服や下着、靴の仮想 試着ツールが登場 オンライン試着サービス

「フィッティー」はぴったりサイズのブラジャーを教えてくれる

ファッションアイテムのEC比率が他の商材と比べて低い理由のひとつが“サイズ感”の問題だ。ファッションEC専業やアパレル企業の自社通販サイトなど、衣料品を主力とするEC運営企業は取り扱う各商品について採寸作業を行い、チャートなどでサイズ別数値を表示しているものの、消費者にとってはネットで服を購入する際の心理的なハードルとなっている。

また、返品理由としてもサイズ感は大きな割合を占めるなど、EC でファッション商材を販売する企業にとっては避けて通れない。そうした問題に対する解決策のひとつとして注目を集めているのがオンライン試着サービスだ。すでに、購入率の改善や返品率の低減などで一定の成果を上げているサービスも出始めているほか、サイズ選びが難しい商品カテゴリーに特化した試着ツールも出てきている。

欧米のファッションECでは返品が当たり前で、その分、サイズチャートが日本ほど細かくないなど、運営企業も手間をかけない。日本でも靴のECがメイン商材の「ロコンド」のように返品送料無料を基本サービスとする企業もあるが、返品という行為そのものを手間と感じる消費者が多いため、今後もサイズ問題を解決するサービスは増えそうだ。代表的なサービスの現状と将来展望などについて見ていく。

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最適サイズのブラジャー提案

ベンチャー企業のフィッティンは、ブラジャーのオンラインフィッティングサービス「FITTY(フィッティー)」を2016 年1月に本格始動した。
自分のバストの正しいサイズが分からず、間違ったサイズを着用している女性が約7割を占めるというデータもあるなど、ブラジャーはファッション関連商材の中でもサイズの問題が深刻なアイテムという。また、小さな子どもがいたり、バストにコンプレックスを抱えていたりして実店舗で購入しない人も少なくないことから、同社はオンライン上で正しいブラジャーのサイズが分かるサービスを始めた。
「フィッティー」は、利用者に4つの質問に答えてもらい、そこから得たユーザーの体型データと、ブラジャーの伸縮性やカップの形状と容量、ワイヤーの長さと角度など20項目におよぶ独自の計測データとを照合し、利用者にフィットするブラジャーだけをレコメンドする。商品の購入は下着メーカーや通販企業のECに送客しており、同社は手数料収入を得る格好だ。

単に商品をレコメンドするだけでなく、「フィッティー」では下着の専門家がチャットでブラジャーの相談に乗るサービスも用意。利用者からは「チャットのアシストがあって安心した」「バストの悩みは非対面の方が打ち明けやすい」などの意見をもらっており、チャットでおススメした商品はEC送客後の購入に結びつきやすいという。

4月からは“ピンポイントレコメンド機能”を追加。購入したり着用したことがあってお気に入り登録しているブラジャー(MYブラ)と、気になる商品の着用感の違いを重さやカップの深さなど全10項目で比較できるようにした。
また、同社では「フィッティー」のアルゴリズムを自社サイト内だけでなく、メーカーの自社ECや仮想モールの店舗にレコメンドツールとして導入できるようにしている。下着以外の商材が多いモールではブラジャーの購買履歴が少ないこともあり、まずは「フィッティー」の4つの質問に答えてもらい、最適サイズのアイテムを購入してもらうところからスタートし、購入経験のある消費者にはMYブラと比較しながら買い物ができるピンポイントレコメンドを利用してもらう。
すでに、「DeNAショッピング」と「アマゾン」の両モールと連携しており、ピンポイントレコメンドについてもモールの下着カテゴリーでテスト運用を始め、夏頃には本格スタートする見通しという。

一方、16 年夏以降の取り組みとしては、「フィッティー」を下着メーカーの店頭端末にアプリとして導入してもらうことで、リアルでの買い物をサポートする。商品のタグを読み込むことで、メーカー側が持つ顧客の購買履歴と結びつけ、過去に買ったアイテムと目の前の商品とのフィッティングができるようになる。
収益化に向けては、送客先ECからの手数料などがあるが、同社ではブラジャーをカスタマイズするのに必要なデータを収集している強みを生かし、ユーザー一人ひとりにぴったりフィットするブラジャーを自社で生産、販売してく計画だ。海外協力工場との関係構築や、生産ライン確保に向けた資金調達のメドをつけているようで、「フィッティー」にEC機能を実装し、フルオーダーメイドとセミカスタマイズの2パターンの受注に対応できるようにするという。
とは言え、足もとでは取引先メーカーとの関係性を強化したいことや、自社生産に乗り出すにはロットの問題なども生じるため、本格的な自社生産は17年以降になりそう。最初はOEM型でメーカーと「フィッティー」の共同開発商品などを作ることからスタート。「3年後をメドに自社のオリジナル商品とナショナルブランドのアイテムを半々くらいで取り扱えるようにしていきたい」(本間佑史子社長)とする。

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