夢展望がデコメール配信をスタート

【2010年11月号】夢展望は11月18日、装飾メール(デコメ)配信サイト「夢展望デコメ」を開設し、携帯電話向けデジタルコンテンツ事業をスタートした。開設した「夢展望デコメ」では装飾メール(デコメール)素材1万種類を配信し、月額315円で自由にダウンロードできる仕組み。アパレルのモバイル通販を主力とする夢展望とって新規事業への参入は「売上高100億円への布石」という意味を持つようだ。

デコメール利用頻度が高いと見られる未来の顧客層である10代を早期に囲い込み、また、服を購入しない既存客の離脱防止につなげる考えだ。まずは初年度会員数100万人を目指し、EC事業拡大の新たなドライバーとしたい考えだ。

 装飾メールは毎月600種類を追加

夢展望が開設した「夢展望デコメ」はコンテンツ制作を手掛けるポッケと業務提携して行うもの。月額使用料を主な収益とし、利益をポッケと分配する。まずはドコモの公式サイトとしてスタートし、順次auやソフトバンクの公式サイトとして展開する計画だ。

装飾メールの素材は夢展望の商品開発担当者が監修し、アパレルイメージに合った装飾メール素材を提供する。通販サイトでテイスト別に展開する5コーナーと連携し、「夢展望デコメ」でもセクシー系の「グラマラス感」や姫系「プリンセス館」、OL層をターゲットとした「キレイ館」など5つの専用ページを設けた。

サービス開始当初は装飾メールを1万点用意。今後は、毎月600種類を追加する予定で、女性誌「小悪魔ageha」などに登場するモデルを起用して、手書きの装飾メール素材なども提案することでプレミアム感を高める。また、「メールコンテスト」など、ユーザー参加型イベントの展開で顧客の活性化を図る考えだ。「ギャルの好みを熟知しているデザイナーの監修で、ユーザーの志向にうまく融合できるだろう」(岡隆宏社長)と見ている。

 売上高100億円は超えたい“壁”

  夢展望がデジタルコンテンツ配信事業に乗り出したのは、直面する“壁”を乗り越えるためだ。同社の2009年9月期売上高は前期比45.4%増の45億6300万円で、2010年9月期においても前期並みの増収率を維持する見通し。

順調に事業を拡大する同社だが、実は、収益性に課題があった。得意とするファストファッション(低価格帯のトレンド衣料品)の粗利益率は、ブランド衣料品と比べて低いのが実情。「アパレル全般に言えることだが、人件費や販管費などの固定費は、売上高が50億円以上100億円未満であっても、100億円以上になっても大きく変わらない」(岡隆宏社長)としている。

安定した利益を確保するためには売上高100億円はどうしても超えたい“壁”だった。「収益性を見ると今の事業規模は中途半端。今後、伸び率が鈍化してしまうか、それとも一気に100億円を突破するかはこの2年半が最も重要なステージになってくる」(岡社長)として、新規客層の開拓と既存客の維持を狙い、装飾メールの配信事業を開始することにした。

同社が新規事業として装飾メール配信事業への参入を決めたのは、リスクが低く同事業単体としても利益を確保しやすかった。ポッケとの業務提携により、配信技術の開発などへコストを投資することなく事業を開始できる。また、デジタルコンテンツは物販とは異なり仕入れのリスクがない安定性の高さも魅力だった。

加えて、自社ドメインサイトの数十万人のユーザーを送客することで、デジタルコンテンツ配信事業成功の要でもある集客の課題もクリアすることが可能だ。また社内デザイナーを起用することで、新規事業のための人件費をかけずにサービスを行えることも参入を後押ししたようだ。 

離脱客をつなぎとめる 

 では具体的に装飾メールの配信を本業であるネット販売事業の拡大につなげるのか。これについて岡社長は「買い物をしないユーザーを、エンターテインメント性のある装飾メール素材でつなぎとめたい」という。つまり、「夢展望デコメ」で見込み客や離脱客の“受け皿”として活用することを構想しているわけだ。

