楽天と日本郵便が物流事業で合弁会社 ――プラットフォームの他社への開放も

 楽天グループは4月28日、日本郵政子会社の日本郵便との合弁で、物流事業を手掛ける新会社を設立すると発表した。新会社では共同の物流拠点の構築、共同の配送システム及び受取サービスの構築、楽天フルフィルメントセンター(RFC)の利用拡大と日本郵便のゆうパック等の利用拡大に向けた取り組みを進める。

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プラットフォーム取引条件に開示義務

 取引透明化法は、経済産業大臣が指定した「特定デジタル・プラットフォーム(特定DPF)」に、利用者への取引条件開示等を義務づける。
 特定DPFは、国内売上高3000億円以上のオンラインモール、同2000億円以上のアプリストアを対象にする。国の関与や規制は最小限にとどめ、事業者の自主的な取り組みに委ねる。

 先立って楽天と日本郵政は3月12日、資本業務提携を締結すると発表していた。物流やモバイル、デジタル・トランスフォーメーション(DX)などの領域での連携を強化することを公表していた。日本郵政の増田寛也社長は「全国に展開する郵便局と強固な物流網を強みとする当社にとって、先進的なデジタル技術と豊富なノウハウを活かし、ネット関連サービスを提供している楽天は最高のパートナー。デジタルとリアルという双方の特徴・強みをかけ合わせることで、提携の効果を最大限引き出し、顧客に喜んでもらえる新たな価値を創出する」と出資の狙いを説明していた。

楽天の小森紀昭執行役員左と日本郵便の諫山親副社長

 新会社の名称は「JP楽天ロジスティクス」。社長には、日本郵便の衣川和秀社長が就く。楽天の物流センターを新会社に承継させた上で、楽天と日本郵便が出資。出資比率は楽天が49.9%、日本郵便が50.1%となる。国内の物流環境の健全化を持続可能な社会の実現に貢献するのが事業理念だ。

 同社では既存8拠点のほか、2023年までに開設を予定している福岡・八尾・多摩の3拠点を含めた11拠点を新会社に分割する。楽天の物流拠点を日本郵便の配送網に組み入れることで、シームレスで効率の良い物流ネットワークを構築する、

 22年度末までに9施設の開設を予定しており、23年度末には11拠点となる。24年度以降は新規で共同の物流施設の構築を予定しており、22年度は2億個、25年度は3~5億個の取扱荷量となる見込み。共同拠点では、楽天が構築してきた拠点同様に、省人化・自動化されたものとする。

 その上で、新たな物流DXプラットフォームの構築を目指す。まとめて1回で受け取りやすくするなど、顧客満足度の向上を図るのか、荷主向けには、出荷キャパシティー拡大や、サービスレベル向上による顧客育成、物流コストの最適化といったメリットを提供する。将来的には他のネット販売事業者や配送事業者にもプラットフォームを開放する予定。

 現在、RFCから出荷された商品は、集荷拠点となる郵便局に持ち込まれてから、全国の郵便局に発送される形だが、今後は拠点への持ち込みを省略して、直行便のトラックを出すといったことが可能になるという。そのため、物流の効率化やリードタイム短縮が見込める。また、現段階では定時運行型の固定ネットワークで物流を運用しているが、今後は差し出しデータの分析などを元にした「リアルタイムダイナミックルーティング」により、その時々で最も効率的な運送便の設定が可能になる。最終的には、全国的な物流の効率化を図る。

物流拠点の効率化を図る
ステークホルダーの満足度向上を目指す
(いずれも画像は4月 28 日に行われた記者会見の資料から)

ネット販売事業でも連携へ

 プラットフォームを介した商取引について、消費者保護を目的にした新法も近く国会への提出が予定されている。政府は3月、プラットフォームを規制する「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案」を閣議決定。危険商品の販売停止を要請できる規定を盛り込む。

 危険商品は、商品の安全性を判断する上で必要な情報に虚偽や誤認があるもの。これら重要事項を欠き、事業者の所在が特定できない場合に要請できる。商品名は、消費者庁が公表して注意を促す。

 出品事業者の情報の開示請求権も規定。消費者が一定額以上の損害賠償を行う場合、プラットフォーマーに事業者の名称や住所の開示を求めることができる。

 プラットフォームが行うべき体制整備は、努力義務。出品事業者と消費者の円滑な連絡手段の確保、消費者から苦情を受けた場合の調査の実施等を求める。

 消費者や消費者団体、業界団体等が、消費者被害のおそれのある出品者の情報を通報し、措置請求できる申出制度も創設する。行政機関とプラットフォーム関連団体、消費者団体で構成する官民協議会も組織し、悪質事業者の排除に向けた協議を行う。

流通額の半分をRSLから出荷

 競合となる仮想モールでは、ヤフーがヤマト運輸と組み、ヤフーが運営する「ヤフーショッピング」と「PayPayモール」に出店するストア向けに提供する「フルフィルメントサービス」を4月1日にリニューアルし、同サービスなどを利用するストアに対して商品配送運賃でサイズ別の全国一律配送料金の適用を開始した。

 楽天では、日本郵便との連携を強めることで物流事業の強化を図る。5月13日に開催された、楽天の第1四半期決算会見において、三木谷浩史社長は「楽天市場の流通総額が3兆円を超えてきて、今後5兆円、10兆円を目指す中で、物流は非常に大事。ゼロから自分たちで作り、70%の家庭には届けられるようになったが、最後の30%を構築するのはコストが高い。劇的に物流コストを合理化できるわけで、非常に良い座組みだった」と述べ、「数百億円単位のコストメリットが生まれるのではないか」とした。同社では、自社配送サービス「楽天エクスプレス」を終了。ラストワンマイルの配送は新会社で取り組む。

 直近において、楽天市場出店者の物流業務を請け負うサービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」の利用店舗数と出荷量は大きく拡大しており、3月末時点の利用店舗数は前年同月比72.5%増、1~3月の出荷量は前年同期比134.2%増となっている。RSL利用店舗(70%以上の商品を出荷)の2020年における平均月間流通額は、全店舗平均を24.1ポイント上回っている(前年同期比における差を比較したもの)。

 利用店舗数については「非開示」(小森執行役員)としているが、「日本郵便との連携によって、キャパシティーを拡大していく。最終的には、楽天市場全体の半分くらいの流通が、RSLから出荷される形にしたい」する。

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