常に他社より先に仕掛けていく【村田聡 ルクサ代表取締役】

高級商材などのタイムセールサイト「ルクサ」が好調だ。サイトでは飲食店や旅行の割引クーポンのほか、家電や化粧品の物販も展開している。抱えている会員は富裕層が多く、2014年にはその会員が100万人を突破した。それに合わせてポップアップストア(期間限定店)をオープンし、初めてリアル展開を実施。今年は常設店の開設も予定している。足元の業績も大幅な拡大が続いているルクサの村田聡社長が思い描く成長戦略とは果たして──。(聞き手は本誌・比木暁)

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プライベートジムが非常に当たった

月商は前年同月比で倍に

――2014年を振り返ると、4月に増税があったもののルクサの月商は好調に推移していました。その後の進捗はいかがでしたか。

増税のダイレクトなインパクトはやはりなかったです。消費に関して言うと、年間のトレンドを見ても個人の消費は落ちないという感触は非常に感じました。特に最近は旅行系や飲食系など嗜好(しこう)系のものが非常に売れます。あとは舞台など演劇系のチケットも最近取り扱いを増やしていますが、売れ行きは非常に良いです。テレビ局さんなどとも連動してトライアル的にいろいろなことをやっていますが、値引きをせずに良い座席を確約しておくというような商品でも、100人や200人が買われます。そういう意味で言うと、嗜好品に対する意欲は落ちていないと感じます。特に年配の方に関して、その傾向は強いです。

――それはルクサの顧客属性によるところも大きいのでしょうか?

大きいと思います。当社の顧客である、年収がある程度高い方に関しては増税のインパクトはあまりなかったのかなという印象です。

――「ルクサ」で商材のラインアップに手を加えた部分はありますか。

今でもかなりのテコ入れはしています。最近になって、ライフスタイルに代表されるジャンル、雑貨や家具のほか、ヒーターや照明などのインテリア系家電の取り扱いが増えていて、売れ行きは良いです。2014年のトレンドで言うと、いわゆるプライベートジムが非常に当たりました。トレーナーがついて、食事からしっかり管理するというようなものですが、定価が30万円や40万円というようなものを10万円から15万円くらいのディスカウント価格で販売すると、ほぼ毎回売り切れました。世の中的にもそうしたトレーニング需要が高まったと感じました。

――1枚当たりの単価が大きいわけですね。

1回あたり、お一人で10万円払っていただけるといった方たちが、昨年は累計で数百人にのぼりました。

――それだけ人気が出た背景とは。

トレンドが大きいかなと思います。ジムは継続性が低く、あまり続かないお客さんも多いです。それに対して“2カ月集中”などの集中トレーニングのようなものが、忙しい現代人にフィットするのではないでしょうか。これはジムに限らず“習い事系”でも1カ月集中コースなどは売れ行きがいいです。年齢層も30代後半や40代の方々で、肉体の崩れが気になるお年頃です。そこで「ここまでの料金なら払って頑張ろう」となるのではないでしょうか。そこのバランス感が当たったのでしょう。

――足元の業績はどのように推移していますか。

予想よりも良いペースで伸びています。月商ベースでは、前年同月比で見ると直近はほとんど倍になっています。年間で見ても、80%増くらいで推移するのではないでしょうか。

――好調の要因はなんでしょうか。

会員数が非常に安定して伸びているのが大きいです。リピーターが離れていかず、どんどん積み上がっている状態です。特に今では月に6~7万人ずつくらいで会員が毎月増えています。そこが売り上げをけん引しています。

――会員数の伸びの理由は。

提携の効果が大きいです。いろいろな企業と提携して、毎月数万人の流入をもらっています。「ルクサ」単独でも数万人が増えている状況です。

――「ルクサ」全体のラインアップの規模感はどのくらいでしょうか。

横に広がった形で、同時に500や600アイテムが出ています。商品数が増えると売れ行きは上がりますが、多すぎても埋もれて見つけられなくなるということになってしまいます。今は特にスマホの売り上げが非常に伸びているので、スマホ側のインターフェースを工夫しています。

――スマホの利用割合は。

スマホ経由の売り上げでみると、50%を超えていて、60%近くになってきています。ここ1年くらいで完全に逆転しました。

――スマホから購入する場合の特徴などはあるのでしょうか。

スマホ経由のお客様のトラフィックが非常に増えている中で、30代くらいの方がスマホにスライドしてきているように感じます。スマホの使い方の面で当社でアンケートを行ったのですが、質問項目としては「どのくらいの頻度で当社のサービスを使いますか?」「いつ見ますか?」といったことを聞くのですが、「自宅でスマホ」というのが利用の1位でした。移動中などのすきま時間ではなく、自宅でスマホを見てネットショッピングをするというのが最も多かったです。お客さんの行動のあり方が変わってきたなと感じています。

セゾン会員に専用サービス

――他社との連携も進めています。

昨年12月中旬にはセゾンの会員向けに専用のサービスを作りました。セゾン会員向けの限定品や「永久不滅ポイント」との連動もしていますし、オープニングキャンペーンで「永久不滅ポイント」と「ルクサポイント」との相互交換もできるようにしました。セゾンさんの「Netアンサー」(※セゾンカード会員向けのインターネットサービス)の中にリンクが貼られていたり、メルマガに載るなどの導線が引かれています。

――流入は期待できますね。

結構来ます。1カ月と少しが経ちましたが、すでに会員は1万人を超えています。あっという間に増えました。

――昨年はルクサでは初めてリアル展開も始めました。

会員数が100万人を突破したので、それに伴うキャンペーンとして11月にポップアップストアという形で路面店を作りました。ネットとリアルをどうやってつないでいくのかというのが1つのテーマとなっていますので、店舗を作るというのはそのきっかけになったのかなと思います。

