オムニチャネル時代待ったなし! 有力アパレル各社のEC戦略は?

有力アパレル各社がECチャネルの強化に本腰を入れている。ECチャネルの主要な売り場だった「ゾゾタウン」をはじめとするファッションECモールは自社では獲得できない新規客との接点として引き続き重視しながらも、軸足を自社通販サイトに移そうとしている。その際、モールにはない強みとなるのが実店舗で、会員証機能を持たせたアプリを通じて自社ECとリアル店舗の併用客を開拓し、両チャネルをシームレスにつなぐオムニチャネルサービスで顧客の囲い込みを進めようと動き始めた有力アパレル企業のEC戦略を見ていく。

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アプリでECと店の併用客開拓
客注アプリの対象ブランド拡大

【事例① TSI ホールディングス】

客注アプリの取り組みで先行するアルページュの通 販サイト

TSIホールディングスは、自社ECと実店舗を併用するオムニチャネル会員の獲得に力を注ぐ。TSIグループの2019年2月期におけるEC売上高は、前年比18.0%増の341 億円に拡大。EC化率は20.7%となり、初めて20%を超えた。自社ECの売り上げは約33%増の100 億円で、EC売上高に占める自社EC 比率も約3割に上昇した。

前期は、自社ECでモバイルファーストを推進した。各ブランドのモバイル通販サイトで表示速度をサービス品質のKPI に設定。モバイルサイトの最適化を進め、表示スピードの改善がサイト離脱率低減につながった。モバイル経由のEC売上高は79.0%まで上昇。モバイルEC化率について、グループのEC事業を統括するTSIECストラテジーの柏木又浩社長は、「8割程度が適正水準」としており、モバイルファースト化は前期までに一定の区切りがついたとする。

一方、オムニチャネル戦略のもと、顧客基盤となるメンバーズカード機能を備えたウェブアプリ作成ツール「ヤプリ」を採用したスマホアプリを各ブランドで展開してきたが、前期は第2フェーズとしてブラウザーを介さずにスマホ端末の処理で動くネイティブアプリ化にも着手した。

米プレディクト・スプリング社のプラットフォームを活用したネイティブアプリについては、「東京スタイル公式オンラインストア」で展開するブランドや、TSIグルーヴアンドスポーツが手がけるゴルフ系ブランド、アングローバルが展開するアパレルブランド「MHL」のアプリをネイティブ化したが、グループ全体でアプリをネイティブに移行したわけではない。

ネイティブアプリは購入までのプロセスとスピードが速く、ウェブアプリに比べて購入率は約4倍高い傾向にあるが、アプリの役割としてロイヤルカスタマーとの結び付きを深めるメンバーズカード機能の重要性が高まっていることからも、EC利用の促進と購入率だけを重視して全アプリのネイティブ化に振り切ることはないようで、ブランドごとに異なるアプリの役割や必要な機能、費用対効果などを考慮してアプリを設計・運用していく。

また、TSIグループでは実店舗と自社ECを併用するオムニチャネル会員の年間購入金額が、ひとつの販売チャネルしか利用しない顧客と比べて4倍弱高いこともあり、店頭とECをつなぐアプリを引き続き重視する。

新客開拓の面では、グループを挙げてグーグルとの連携を強化。自社のロイヤルカスタマーに類似する消費者をグーグルの属性から探す取り組みで成果があったことから、今期は「グーグルアナリティクス」の上位サービスをグループ全体で導入し、幅広い範囲の行動履歴を分析してデジタルマーケティングの精度を高める。

今期、ブランドごとに展開する自社EC については、CRMの観点から会員登録を簡易化し、新客開拓と会員のアクティブ化を促進するとともに、ソーシャル連携の柔軟性を高める。

オムニチャネル戦略では、グループのアルページュで先行している客注アプリの対象ブランドを拡充する。当該アプリは、店頭での欠品時にEC在庫を引き当て、その場で決済してもらって商品を自宅に届けるサービスで、機会ロス軽減などで成果が出ていることから、グループ企業への導入を推進する。8月1日からサンエー・インターナショナルのブランド23店舗でテスト運用を開始しているほか、年内にサンエー・ビーディーやローズバッド、アングローバルの直営店舗での導入を順次、進めていくという。

中計で掲げるデジタルネイティブブランドについては、モール型の自社EC「ミックスドットトウキョウ」で18年3月から扱うニューヨーク発のバッグブランド「ステイト」を候補のひとつとする。同ブランドはECチャネルをメインに販売しながら、19 年春には伊勢丹新宿本店や博多阪急で期間限定店を開催して好評を得たこともあり、「TSI流デジタルネイティブブランドのモデルケースになり得る」(柏木氏)という。

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