スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションは3月8日、自社が運営するネットスーパー用で初となるモバイルアプリ「ライフネットスーパーアプリ」の配信を開始した。チェーンストア向けECの垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を展開する10X(テンエックス)とともに展開するもので、豊富な品ぞろえやプライベートブランド(PB)商品などの購入が可能なこと、また気に入った商品を保存できる「マイリスト」といった機能を有していることなどが大きな特徴という。今回のアプリは、既存のブラウザーによるネットスーパー、アマゾンジャパンを通じた販売に加え、ライフのネット販売の3つ目のアプローチと位置付けている。
アプリは、全278店舗のうち61店舗で展開するネットスーパー「ライフネットスーパー」をより利用しやすくするために提供。ライフではネットスーパーを2011年に開始しているが、当時はスマホがまだ普及していなく、長らくブラウザーだけで展開してきた。スマホが普及し、より利用しやすいネットスーパーの展開を図る狙いから、10Xと組みアプリに取り組むことにした。
アマゾンとの棲み分けも
ライフCX共創推進室の加藤崇室長は発表会見で10Xと組んだことについて、「まず現場をよく分かっていること、もう1点が『ステイラー』で迅速に展開できるというところを評価した。現場よく理解していないと時間がかかってしまう」とした。また、自社のネットスーパーとアマゾンを通じた販売の棲み分けについては、「共存できると考える。エリアで重なる部分も一部あるが、ライフの商品を知ってもらうことがアマゾンでも可能になる。自社のネットスーパーにおいては店舗を起点としており、現在ご来店いただいている顧客に利用いただける。どちらも強化していく」(加藤室長)。さらに、ネットスーパーの利用層は、「子育て世帯が多いが、裾野が広がっており、ユーザーは多様化して少しずつ年齢層が上がっている」(同)。
アプリの特長は、「一覧性の高い売り場」「ライフこだわりのプライベートブランド商品」「お気に入り商品を保存できるマイリスト」という。スマホアプリでの素早く快適な操作性で豊富な品ぞろえから便利に買い物でき、セール商品などのチェックができ、PB商品は展開する4種類のPBの人気の高い商品が購入できる。「マイリスト」ではいつも購入する商品を「お気に入り」に設定しておくと、アプリの下タブから確認でき、定番として毎回購入する商品は一括でカートに追加でき、買い物の時短を可能にするという。店舗を回るように、商品の詳細を確認し、カートに追加することなどサクサク使えるようにしたとしている。
加藤室長は、「リアル店舗とネットスーパーをシームレスにつなげられることが重要になる。ネットの拡張というのが主目的というのではなく、顧客にとっての地域での1番店とするため、リアル店舗で購入いただき、その商品を食べておいしさを伝えられ、また来店いただく。この一連の顧客の行動をネットスーパーにおいても可能にすることが狙い」とアプリ展開について述べた。
10Xと組み迅速に開発
今回のアプリは、10Xの「ステイラー」により、早期に開発できたという。10Xは17年6月に創業、献立のアプリ開発などを行ってきた。19年にはチェーンストアと組み、献立に必要となる食材を購入できるような仕組みを立ち上げた。その関連で、自社で倉庫を用意して、EC(ネットスーパー)が展開できる体制にし、ネットスーパーに関する知見も構築してきた。昨年に「ステイラー」をリリースし、ドラッグストアやスーパーマーケットなどの多店舗するチェーンストアのECを垂直に立ち上げための支援に乗り出している。初期のリスクが大きいチェーンストアのECにおいて、初期投資を抑えて、月額の料金体系で展開できるようにすること、さらに迅速に立ち上げられるようにすることをミッションにしているという。10Xの矢本真丈社長は、「楽しく買い物できるUX、受け取りまで含めて、それぞれ最適化し、さらに配送事業者向けオペレーティングシステムや自動のルーティングなども可能にする」のが「ステイラー」としている。
「ステイラー」はモバイルアプリのほか、店舗向けのピックパックや在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティングシステムなども提供できることから、ライフとは物流回りの機能の活用についても次のフェーズとして検討するという。「ネットスーパーなどは従来型が(配送費などのコスト超過で)利益を出すのが難しかった。アプリでいかに利用していただけるか、またピックパックについて数百の店のフロントとバックヤードを見て研究してきた。店舗全体をサポートすることにより、長期的にECが成長できるようにすることを『ステイラー』で目指している」(矢本社長)。
矢本社長によると、昨年2月に新型コロナウイルス感染症の問題が発生して、ネットスーパーにとっては追い風となり、アメリカのグロサリーECのインスタカートはそれまでも毎年20~30%成長していたが、コロナ禍では月ベースで5倍の成長という時期もあり、現状でも落ち込まず3~4倍の売り上げ規模となっているという。また、英国のスーパーマーケットチェーンのセインズベリーはこの1年で2倍となっており、EC化率が8%から15%へと高まっているという。
米英と比較し国内を見ると、うまくECで供給できない状況が見られ、約2万2000店あるスーパーのEC化率は全体で3.7%にとどまっており、コロナ禍での需要増の対応でも、サーバーが落ちたり、リソースが足りなかったり、遅配なども加わり、機会損失しているようだ。その要因としては、最適なUXを提供できていない、新たなサプライチェーンの構築と運用の問題、従来型のシステム開発での展開を挙げている。UXは他小売りと全く異なるものであり、ワンストップショッピングでの求める商品の見つけやすさ、注文後に欠品の発生(デジタル故の現象)、ピックパックも注文者の数の分だけ個別に行わなくてはならないという手間などが課題という。
なおライフは20年度のEC売上高で50億円を見込み、21年度は倍の100億円を計画している。新アプリでネットスーパーの利用者の裾野拡大を図っていく。