米ベータが有楽町と新宿に同時出店 ―― 日本展開では丸井などが出資へ

 b8taJapan(ベータ・ジャパン)は8月1日、米・ベータの日本初進出となる実店舗を新宿マルイ本館1階と有楽町電気ビル1階に2店舗同時オープンした。

有楽町店での接客イメージ。ベータの店舗では最新機器なども体験できる

 サンフランシスコで創業したベータは体験型小売店を米国中心に展開して注目を集めている。「RetailAsASer-vice(サービスとしての小売り)」と呼ばれるソリューションを提供。店舗内の区画をさまざまなブランドに定額で貸すことで実店舗への出店を手軽にするとともに、販売を主目的にせず、発見と体験を重視した接客を行う。また、入り口のデモグラフィックカメラや天井のAIカメラを通じて来店客の店内行動をデータ化して出品企業にフィードバックする。

 オンライン市場の激化に伴ってオフラインで差別化を図りたいニーズがある一方、実店舗はコスト高となるが、ベータでは1区画(約60センチ×40センチ)当たり月額30万円前後で、店舗運営に必要な販売員の手配やトレーニング、シフト管理、在庫管理、物流サポート、POSはすべて付帯サービスとして月額出品料金に含めているほか、接客に伴う売り上げも全額出品企業のものとなるのが特徴だ。

 日本展開に際しては丸井や三菱地所、カインズが米エボリューションベンチャーズに出資。同ベンチャーキャピタルと米ベータの合弁でベータ・ジャパンを設立している。

 新宿と有楽町の両店では、海外の最新ガジェットやD2Cブランドのコスメ、ファッション、フードなど145点以上を取り扱い、日本初進出の商品やサービスも試すことができる。未発売の展示品などもあるが、約85%の企業が実際に販売しており、店頭や出品者のECでも購入可能だ。

新宿店は新宿マルイ本館1階にオープンした

 新宿店(面積122m2)には1室、有楽町店(同256m2)には3室の中規模区画に仕切られた半個室スペースのエクスペリエンスルームを設置。他の出品エリアとは異なってブランドが独自に壁面装飾や什器などを設置でき、ブランドの世界観を体現する空間として展開できる。新宿店のエクスペリエンスルームには、オープン時はBASEが運営するネットショップ作成サービスを利用中の加盟店が出品している。一方の有楽町店では、グーグルとホームセンター運営のカインズの商品が並ぶほか、もう一室はイベントスペースとして出品企業とのコラボイベントなどを開催する予定だ。

新宿店のエクスペリエンスルームには BASE が出品している

 店舗オープンに先立って行われた記者説明会で、出資企業の一社である丸井の青野真博社長は「ベータは米国で小売りの未来を象徴するお店として注目されている。丸井もリアル店舗の価値を見直していて、体験を重視する姿勢は一緒だ」とした上で、「丸井のリソースも活用してベータとともに新しい小売りの世界を作っていきたい」と語った。

 また、カインズの渡邊喜久社長補佐も「当社はデジタル戦略を推進中で、「ファブリックトウキョウ」の新宿店ベータへの出資はその第1号となる。ベータの店舗では当社PB商品を体験してもらい、消費者の反応を知りたい。カインズは都心の店舗は少なく、認知向上も図りたい」とした。

 ベータ・ジャパンは、両店の品ぞろえについて、出資企業からの紹介もあるが、基本的に自社キュレーションをしない」(北川卓司カントリー・マネージャー)とした上で、「ベータのコンセプトである“発見と体験”のためにも雑多感のあるお店にしたい」と話した。また、同社ではコロナ禍もあって今後の店舗展開については明言を避けたが、「今回の2店舗でしっかり地固めし、その後、主要都市に出店していきたい」(同)としている。

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無人の採寸ボックスも

 ベータの日本上陸に企業側も注目していたようで、オーダースーツのEC事業を手がけるFABRICTOKYO(ファブリックトウキョウ)は、3Dスキャンでオーダーするアパレルブランド「スタンプ」の完全無人型スキャンボックをベータの有楽町店で展開する。

 「スタンプ」は2019年9月にベータ版としてサービスを始め、同年11月からオーダースーツのD2Cブランド「ファブリックトウキョウ」の新宿店内に3Dスキャンを行うボックスを設置。クリエイティブワーカー向けのオフィスカジュアルウエアを展開し、テクノロジーを用いたストレスフリーな購入体験を目指している。

 今回、店舗運営を委託できることに加え、月額サブスクリプションモデルでの契約で手軽な出店が可能なことから有楽町店への出店を決めた。

 同店ではスキャンボックスを設置し、「無人」「タッチレス」「在庫レス」に挑む。これに合わせてサービスを改良。スキャンは1回3秒で完了するほか、来店予約からオーダーまでをすべてLINE上で完結。店舗設備にはスマートロックを採用し予約枠をタッチレスで管理する。新型コロナにも対応してスキャン体験は非接触にした。

 専属スタッフを配置せず、製品の在庫を一切持たない、約1坪のミニマムな店舗での体験と、オフラインとオンラインがシームレスにつながるスマートな購入体験で、未来のリテールを体感できるとしている。

ドローンの体験も可能

 また、カー用品の販売などを手がけているオートバックスセブンはベータ・ジャパンの2店舗で、見守りサービス「ウェアアイ」のAIロボット「ズック」や、ドローンサッカーの機体「スカイキック」など4商品を出品、販売している。

 出品商品については、オートバックスセブンの自社通販サイトがメイン販路のため、今回、顧客が商品に触れることができるリアルの場を設けることで、ブランド認知の拡大を図るとともに、通販サイトへの送客などにもつなげたい考えだ。

 新宿店に出品した見守りAIロボットの「ズック」は、身長10cmのミミズク型ロボットで、対話機能と人感センサーを搭載しており、AIによる自然な会話が楽しめるという。スマホやタブレットで会話頻度や通常と違う行動などを確認でき、優しくゆるやかに見守れるとしている。有楽町店に出品した「スカイキック」は、安全に遊べるガード付きドローンで、5対5でドローンボールを敵のゴールにくぐらせて点数を競うサッカーゲームができる。

 また、カインズは新宿店で10アイテム、有楽町店で16アイテムを出品。家事を楽にする商品や収納関連商品、ペット関連商品、DIY関連アイテムなど、暮らしの悩みを解決できるオリジナル商品を展開するという。

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