「夢展望デコメ」がターゲットとする10~20代の女性は携帯電話を使いこなしており、装飾メールへの関心も高いと見ている。実際、自社ドメインサイト「夢展望本店」の顧客数十万人を対象に希望するデジタルコンテンツを聞くアンケート調査を実施したところ、ゲームや占いを押しのけて「装飾メール」が最上位に上った。

ユーザーのニーズに対応することで自社顧客を「夢展望デコメ」に送客するほか、雑誌などで展開する広告を活用して「夢展望デコメ」を紹介することも検討。そのほか、業務提携するポッケとリンクすることも決まっているという。 

装飾メールの伝播で認知度を向上 

一方の新規客層である10代については、衣料品のネット販売需要が発生する前から、“夢展望”を知ってもらうチャンスとしても活用していく。夢展望によるとモバイル通販の低年齢化は加速しており、昨年と比べて顧客の平均年齢は4歳低下した20歳前半となっているという。「近い将来の見込み客である10代に、装飾メールの利用を促すことで夢展望に慣れてもらい、通販サイト“夢展望”での衣料品を購入につなげる」(同)考えだ。

自社デザイナーが監修した装飾メールが衣料品のイメージと合致しており、これをユーザー同士が送り合うことで、夢展望イメージの浸透を図ることができる。また、送り合うことによる装飾メールの伝播で「夢展望デコメ」の認知度向上につながるメリットがある。

「夢展望デコメ」から通販サイトへ誘導する仕掛けは未定だが、自社通販サイトで利用可能なポイント付与や特典などを構想しているようだ。

スポンサードリンク

岡隆宏社長に聞く「夢展望デコメ」の狙いと勝算 

洋服買わないユーザーをファン化する

Q;「夢展望デコメ」開始の経緯は。

A:顧客に楽しんでもらいたいと考えたのがきっかけです。洋服はブランドに固定客が付きますが、可愛くて安い品ぞろえに満足する人もいます。楽しんでもらい夢展望のファンをどれだけ作るかが重要だと考えています。

Q;装飾メール配信事業がネット販売に与える影響は。

A:我々の理想は、年齢によって顧客がスライドすることです。10代の顧客を100万人開拓したら5年後、25歳になっても100万人が利用してくれることが理想です。若年層を取り込むことでマーケットを拡大させたいと考えており、その受け皿が装飾メール配信事業となります。洋服を買わないユーザーはデジタルコンテンツで楽しんでいただき、何かのきっかけでニーズが発生したときに当社の通販サイト「夢展望」で購入してもらいたいと考えています。

Q;これまで順調に業績を伸ばしていますが、今回の取り組みは売上高100億円突破を意識したものか。

A:現状、当社の顧客数は200万人で、リピート率は40%。1人当たりの平均講入会数は5~6回と高いですが、商品の原価が高いため、収益性には課題があります。運用コストの低い装飾メール配信事業で収益を改善できれは商品の値段を下げることができます。さらに、今回の取り組みがツイッターやブログなどで話題になれば、サイトのページビューも上がり新規購入者を開拓できるチャンスにもなりますので集客効果も期待しています。

Q;勝算は。

A:ネット販売事業者がデジタルコンテンツの配信を行い、成功しているケースは少ないと思いますので、われわれもチャレンジです。ですが、売上高の8割以上をモバイル通販で占める当社の場合、親和性が高いと確信しています。10~20代はモバイルで装飾メールを送り合うことが定着していますし、ターゲットであるギャルのし向に合致するよう、自社のデザイナーが監修しています。ポイントや特典などで訴求して、「夢展望デコメ」のユーザーをネット販売に誘導していきたいです。

Q;今後の計画は。

A:初年度会員数100万人を目標としています。将来的には顧客の囲い込みの受け皿はいくつあっても良いとおもうので、ユーザーのニーズに合致したデジタルコンテンツを提案し、ロイヤリティの高い夢展望ファンを創造したいと考えています。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG