注目EC各社のサステナブルへの取り組みは?

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リサイクル素材使った商品化など進む

 自然環境の維持に役立つ取り組みや自然環境に配慮した商品の開発販売などサステナブルを意識したEC実施企業が目立ってきた。かつては社会貢献活動という意味合いが強く、事業とは切り離されて考えられてきたこともあったが、環境問題などへの関心も高く、商品を購入する際は「どこから買うか」を大事にし、共感できる企業から商品を購入するという消費者が増えており、取り組みを進めることで事業に貢献することもあり、逆に取り組みの遅れは企業にとって経営的にマイナスとなる可能性もある。先進的な取り組みを行う注目すべきEC実施企業各社の考えや試み、進捗などを見ていく。

サステナブル経営で成果

 ファッション通販サイト「リエディ」を運営するネオグラフィックは、サステナブル経営に舵を切ったことで利益率やリピーター率が改善しているようだ。

 同社は、2007年に「ギャルスター」のブランド名で「楽天市場」に出店。トレンドの服を早く、安く販売するスタイルは、ファストファッションの隆盛とも相まって、若い女性の支持を得て急成長し、さまざまな仮想モールで各種アワードを受賞する人気店となった。

「リエディ」でロングセラーの美脚テーパードパンツは 21 年春から環境 に配慮したサステナブル素材に刷新した

 一方で大量生産や売上高重視の事業モデルについて、「本当に世の中にとって良いことなのか、従業員が商品一点一点に愛情を注げているかを自問していた」(工藤正樹社長)。そうした中、「お客様からお怒りの声が増えたり、従業員が悩んでいる姿を見て、自分たちが目指していた事業とはかけ離れてきていることに気づいた」(工藤由紀子専務)ことから事業を見直したのが2015年のことだ。

 展開ブランドを「ギャルスター」から「リエディ」にリブランディングし、“外見を着飾ることによって内面の豊かさを磨けるブランド”をテーマとした。同時に、同社の事業を通じて顧客や従業員の未来を豊かにすることをビジョンに掲げたことで、SDGsの考え方が大切ということに気づいたという。

 売り上げが大きく減ることを覚悟した上で、作り手が1枚1枚の商品に愛情を注ぎながら物作りに取り組めるか、顧客が自信を持って着られる服であるかを優先し、少しずつ生産背景を変えていった。また、経営陣だけでなく従業員全員がSDGsの考え方を学び、同じような価値観を持つ人材も採用し始めた。

 一気にサステナブルな商品に移行するのは技術的にも資金面でも難しく、リサイクル素材についてもエビデンスの確認が不可欠とする。現状ではサステナブル商品の構成比は20%程度だが、2030年までに生産する服の50%以上をサステナブルなアイテム、再生可能な素材に切り替えるというサステナブルミッションを打ち出している。

 目標達成に向け、再生可能素材の採用や、正当な対価を払っている工場などの開拓を進めている。加えて、サステナブルを広義にとらえ、昨年にはジェンダーフリーの新ライン「アイダブリュー」を開発したほか、エシカルジュエリーのブランド「アンカムーア」の展開も始めた。

 商品価格帯は「リエディ」に刷新してワンマークからツーマーク高くなったものの、経済的な制約のある人でも購入できるように「グッドプライスでグッドクオリティーを心がけている」(工藤社長)とする。

 既存顧客に加え、サステナブルファッションに関心のある消費者が「リエディ」の商品を初めて購入するケースもあるようで、自社ECの顧客アンケートでは、サステナブルな商品だから購入したというユーザーが年々増えているという。

 サステナブル経営に乗り出したことで、重視するKPIはリピーター率と在庫水準に変わった。必要な商品と枚数、時期などをデータから分析し、余らせないことを重視。大量に在庫を抱えてとにかく機会ロスを発生させないという従来とは真逆の事業モデルになっている。

 リブランディングを実施して売上高は10億円程度落としたものの、「ギャルスター」時代と比べて利益率やリピーター率がかなり上がったほか、プロパー消化率も高まったという。昨年は在庫水準の改善を図ることができ、売上高も上昇に転じているようだ。

 従来のファストファッション型ビジネスでは“安いから買う”という消費者が多く、競合店がさらに安い価格で販売したらユーザーは流れてしまうが、現状はコアなファンが増えており、再訪問してくれるという。

 さらなるファンの獲得に向けては、インスタライブやユーチューブチャンネルを通じてサステナブルな商品を含めたコーディネートを提案するなどしているほか、2020年春夏と2020秋冬の「東京ガールズコレクション」のサステナブルステージに登場した。また、エシカルファッションに関心の高いインフルエンサーが増えているため、影響力のある人とのコラボ商品も展開していく。

 今年は、循環型サーキュラーエコノミーの取り組みを外部企業と組んで行いたい考えで、アパレル商品の回収・リサイクルの仕組みを整えたいとする。

 同社では、日本のアパレルEC事業者にとって今年は“サステナブル元年”になると見ている。「多くの企業はトレンドだからということでサステナブスな商品を扱い始めると思うが、それでは最終的なゴールにはなかなか到達できない。経営の中心にサステナブルを置くということが大事」(工藤社長)とした上で、「サステナブルは広義な言葉だけに、当社ではエビデンスデータを重視している。そうでないと、どんなものでもサステナブルと言えてしまう」(同)とし、安易なサステナブルファッションの潮流に警鐘を鳴らす。

