LINEは1月27日に新たな動画広告メニュー「LINEマストビュースタンプ」を発表した。無料通信アプリ「LINE」で利用されている「スタンプ」(※絵文字の一種)をフックにしたもので、多くのユーザーに動画を視聴されることが想定される。
実際、第1弾案件としてテスト的に利用を始めたメルセデス・ベンツの事例では、短期間で400万人を超えるユーザーにリーチができたとのことで、ベンツの担当者もその結果に驚いているようだ。
CMの視聴完了が拡散していく
「LINEマストビュースタンプ」は、ユーザーが「LINE」を通じて最大30秒間の動画を視聴すると無料スタンプを入手できる仕組みで、動画の視聴完了がスタンプをダウンロードできる条件となるため、確実な情報訴求が期待できる。同広告のスタンプは「LINE」内の「スタンプショップ」というコーナーに掲載される。ただ、そのスタンプをダウンロードする画面には「動画を観る」というボタンが表示されており、ボタンを押すと、別ページに遷移する。遷移先のページの再生ボタンを押すとCMが流れ、観終わると、スタンプをダウンロードできるようになっている。
最初にスタンプをダウンロードするユーザーは「スタンプショップ」を経由して来るが、CMを視聴して手に入れたスタンプを「LINE」のチャット機能を使って友人に送ると、送られた人はそのスタンプをタップすればダウンロード画面に遷移する。結果、そのユーザーがスタンプを入手するためにCMを観ることになるわけだ。
LINEでは2月4日に都内で動画広告セミナーを開催し、「LINEマストビュースタンプ」について説明を行った。セミナーに登壇したLINE上級執行役員の田端信太郎氏は「CMの視聴完了という行為が『LINE』の中でスタンプを通じて拡散していく。スタンプのダウンロード画面でCM視聴が紐付けられているため、拡散しつつ、必ずCM視聴が伴う」と説明する。
「CMが“自分ごと”に」
LINEが動画を活用するというのは、唐突に始まったわけではなく、以前から少しずつ実績を積み上げてきた。
例えば「スポンサードスタンプ」では、CMに登場するタレントやキャラクターをそのままスタンプ化し、“決め台詞”をスタンプで言わせるというように、テレビCMを融合させるパターンのスポンサードスタンプは2年以上の実績があるという。
そしてこれまでに累計で118件のCM連動スタンプをすでに実施。スポンサードスタンプは週に3枠をリリースしており、年間で150枠あるが、昨年はそのうち46件がテレビ連動型のスタンプだったという。今やテレビのスポットキャンペーンと連携したスタンプを「LINE」の中で流すことは大手の広告主では一般的となっているようだ。
田端氏は「CMは重要なメディア。否定はしないが、若い層がどんどんテレビ離れをしているという現実がある。そうした中でLINEスタンプと組み合わせることにより、これまでは見ておしまいだった、他人ごとだったCMが、“自分ごと”のように感じられる」と説明。さらに「本来の『LINE』の特徴である人と人とのコミュニケーションを円滑にするということに対して、テレビCMが付加価値をもたらす」とする。そうした中で生まれたのが今回の「LINEマストビュースタンプ」だ。
田端氏によると、「LINEマストビュースタンプ」の特徴として500万~1000万人規模のリーチが見込めるとしている。「単に“見ておしまい”ではなく、使う中で“自分ごと化”しつつ、これまでブランドやその製品と縁がなかった層にも『トーク』(※チャット機能の名称)を通じて拡散していくというのが最大の特徴です」というわけだ。
8日間で400万人以上が視聴
「LINEマストビュースタンプ」第1弾のケースとして、メルセデス・ベンツが新製品のキャンペーンでテスト的に使用した。
LINEによると、同スタンプを実施して8日が経過した段階で、400万人以上がダウンロードしている。つまり結果的に400万人以上がメルセデス・ベンツの動画を視聴完了したということになる。
これを受けて、セミナーに登壇したベンツのマーケティング担当者は、「本当にびっくりしている。わずか一週間で400万人にリーチできたというのは、我々のいろいろな動画配信の取り組みの中でも飛び抜けてすごい数です」と驚きを隠さない。
今回、メルセデス・ベンツが「LINEマストビュースタンプ」を使った狙いや手応えについてマーケティング担当者は「『LINE』は日常使いのメディアだと思っている。そこでメルセデス・ベンツの思いを『スタンプ』という形で、公式キャラとコラボして発信し、一般の方々に日常使いしていただきながら我々のメッセージも知っていただく。そこからブランドに興味を持っていただき、中には販売店に来られる方もおられるのではないか。そうしたコミュニケーションができたかなと思っています」と語った。
田端氏も「ベンツに縁がないというユーザーも、スマホという“近い距離感”によってベンツのCMを観るというきっかけを大量に作り出すことができています」と説明する。
メルセデス・ベンツに次ぐ第2弾の取り組みとして、サントリーが缶コーヒー「BOSS」の訴求に活用しており、こちらも「すごい数字で使われている」(田端氏)という。これら2社の事例はトライアルで、正式なリリースは4月以降を予定している。
LINEでは同広告の利用例として、大手広告主などがテレビのスポットキャンペーンと絡めて活用することを想定しているようだ。