで見た人が、「その商品がネットで売ってるんだ。今すぐ買うよ」という具合にコミュニケーションが発生するのが魅力ですね。その際に“誰の”クチコミかというのが重要になります。

加瀬:通販の場合の課題として、リアルに体験できないという点があります。しかし、ソーシャルな環境を活用することで、例えば衣料品の場合、知り合いの誰かが着てフィットしているなら大丈夫だとか、店舗で見た時とは違う照明の具合だとか、ネットを通じて様々な体験ができたり、レコメンドできたりするのが、今後のECや通販市場ではかなり大きいかなと思います。

田中:今まではレビューサイトがその役割を担っていましたが、ソーシャルメディアでは「誰が」というのがポイントになってきます。アマゾンのレビューなどにあるような「名なしさん」だと、特定の「誰か」ではないんですね。つまり、自分の友達が言ってるというのが、購買につながる重要な要素になると思います。

“儲けよう”という雰囲気はNG

田中 陽子氏

編集部:例えばフェイスブックページを開きたいという依頼があった場合、どういうところから着手するのですか?

吉居:フェイスブックページはもちろんなんですけど、その前にウェブサイトのソーシャル化、例えばプラグインの導入などをお薦めすることが先になるかもしれません。結局、フェイスブックだけ考えていても意味がなくて、フェイスブックという場をどう活用していくかが重要になります。

加瀬:フェイスブックの場合、ユーザーとのコミュニケーションや声を傾聴したりということになりますが、最終的には企業さんの認知や売り上げというところにつながるので、ウェブサイトや店舗にどう送客していくかというところにつなげていかないといけないのかなと思います。

編集部:まずは送客先になる自社サイトから手を入れていこうということですね。

吉居:そうですね。まずは商品ごとに「いいね!」ボタンを設置するとか。

加瀬:フェイスブックページは作って終わりではなくて、作ってからが大変ですね。つまり、フェイスブックページは機能の一部なので、あとはグラフやそれをどうフィードするか、あるいはオフィシャルサイトのソーシャル化などのほうが大事かもしれません。

吉居:リニューアルに合わせてそういうご提案をすることもあります

田中:オフィシャルサイトはあくまでオフィシャルなものなので、会社の公式の見解しか出せません。一方、キャラクターに語らせたりできるのもフェイスブックなどソーシャルメディアならではだと思います。

編集部:ソーシャルメディアを運用する際に心がけることはありますか?

田中:新しい情報をどんどん出していくということだけではなくて、ウェブサイトで面白いコンテンツがあるけれど見られていないという場合など、それこそフェイスブックで展開するともしかすると違った反応があるかもしれません。

吉居:投稿が目立たない理由は何だろうと考えた時に、例えばテキストだけだったりすると私たちも見ないので、写真を使って印象を伝えようとか。やはり、ダラダラ書かれていても記事っていろんな企業さんのものが流れてくるので、1秒、2秒くらいの間でユーザーさんは判断するのですが、そうした際にやはり写真があるほうが読んでもらいやすかったり、印象に残りやすかったりします。

加瀬:目を惹くというか。

吉居:そうそう。恋愛と同じで、相手にいかに好きになってもらえるかを考えた際に一方的に情報を発信するだけでなく、相手、つまりユーザーさんの話を聞くことでコミュニケーションを行うのが重要ですね。

田中:それにユーザーさんのニーズを引き出すという意味では、商品開発の場でもあると思います。

吉居:例えばTシャツを1枚作る際に何色が人気あるかということもフェイスブック上で聞けるわけです。様々な色を準備して、「どの色が好きですか?」とこちらから尋ねるだけで、ユーザーさんは反応してくれるので、ブランドごとにユーザーさんの趣味・嗜好が分かると思います。

加瀬:仮に、ユーザーさんの好みを調べるために専用の調査会社に頼むと、1週間経って100万円で結果が出るのに対して、フェイスブックの場合は5分で質問項目を作って掲載すると、24時間以内にコアなファンから200件の回答がもらえる、ということが可能なのがソーシャルメディアの強みですね。

田中:それと、フェイスブックというプラットフォームは基本的に友達と交流する場なので、そこに企業が自社の会社名で“押す”よりも、キャラクターなどを使って柔らかいもののほうが同じ目線でという感じがしますね。

吉居:いきなりマネタイズするのは本当に難しいので、“儲けよう”という雰囲気が見えちゃうのはNGです。

加瀬:そうですね。ユーザーさんとしっかり交流して、絆を深めていく場として考えていくことが重要です。

編集部:金の臭いがするとユーザーは萎えてしまうと(笑)。

加瀬:そうですね。

吉居:それはフェイスブックに限らずミクシィやツイッターなんかでも同じことが言えると思います。

田中:企業さんによっては、「NGワードは消せますか?」とか、「ユーザーからのコメントで嫌なものは消せますか?」といった質問を受けます。つまり自社に不利になる状況は回避したいということです。逆に、ユーザーさんからの苦情に対して“傾聴する”姿勢を貫いておられる企業さんもあります。

加瀬:フェイスブックページは炎上しにくく、ユーザーさんの生の声が届きやすいという側面があると思います。厳しいコメントを書かれても、企業側がそれをきちんと受け止めている姿勢を鮮明にすることで、ファンの気持ちをさらに強くするということはあると思います。

編集部:NGワードの排除は可能なのですか?

吉居:できますが、設定している企業さんはほとんどありません。

田中:我々からお薦めすることはあまりしませんが、例えば金融系や保険関連の企業さんなどでは設定されているようです。

フェイスブックアプリ、中には規約違反も…

加瀬 可奈子氏

編集部:フェイスブックのアプリについてはどうですか?

吉居:実際のところ、今、流行っているアプリはNGのものも見受けられます。ただ、フェイスブック側がそこを厳密に監視していないのかもしれません。規約も細かいですから、フェイスブックというプラットフォームを正しく使うのであれば、規約をしっかり読み込む必要がありますね。

編集部:NGというのは規約に反するということですか?

吉居:そうです。フェイスブックの規約も実は細かく変わっています。それを都度ウォッチしながら状況を確認し、アプリの運用を判断しています。

田中:厳密にはNGであっても、運用できているパターンが多いということは、フェイスブックが注目を浴びて、多くのアプリがどんどん開発されているんだと思います。

編集部:システム連携で引っ掛かってアプリが停止する事例もありますね。

吉居:フェイスブックの場合、一定以上のアクセスがあったり、ウォールにシェアされる数が膨大になったりすると、自動システムで止まってしまうようです。

加瀬:急激に上がると、そこはシステムでチェックされています。

田中:後は、ユーザーさんから違反やスパムとして報告されるケースもあります。その他には、ウォールに流れてきた情報が削除されている数をアプリごとに集計されていて、それが上限に達すると…。

吉居:落ちちゃいます。

田中:結果、それまでのアプリのデータはすべてなくなります。ただ、現状は改善されていて、管理画面で今どのくらいの人が削除しているかや、どういう報告が上がってきてるかを知ることができ、アプリが停止されてしまう前に把握することができます。

編集部:現状、アプリでどういうものがNGなんでしょうか?

吉居:基本的にはユーザーが認めた上で参加が行われるものであれば大丈夫です。NGなのは、ページにアクセスしただけで自動的にアプリ連携してしまうものとか。あるいは、ユーザーが書き込む枠内に勝手にアプリによるコメントが入ってしまうものもダメです。

加瀬:ユーザーが編集できればいいんですけど、自動的に入ってしまうものはNGです。

田中:フェイスブック側は、リアルなコミュニケーションを求めているので、企業側の“目論見”のようなものが出るのは好ましくないみたいですね。

ミクシィページの可能性

編集部:ミクシィページはどうですか?

吉居:実際、あまり企業さんは動いてないですね。というのも、立ち上げてはいるんですが、運用方法はほぼフェイスブックと同じ。それに、ミクシィページへの導線が、ミクシィ内でもほとんどない状態ですね。

加瀬:アプリも今のところ、こちらから作ることはできない。

吉居:ミクシィ内でもミクシィページって今、重視されてるのかなぁ。

田中:最近、ミクシィの広告を一般ユーザーでも購入できるようになったので、それを企業がうまく活用すれば新たな導線ができるかも。

加瀬:そもそもミクシィページの場合は、個人事業主などが気軽に使うことなどを想定しているようです。なので、新しい広告が有効活用されるかもしれないですね。

田中:ミクシィの場合、炎上するリスクはあると思います。実名制ではなく誰とつながっているか分からずにやっている人もいますから。あと、フェイスブックは社会人が多い一方で、ミクシィは若者や主婦層が強いです。

加瀬:若いママさんとかが多いですね。

吉居:旦那さんの愚痴だとかは実名ではできなかったりするので、その辺はミクシィのほうが良いみたいです。

田中:なのでもう少し導線が増えて、ミクシィページの重要性が上がってきたら、主婦層などへリーチするのには有効になるかもしれませんね。

編集部:現状ミクシィIDを使った外部サイトへのコネクト(連携)はどうですか?

吉居:ソーシャルコマースの観点で言うと、ミクシィのユーザーは人数が多く、主婦層に強いので、間口を広げるという意味でミクシィのIDでログインさせたりというのは有効ですね 。

田中:あと、アプリなどを使う際にコネクトすることへの抵抗感はフェイスブックユーザーのほうが低いかもしれません。逆にミクシィユーザーの場合は匿名ということもあるかもしれませんが、コネクトすることに抵抗を感じることはあるのかもですね。やはりフェイスブックの方がオープンなプラットフォームなので、ユーザー側の反応にも現れるのではないでしょうか。

自社サイトとの連携が重要に

編集部:今後のソーシャルコマースの可能性はでうでしょうか?

田中:どこまでを“ソーシャル”と呼ぶのかにもよりますね。つまりプラグインを入れるだけでソーシャルと呼べるかもしれないし、それだけじゃなくてユーザーとどうコミュニケーションをとるかということも含まれるかもしれません。後は「Fコマース」(※フェイスブック内で完結するEコマース)というものがもっと発展してくるかも。

加瀬:今はまだソーシャルコマースを始めたということに価値があるという段階。これからは「いいね!」のようなプラグインのボタンの数が増えていくので、そういうところで自社サイトとの連携が重要になる気がします。

吉居:将来的には自社サイトとソーシャルメディアとの敷居がなくなってくると思います。大きな切り分けが多分なくなってくるんじゃないかな。

田中:でも、どこかで切り分けはされるから、混ざりあうことはない。フィエスブックにはそれ専用の役割があり、一方で通販サイトのほうにはコマース自体の情報をたくさん持っている。

加瀬:それぞれが一緒になることはないけど、ハードルは下がってきて徐々に親和性は高くなってくると思う。

田中:そうそう、フェイスブックもミクシィも。あと、ミクシィの場合はモバイルが強みだよね。

加瀬:あー。

編集部:というと。

田中:携帯電話にもスマートフォンにも対応しているので、ミクシィページを作る際にも1つの画面上でPCとスマホと携帯電話がそれぞれどういう風に表示されるかを設定できます。

吉居:それが一番の持ち味かもしれなくて、フェイスブックページは携帯電話向けには作れない。最適化はされるけど。

田中:そう考えると、“ガラケー”への対応など日本人向けのサービスでは、ミクシィは強い。

加瀬:ミクシィはログインするユーザーの半数は携帯電話ですから。

田中:なのでミクシィは、今後どのくらい機能を追加するかにもよると思いますね。

吉居:今後のミクシィページに期待ですね。

(敬称略)

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