 なお、「リエディ」は持続可能な社会につながる取り組みを行ったショップとして、「楽天市場」の楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2020で「サステナビリティ賞」を受賞している。

再資源化し製品化、販売へ

 事業者向けオフィス用品通販事業や日用品通販サイト「LOHACO」を運営するアスクルでは顧客事業所に配布した通販カタログや自らが販売するプラスチック製品を回収し、資源化したのちに商品化して販売する試みを進めており、顧客を巻き込んだサステナブルな取り組みが成果を出し始めている。

売れ行き好調なアスクルのカタログの再生紙を使っ た紙袋「カムバック」

 これまでもCSR活動として環境に配慮した活動を進めてきたが、昨年、今後、重点的に取り組むべき「マテリアリティ(重要課題)」を定義して、「事業活動を通じて社会課題を解決する」というビジネスに組み込んだ持続可能な形で環境に配慮した取り組みを行なう形に舵を切った。あわせてCSR部門を新たにサステナビリティ部門に改組し、同部門を中心に様々な取り組みを進めているが、すでに形となった試みが2月から販売を開始した同社の通販カタログの再生紙を使った紙袋「Comebag(カムバッグ)」だ。

 同紙袋本体の原紙に再資源化したアスクルの通販カタログを約15%配合したもの。新カタログを発刊する度に役目を終える古いカタログを資源活用のために再資源業者へ引き渡すだけではなく、原材料化や製品化が可能な道を自社で探し出し、サプライチェーン各社の協力を得ながら再び商品化することができないかという問題意識から開発がスタート。なかなか製品化してくれるメーカーが少ない中、協力メーカー探しから始め、ようやく製品化。環境配慮に配慮しつつ、袋本体の色や風合い、ギフト・手土産用、物販用など様々なニーズに対応すべく4種類を用意。サイズごとに配色を変えた持ち手の色にまでこだわり、おしゃれに使える紙袋として仕上げたこともあり、売れ行きも予想を上回るなど出足は上々なようで、資源回収から製品化、再販売と持続可能な循環が成立している。

 このほか、同社の顧客事業所のオフィスから排出される使用済みのクリアホルダーを回収し、再製品化することでプラスチックごみの削減とCO2排出の削減を目指す取り組みも進めている。

 同社ではクリアホルダーなど様々なプラスチック製品を販売している。一方で使用済みプラスチック製品の中でもオフィス用品は、回収スキームがなく産業廃棄物となって捨てられている状況だった。

 「当社は安くてよいものを売ることで多くのお客様に購入頂いているわけだが、プラスチックごみの問題が深刻化していく中でたくさんの製品を販売している我々には責任がある」(同社)とし、プラスチック製品の中でも単一素材であり、形状も一定であるため、スキームを構築することでリサイクルに適しているクリアホルダーを対象に回収と再資源化、さらにその再生原料から製品を製造してアスクルで販売するという資源循環バリューチェーンの構築を回収運搬業者や再生原料の製造事業者、プラスチック製品の製造事業者を組んで目指すことにした。

 具体的にはアスクルの取引先など現状、200社程度に賛同を募り、有料(※今年3月まではアスクルが送料を負担)で回収所に送ってもらうなどで使用済みのクリアホルダーを回収。なお、回収対象企業はアスクルの顧客事業所でなくとも対応する。回収したクリアホルダーを再資源化できるものとできないものなどに分別した後に再生原料を製造し、同原料を用いてアクリル板やエコバッグ、ボールペンなどのプラスチック製品を製造、アスクルで販売していく流れだ。

 再生素材を使用した製品化は品質の観点から簡単にはいかない側面もあり、これまでプラスチック製品の再製品化はコストに見合わず、再生して販売するよりも、回収品を海外に輸出した方が儲かるという現実があり、スキームは成り立ちにくかったが、「最終的に製品化してアスクルで販売するという“出口”を作れなければ単に慈善活動になってしまう。ビジネスとして成り立たせる必要がある」(同社)とし、いかに顧客から受け入れられる商品を作るか、また、売れるための訴求方法なども工夫し、今年中には製品化する予定。

 今後は広く使用済みクリアホルダーの回収を事業者から募っていくなどし、2022年までに年間40トン、25年までに年間80トンの回収・リサイクルを目指し、また、30年にはクリアホルダーだけでなく文具や日用品など様々なプラスチック製品でも同様の試みを進めていく考えだ。

 なお、同試みは環境省が実施する「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」の「プラスチック等のリサイクルプロセス構築・省CO2化実証事業(リサイクル事業)」に採択されている。

 このほか、海外からペットボトルなどの海洋プラスチックごみが大量の漂着する問題を抱える対馬市と組んで環境に配慮した素材を使用したオリジナルレジ袋の売上金の一部を同市に寄付する取り組みや、海洋プラスチックごみを加工した再生樹脂による商品の開発やアスクルでの販売などについても検討する取り組みも進めている。

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