アマゾンジャパンは11月15日から、有料会員「アマゾンプライム会員」向けに展開するスピード配送「PrimeNow(プライムナウ)」の対象エリアを東京23区全区に拡大した。同日付で東京・豊島区内に都内では3カ所目のPrimeNow用の専用配送拠点を稼働させ、同拠点でこれまでカバーできていなかった中野、豊島、北、板橋、練馬の5区へもスピード配送が可能になった。これにより、東京23区全区でPrimeNowを実施できる体制とした。最大商圏となる東京23区でのスピード配送サービス体制を整えることで競合他社との差別化を強めたい考えだ。
城北エリアをカバー
11月15日に東京・豊島区要町にPrimeNow専用の新たな物流拠点「アーバンFC豊島」を開設した。都内にはすでに世田谷・等々力と江東・豊洲に専用拠点を設置しているが、既存の2拠点ではカバーできなかった城北エリアの配送に対応。午前6時から深夜1時までの指定時間に1時間以内に配送する「1時間以内配送」と午前6時から深夜12時まで2時間単位の配送時間を選択して当該時間枠内に配送する「2時間便」を展開する。
取扱商品数は約6万5000点で牛乳や卵などを含む冷凍・冷蔵食品、調味料などの食料品や、水やソフトドリンクなどの飲料、洗剤やシャンプー、ベビー用品などの日用品のほか、ビールやワインなども販売する。
PrimeNowは昨年11月19日から、東京・世田谷区や目黒区など都内8区を対象地域としてスタート後、同12月3日に対象エリアを神奈川・川崎市の高津区および中原区まで拡大。今年1月12日からは川崎市内の宮前区と多摩区および東京・調布市と狛江市まで広げ、さらに1月26日からは新たに大阪・淀川区内および横浜・鶴見区内に専用配送拠点をそれぞれ設置し、大阪(大阪市内17区および守口市、摂津市、吹田市、豊中市)、兵庫(尼崎市・伊丹市)、横浜(11区)の一部地域。また、川崎市内のカバーエリアをさらに広げ、川崎区と幸区でも開始。2月23日からは、豊洲に新拠点を設置して対象エリアを都内12区および千葉・市川市、浦安市まで拡大していた。今回の新拠点設置で東京23区全区でPrimeNowの展開が可能になる。ただ、23区の中の全エリアではなく、一部の地域は対象外だという。
今後のPrimeNowの対象エリア拡大の方向性については明らかにしていないが「プライム会員の多い地域を迅速に“プライムナウ”が提供できるように準備を進めていく」(PrimeNow事業部・永妻玲子事業部長)としており、大都市圏での新拠点設置およびサービス開始を進めていきたい考えのようだ。
【Prime Nowの責任者に聞く サービス開始から1年の状況と今後は?】
2015年11月に都内の一部でサービスを開始したアマゾンの有料会員向けスピード配送サービス「Prime Now(プライムナウ)」。スタートから1年が経過した現状はどうなのか。責任者の永妻玲子Prime Now事業部長)に聞いた。(※本誌記者を含む報道陣との一問一答から抜粋・要約)
Q:現在までの利用状況は?
A:サービス開始以来、利用者数は毎月、順調に推移しており、成長を続けています。PrimeNowの利用されたことのあるお客様のうち、6割以上がリピーターとなって頂き、継続的に用頂いており、手ごたえを感じている。
Q:利用者が増加している理由は?
A:Prime Nowがお客様に提供できる高い利便性によるものだと思います。幅広い商品を1時間というアマゾン最速の配送スピードでお届けするということ。また、お客様が好きな配送時間を“より詳細”に選べるということだと思います。Prime Nowは1時間以内という非常に早く商品をお届けできるという利点はもちろんですが、早朝から深夜まで1時間ないしは2時間刻みで届けることができるため、荷物を受け取る際のよくある不便さ、例えば、受け取りを「午前中」に指定したら、結局、お昼ころ届いたために午前中丸々、時間が無駄になってしまったというような「商品を受け取る負担」の一部を軽減できます。こうした点もPrimeNowのサービスの特性だと考えています。
Q:Prime Nowで取り扱う商品の数も当初からだいぶ増やしているようです。
A:品ぞろえについては、サービス開始当初は1万8000点程度から始めましたが、この1年間で徐々に増やし、現在では6万5000点の品ぞろえとなりました。年初からは従来、Amazon.co.jpでは扱いがなかった牛乳や卵といった冷蔵商品を中心に食品の拡大に取り組んできました。食品以外ではAmazon.co.jpでの売れ筋、例えば、モバイル・PC周辺機器、季節家電、ドラッグストア商品、おむつなどのベビー用品などをPrime Nowでも取り扱い始めました。また、日常的に使用するような商品だけでなく、ちょっとこだわりのある食品などもお求めになられたいというニーズが非常に多いことが分かり、今年10月からは「こだわり食品ストア」という専用コーナーを設けて中価格帯のより上質な食料品や飲料の紹介を始めました。また、ワインの品ぞろえも増やしています。とくにこれからクリスマスシーズンですので需要が増えてきますスパークリングワインなども最大150銘柄ほどそろえ、ほとんどは冷えた状態でお届けできます。また、Prime Nowのサービス特性を活かして、話題の玩具を発売日当日の朝からお届けしたり、「ボジョレー・ヌーヴォー」の販売が解禁される当日深夜12時にお届けするなどの試みも行っています。
Q:Prime Nowでの売れ筋は?
A:先ほど申し上げたようなAmazon.co.jpでの売れ筋や「こだわり食品」などは大変よく売れております。また、当初、利便性という観点からばら売り、単品での販売をメインにしていましたが、実際にやってみると、1本でというより複数まとめて購入される場合が非常に多いということが分かりました。ですので単品販売は継続しながらも、ケース販売できる商品を増やしています。実際に「まとめ買いストア」という特集ページも作っています。
Q:利用者の属性は?
A:Amazon.co.jpでもですが、Prime Nowにおいてもお客様に性別や年齢を伺っていないため、詳しい顧客属性は分からないのですが、買われている商材などから推測するに恐らく主婦層も多いのではないかと思います。
Q:利用が多い時間帯は?
A:朝は6~8時の2時間枠を指定して定期的に利用されるお客様は結構います。出勤前に受け取りたいというニーズだと思います。商品は様々ですが食品なども多いですね。朝食需要であったり、お弁当用の冷凍食品なども多く売れています。あとは午後8時以降も多いですね。仕事を終えられて、恐らく会社を出る前や電車の中から注文してちょうど受け取れる時間だからだと思います。それ以降、深夜帯の注文も一定数あります。帰宅された後で、自宅でリラックスしながら楽しめる、雑誌やDVD、ゲームソフトのような娯楽商品などが売れています。また、特に天気の悪い日などは外に出ないで買い物をしたいというニーズがあり、通常は皆様がスーパーに買い物に行かれるような夕方にも込み合うこともあります。
Q:1時間以内配送と2時間便、利用はどちらが多い?
A:状況に応じて使い分けられているお客様が多いです。先ほど申し上げように、ある程度、決まった時間で、例えば、出勤前に受け取りたいという方は6~8時の2時間便を定期的に利用しています。ただ、外出先から帰宅した後で外に出るのが面倒だとか、先ほど申したように天気の悪い日などは、いつも2時間便を利用されている方も1時間便を使われるというパターンも多いです。
Q:早朝・深夜は配達員の確保も大変なのでは?
A:我々のこれまでの経験がかなり活きています。Amazon.co.jpで、また他国のPrime Nowで早朝・深夜にどのくらいの注文が入るのかなど予測が立てられるので、それを基にどの程度の人が必要かという計画が立てられます。それに応じて十分かつ必要な人員を確保できています。
Q:人件費がかさみそう。
A:そこはお客様が増えて注文をたくさん頂けるようになることで解決できますので、きちんとお客様が注文頂ける状況を作っていく方が優先度は高いです。
Q:米アマゾンのPrime Nowでは自転車による配送なども行っていますが日本は?
A:今のところは軽車両もしくはバイクで配送していますが、配送手段はいつも検討しています。ただ、日本において現状、比較的、大きくかさばる商品が売れ筋となっているので、バイクでは1人のお客様の荷物も積めないこともあります。まして自転車では無理ですので、結果として最も有効な配送手段は現状、軽車両ということになります。
Q:Prime Nowの課題は。
A:1つは配送エリアです。今回、豊島区内の新拠点の稼働で東京23区全区がPrime Nowの対象エリアになりましたが、やはり1時間以内ないしは2時間枠で配送しようとすると、その時間枠で届けられる範囲までのエリアまでしかカバーできず、区によっては全域を網羅できていないところもあります。例えば豊島区は全域をカバーしていますが新宿区はそうではありません。Prime Nowはプライム会員向けの1つの特典ですから、会員の方にはすべからく利用できるようにしていきたい。プライム会員がたくさんいらっしゃる地域に優先的に拠点を作っていき、なるべく多くのお客様に提供していきたいです。