――場所は都内ですか。

今回は東京・汐留に2週間ほど(11月27日~ 12月10日)店舗を出しました。商業施設の中で実施したため、そこに訪れる人に対して宣伝や集客を行う予定でしたが、面白かったのは「ルクサ」の既存会員の方が来られるということです。“ルクサが何かやっているから来た”という人が多く非常に驚きました。

――どういった商品を販売したのですか。

今回の店舗は会員登録を促したりサンプル品を配ることが中心で、販売はほぼやっていません。どちらかというと展示品という扱いでやっていましたが、家具やインテリア、小物類、キッチン用品といった展示品に関しても買えないかという要望が意外とありました。店舗での販売というニーズも高いと感じました。

――そのほかに気づいた点は。

サンプル品へのニーズが高く、当社のようにネットで販売している企業にとってリアルで販促する場所があるのは非常に大きいです。今回は知っているメーカーさんや代理店さんからサンプル品を預かって、無料で配布しましたが、想像以上に個数が出るなと感じました。サンプル品の扱いは全員にとってメリットのある形ではないかと思います。初めてのリアル展開でいろいろな学びがあったので4月頃に第2弾をやる予定です。

――第2弾での取り組み内容は。

販売をするかもしれないですし、サンプルは少し広告メニューとして取り扱って、お金をいただきながら配布できるような仕組みを作りたいです。サンプル品を通じてお客さんとメーカーさんとのリレーション強化、そして購入までたどり着いてもらえるような仕組みがリアルだからこそできると思っています。ネットの中でサンプル品は意外に難しく、モノを送るという過程があるためコストが大きくなります。有料サンプルをやっているところもありますが、難易度が高くなります。「店に取りに来てください」と言えるくらいの立派な店舗を構えているところは別ですが。新製品の販路をメーカーさんは持っていないので、そうした販路を作り、当社はお客さんを呼んで購買につなげるということを想定しています。

――第2弾も期間限定の出店ですか。

期間限定です。それが終わったら実際に店舗を作ると思います。もともとポップアップストア自体が常設店に向けたテストです。

――ということは、以前からリアル展開は見据えていたのですか。

はい。これからはネットとリアルが互いに寄ってくるので、ネットだからリアルだからというよりもお互いプラットフォームという位置付けをどこに置くかということだと思います。僕らはネットで商品を売っていますが、リアルで何かを買っていけないということは一切ないので、リアルの売れる場所があった時に一体どうすべきか。ただ単にモノを販売しても僕らでは及びもつかないところがたくさんあるので、違う切り口でやっていきたいです。ただ、実際に接点となる場所というのは非常に大事です。

オリジナルブランドを一度試してみたい

今年はリアルに乗り出していく

――2015年は“リアル展開”が1つのキーワードになるのでしょうか。

そうですね。今年はリアルのほうにかなり乗り出していこうかなと思っています。

――4月にポップアップストアを出して、その次に常設店ということですが、スケジュールは。

常設は早ければ8月から10月には出したいです。

――ルクサとして初めてのことも多々出てくるのでは。

多々あります。大変ですが、イベントなども頻繁に仕掛けていきたいなと思っています。おそらく今後はECをやっている、あるいは通販をやっている人たちは、モノをただ流すだけではない形になる必要があるだろうなと思います。自分たちが何を発信する側になるのか、まさにそこがキモになると思います。僕らは買ってもらうだけの信頼を得るために何をすべきか。常に他社より先に仕掛けていくということはやっていきます。

――ルクサのリアル展開は一風変わったものになるのでしょうか。

そうですね。若干違うものにはなると思います。まだまったく決まっていませんが、いろいろなパターンを考えています。“買えるショールーム”のようなものもありますし、“試着”も発想は面白いと思います。物理的にモノが触れると何がいいのか。触らないと買わないモノもあると思います。そこにモノが置いてあることのメリットってなんなのか。そのあたりの少し本質的なところを追求したいと思っています。そのほかにPB(プライベート・ブランド)もやっていこうと思っています。

――扱う商品のジャンルは。

入りやすいところから考えると、コスメなどからのスタートを考えています。業務用の商品を扱っている会社さんからはいくつかお話をいただいていますので、何かしら試してみたいと思っています。「ルクサ」という名前を出すかは分かりませんが、オリジナルのブランドを一度試してみたいです。やれるチャンスはあまりないのでこの機会にやってみようと思っています。去年、リアル展開は初めてでした。そういう意味でPBも同じですがやっていこうと考えています。

◇プロフィール◇

村田聡(むらた・さとし)氏
2003年GMOインターネットに入社。インターネット黎明期からWebマーケティングの領域に携わり、その後もWebの領域においてキャリアを重ねる。2008年12月セレクトスクエアに参画し、マーケティング・事業開発担当の執行役員に就任。2011年2月にルクサに参画、CEOに就任。2012年11月に代表取締役に就任。

◇編集後メモ◇

「ルクサ」はもともと「グルーポン」や「ポンパレ」など“クーポン共同購入サービス”として多くの企業が参入を行った際に始まったサービスの1つでした。しかし当時から“高級志向”などの点で数あるクーポン系サイトとは一線を画していました。その結果、顧客層が他とは異なり年収1000万円を超す富裕層を多く抱えることになりました。その顧客層は昨年4月の消費増税後も購買意欲が低下することなく「ルクサ」の売り上げを押し上げることになります。そして今年、「ルクサ」が仕掛けるのが「リアル展開」と「PB」です。初めてのことが多い中でどのように打って出るのか。村田社長の手腕に注目したいと思います。

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