ユーザー別に最適な情報を配信
「LINEビジネスコネクト」は、企業が「LINE」上に自社アカウントを開設できる「LINE公式アカウント」の各種機能を開放し、より柔軟なメッセージ配信などができるサービス。同社によると、LINE公式アカウントはサービス開始から2年足らずで100社以上が利用しており、重複も含めると累計で3億5000万人以上のユーザーがLINE公式アカウントを通じて企業と「友だち」としてつながっている。同社執行役員の田端信太郎氏は「LINEユーザーにとって企業からメッセージを受け取ることは非常になじみ深い行為になりつつある」と分析する。
ただ、これまではフォローしている「友だち」全員にすべて同じ内容のメッセージを一斉に送ることしかできなかったが、今回、APIを開放することで、LINE側と企業が持っている顧客データベースを接続。企業の顧客データとLINEのアカウントを連携させることにより、特定のユーザーに最適化したメッセージ配信が可能になる。
LINEビジネスコネクトでは企業の業務サービスへの利用も想定され、例えば、宅配ピザ屋があらかじめ人気のピザを「スタンプ(※絵文字の一種)」にしておき、利用者がピザ屋の公式アカウントに当該スタンプを送信するだけでピザの注文ができるなど「LINEならではのショッピング体験が可能になるのでは」(田端氏)という。このほか、外出先からの家電の操作や位置情報を活用したホテル・旅館の宿泊予約、通信教育への活用、宅配便の再配達などへの活用も想定されるようで、通販やネット販売事業者にとっても活用は考えられそうだ。
「LINEビジネスコネクト」の利用料金については、月額固定費と、コミュニケーション量に応じた従量課金の両方で検討しているという。
通販企業の利用が「ど真ん中」
LINEが新たに打ち出した「LINEビジネスコネクト」。通販企業やネット販売事業者にとっても利用価値は高くなるとみられる。実際、LINE公式アカウントの運用を行う企業のEC担当者は、LINEビジネスコネクトについて「一番欲しかった機能です。何ができるかは見極める必要がありますが、期待感はかなり高いです」とした上で、「すでにCRMの仕組みを構築している企業であれば、新機能で結果を出しやすいのではないでしょうか」と分析する。
2月26日の発表会の場でプレゼンテーションを行った執行役員の田端氏は本誌の取材に対して、「通販企業の活用が現実的には“ど真ん中”の利用の仕方のように思います。色々と使い方は考えられますが、一番シンプルに考えれば現在、eメールで行われているような顧客の購買履歴に応じて最適化されたメッセージを送るというものでしょう」と利用シーンを想定する。
さらに田端氏は「これまでの『公式アカウント』では同じ内容のメッセージをすべての人に送ることしかできませんでしたが、『LINEビジネスコネクト』を活用することで、それぞれ内容が異なるレコメンデーションメールなども送れるようになります。eメールで行うよりもコンバージョン率や、反応率が上がることになると思います」と説明する。
現在、LINEでは一部の企業と連携して「LINEビジネスコネクト」を活用したサービスのケーススタディを作っているとのことで、すでにいくつかの通販企業とも「話をさせていただいている」と田端氏。今後の本格利用が待たれる。
スタンプや電話でも新サービス
2月26日の発表会の場では「LINEビジネスコネクト」のほかに2つの新サービスについても報告された。
1つは、LINEユーザーであれば誰でもスタンプを制作して販売することができるプラットフォーム「LINEクリエイターズマーケット」。これまではLINEのオリジナルキャラクターや有名キャラクターのスタンプ、あるいは企業によるスポンサードスタンプに限ってきたが、その枠を拡大する。
「LINEクリエイターズマーケット」への登録や申請は無料。審査を経て、40種類のスタンプを1セット100円で販売し、売り上げの50%を制作者に配分する仕組み。同サービスの対象国は全世界としており、様々な国のユーザーがスタンプを制作することで、多様なニーズに対応していく。開始は4月頃を予定しているが、ネット販売事業者も「LINE」を活用したマーケティングの一環として活用できる可能性もありそうだ。
そしてもう1つのサービスは、LINEから国内外の固定電話やスマホなどに低料金で通話ができるサービス「LINE電話」だ。
3月から日本や米国など世界6カ国で提供を開始。初期費用や月額基本料金などは無料で、通話料金だけで利用ができる。固定電話への通話は1分2円から、スマホやフィーチャーフォンは1分6.5円から提供するようだ。初期設定などは不要で「LINE」がインストールされていればすぐに使用が可能という。
ラインモール、法人も無料予定
こうした取り組みの一方で、同社が昨年末に運営を開始した仮想モール「LINE MALL(ラインモール)」でも新たな動きが出ている。それは「ラインモール」の手数料を完全に無料化するというもの。3月6日の同社の発表によると、完全無料化ではこれまで販売価格の10%を徴収していた手数料を撤廃し、今までに販売した分の手数料もすべて払い戻す。出品時の障壁を取り除くことにより、モール内で品数の充実につなげる。無料化について同社では「今はユーザーを増やす場所づくりの段階」(広報)としており、仮想モールの収益化よりも、出品者や出品数の増加、ひいては購入者の拡大を優先させる狙いだ。
ラインモールは現状、個人間で売買を行うCtoC向けのプラットフォームだが、春以降を予定するグランドオープン時には法人の出品も受け付ける。法人がラインモールに出品する際の手数料について同社では「確定ではないが、無料で考えている」(広報)としており、BtoCのモデルでも無料化を実施していく意向のようだ。
また、3月7日にはラインモール内に新たに「LINEセール」というカテゴリーを設けた。これまで「LINE」内で実施していた「シークレットセール」という数量限定のタイムセールをリニューアルし、ラインモール内で展開していく。LINEセールでは当面、国内外のバイヤーが集めたアパレルなどの商品を数量限定で連日販売していく。
これまでラインモールの専用アプリはAndroid搭載スマホ向けに配信していたが、3月6日からiPhoneにも対応している。