アマゾンジャパンは11月15日から、アマゾンが独自開発した人工知能(AI)の「Alexa(アレクサ)」を搭載したスピーカー型端末「Amazon Echo(アマゾンエコー)」の販売を始めた。スピーカーに話しかけることで、アマゾンの通販サイトから商品を購入できるもの。また、好きな音楽を再生したり、ニュースを読み上げたり、家電の操作などもできる。すでに発売中の米国では「アマゾンエコー」はAIスピーカーでトップシェアを誇る人気商品で日本市場への投入にあわせ、AIを日本語対応し、まずは3モデルを発売する。
日本ではすでにグーグルやLINEがAIスピーカーを発売しているがネット販売への対応はできていない。AIスピーカーとECの親和性を見る上でも、また、「アマゾンエコー」の発売を機に、様々な企業が提供を始めている「アレクサ」に対応した音声ベースのサービスの行方も今後、ECにも影響を与えそうで「アマゾンエコー」の動向が注目されそうだ。
「エコー」3機種を投入
11月7日からアマゾンジャパンの通販サイトで承認制での注文予約を開始し、15日から、スタンダードな端末「エコー」(税込1万1980円)と小型の「エコードット」(5980円)、最上位端末の「エコープラス」(1万7980円)の発送を始めた。各端末ともアマゾンが独自に開発したAI「アレクサ」を搭載し、利用者が「アレクサ」と呼びかけると起動し、アマゾンジャパンが11月8日から開始した4000万曲以上の楽曲の定額制聞き放題サービス「Amazon Music Unlimited(アマゾン・ミュージック・アンリミテッド)」(月会費980円、有料会員は「Amazonプライム会員」は月780円または年7800円)などを活用して好きな音楽を再生したり、対応する家電を操作できる。また、外部企業が「アレクサ」向けに開発した様々なサービス、スマートフォンでいうところの“アプリ”にあたる「スキル」を利用者が事前に有効化することで、最新のニュースを読み上げたり、タクシーを呼んだり、人気化粧品の情報を教えたりもする。
なお、日本の発売に先立って、約1年をかけて「アレクサ」を日本語対応し、発音は同じでも意味が異なる同音異義語の聞き分けも可能だという。また、独自の技術により、6メートル離れていても話し手を識別して起動し、利用できるという。
「○○を買いたい」に対応
事前にアマゾンにユーザー登録をして、個人情報や決済方法、配送方法などを設定しておけば「エコー」によるアマゾンの通販サイトでのネット販売も可能で、例えば「お茶を買いたい」と話しかけると、まず過去の購入履歴から検索し、そこにお茶があれば「○○(商品名)があります。再度、購入しますか」などと返答し、利用者が「買います」と答えれば、注文した上で「○○日に到着予定です」と配送予定日などを案内する。
購入したい商品が過去の購入履歴にない場合はアマゾン内の商品を検索し、該当する商品を何件か読み上げ、さらに商品情報が知りたい場合は続きの商品情報を紹介し、気に入ればそこから商品を購入することもできるという。なお、読み上げる商品の情報は連動するスマホアプリ「Amazon Alexa」上でも当該商品の画やスペックを表示し、利用者はそこで確認して購入することもできるという。
また、米国では「アレクサ・エクスクルーシブ・ディール」という「エコー」の利用者などに向けた限定の割引セールも実施しており、「今のディールは何?」などと話しかけるとセール対象商品の情報を知らせる試みなども実施しており、日本でも同様の試みを実施する可能性もありそう。
ECのインターフェイスになれるか
日本ではグーグルが「グーグルホーム」、LINEが「クローバウェーブ」というAIスピーカーを発売中。シェア争いの行方ももちろんだが、AIスピーカーとECへの親和性についても気になるところだ。「グーグルホーム」は日本ではEC対応はまだ行っておらず、「クローバウェーブ」も「ECに対応するプロジェクトは進行中だが、対応時期などは未定」(LINE)としており、現状では「エコー」が唯一、対応している。ただ、「(エコーは)現状、ショッピングツールとしてはフレンドリーではない」(アマゾンジャパン)としており、今後、使い勝手を改善していく考え。AIスピーカーはECの新たなインターフェイスになりえるのだろうか。
また、「エコー」で利用できる各社の音声サービス「スキル」の今後も注目だ。アマゾンジャパンでは「エコー」の発売に合わせて、11月8日から「スキル」の開発を支援するツール「Amazon SkillsKi(t ASK)」と、スマート・デバイスの開発リソース「Alexa Voice Service(AVS)」の提供を日本でもスタートさせた。「スキル」を開発したい企業に無償で提供すること様々な「スキル」を開発することができるようになった。これらを使ってすでにスタート時点では100社以上による265の「スキル」が展開されている。例えば、「アレクサ、今日のニュースは?」などを話しかけると読み上げるニュースをヤフーや朝日新聞などが、口座の残高などの読み上げなどを三菱UFJフィナンシャルなどが提供している。
EC系サービスでは、例えば、アイスタイルが化粧品情報サイトの売れ筋情報などを使って「コスメのランキングを教えて」など話しかけると「エコー」が化粧品の人気ランキング情報を読み上げるスキル「@cosme化粧品ランキング」やTOKAIの宅配水の追加ボトル注文を行なう「TOKAIおいしい水の宅配便」、東急ハンズで販売するおすすめ商品などの情報を読み上げる「東急ハンズ」、アダストリアが同社の人気ブランドの売れ筋ランキングを読み上げる「アダストリアファッショントレンドパーク」などの試みもスタートしており、ネット販売ビジネスにつながり得るようなスキルもある。「エコー」の売れ行き次第だろうが、今後、「スキル」の利用も進んでくるとみられ、ネット販売実施企業も「スキル」開発を含めて、「エコー」の行方を注視しておく必要がありそうだ。