1月末の発表から約2カ月、業界内外から注目を集めていたミクシィがついに「mixi」内に仮想モールをオープンした。「ビッダーズ」を手がけるディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で運営するもので、「mixi」の仕組みを活用した「ソーシャルコマース」が最大の特徴だ。「mixiのトップページ」と「mixiページ」、そして新たに開設した「モール」の3つを連動させた形で、「コマースをSNSと完全に融合させる」(ミクシィ・川岸滋也ソーシャルプラットフォーム統括部部長)と自信をみせる。ソーシャルコマースは昨年から活発化しつつある動きだが、目立った成功事例は少ない。それだけに、今回ミクシィとDeNAが満を持して放った仮想モールの先行きが気になるところ。はたして両社の取り組みはソーシャルコマース市場に成功モデルを提示できるのだろうか。
開始当初は1500店が出店
ミクシィとDeNAが3月21日に開設した仮想モールは「mixiモール」。「mixi」トップページ右上のリンクから入場できる。「モノを起点としたコミュニケーション」というコンセプトに則り、「コミュニケーションの活性化」と「商品の販売」という2つの狙いを内包する。
基本的なモール機能はDeNAの「ビッダーズ」と同じ。出店は公募で、現在は1500弱の店舗が出店。目立つところでは「ローソンHMVエンタテイメント」や「Joshin web インターネットショッピング」、「JiNS」「セシルマクビー」「LUSH」など。商品は約400万点をラインアップし、商品データは「ビッダーズ」と同期する形になっているという。
商品の検索は「mixiモール」トップページから行える。商品詳細ページにはカートを用意し、購入までモール内で完結するモデルだ。決済手段は「ビッダーズ」に準拠する。
「mixiモール」では専用のポイントも用意。購入金額の概ね1%をポイントとして付与する仕組みで、貯まったポイントは商品購入時に使うことができる。なお、既存のデジタルコンテンツで使える「mixiポイント」はモールでは使用できない。
同モールによる収益は、売り上げの数%を成約手数料として両社がレベニューシェアする形。シェアの割合は非公表。デバイスはPC、スマートフォン、フィーチャーフォンの3デバイスに対応する。
「きになる!」でフィードを飛ばす
「mixiモール」の最大の特徴は、やはり国内最大のSNS、「mixi」との連携による「ソーシャルコマース」の仕組みだろう。
ミクシィでは、ソーシャルコマースの成立要素として「共感/共同消費」と「個人消費/ギフト」の2つの軸があると仮定。そのうえで、今回は規模が大きく、なおかつハードルが低い「共感消費」による「個人消費」を重視。「共感消費が生まれる構造をモールで目指す」(同)方針だ。
では、「共感消費」を生み出す仕掛けとはどのようなものか。
具体的には、まずは商品ページにはすべて「きになる!」「もってる!」というボタンを設置。これらのボタンをクリックしたりコメントを投稿したりすると、「mixi」の自分の友人のタイムライン上にフィードが飛ぶ仕組みだ。フィードの内容は、商品名と商品画像付きで「○○がきになる!と言っています」「○○にコメントしました」と表される。こうしてコマースに関わるフィードを飛ばすことで、ユーザーの商品認知度向上や購買喚起を図る構想だ。
既存の「イイネ!」や「Like」、「欲しい」などの肯定的な表現を使わず、あえて「きになる!」を採用したのは、「守備範囲の広い表現であらゆる感情をカバーする」(同)ため。「もってる!」も同様で、投稿のハードルが高い「レビュー」を使わないことでコメントを促進する狙いがある。「楽天などと違った『mixi』らしいコメントが並ぶことで、新しいコミュニケーションが発生するのでは」(同)とみている。
商品ページでは、友人のコメントの閲覧が可能。また、ユーザーは自分のコメント履歴や追加した商品などを、「mixi」のトップ画面でリストとして確認できる仕組みになっている。
「mixiページ」でコミュニケーション
「mixiモール」のトップページでは、友人が投稿した「コメント」や「きになる!」「もってる!」をクリックした商品を最大15個まで新着順に表示する。表示商品をクリックすると商品ページに飛び、商品ページからは各店舗の「mixiページ」に行くことができる。
「mixiページ」は店舗のトップページとしての位置づけで、今回モールに参加する店舗はスムーズに「mixiページ」を開始できるようになっている。出店店舗はここで「ランキング」や「新着商品」を表示することが可能だ。
ミクシィでは、「mixiページ」を「売り場」ではなく「コミュニケーションの場」と捉えており、ユーザーと店舗のコミュニケーションを活発化させることを重視する。今後は、出店者ニーズを考慮しつつ、より店舗が独自色を出せるアプリも開発してくという。
広告はあまり重視していない
集客面では、当面は「mixiモール」へ誘導する広告はあまり重視していないという。要望があれば対応していくスタンスだ。ただ、定期的にモールへ誘導する仕掛けは打っていくようだ。
いよいよ動き出したミクシィの仮想モール。国内最大のSNS「mixi」内での展開ゆえ、集客についてはさほど問題はなさそうだが、そこから最終的なコンバージョンにどれだけ辿り着くかは未知数だ。はたして通販事業者にとって出店に値する“売り場”となるのか。まずは期待してみていきたい。