京王電鉄は6月30日、アイリッジ子会社のQoil(コイル)と共同で、東京・吉祥寺のショッピングセンター「キラリナ京王吉祥寺」に複数のアパレルD2Cブランドが出店するショールーミングストア「INSELSTORE(インゼルストア)」をオープンした。
「インゼルストア」では、通常は手に取ったり試着したりできないD2Cブランドのアパレル商材やアクセサリーなどを自由に試すことができる。気に入った商品はQRコードを介して各ブランドの通販サイトで購入してもらい、自宅などで商品を受け取ることができる。
ショールーミングストアはキラリナ京王吉祥寺3階(京王井の頭線改札階)にオープン。59m2のスペースに約20の可動式ブース(棚)を設け、出店ブランドはそれぞれひとつのブース内でブランドの世界観などを表現してもらう。20程度のD2Cブランドが出店し、1カ月~3カ月ごとにブランドの入れ替えを行うという。店内にはAIセンサーカメラを設置して来店客の属性や店頭の行動データを取得するほか、店頭スタッフとのコミュニケーション内容も出店ブランドにフィードバックすることで、ECのデータと合わせてマーケティングに活用できるようにする。
コロナ禍でEC利用者が増える中、「インゼルストア」では、とくにアパレルECで課題となる“サイズや素材感が分からない”という購入ハードルを払拭。店舗はショールーミングのみ、購入はECとすることで感染防止に配慮したショートタイムショッピングを実現するとともに、“試してから買うEC”というニューノーマルな買い物体験を提案する。消費者にとっては気になっていたD2Cブランドを実際に見て触って試着もできるほか、複数ブランドが展開するストアのため、新たなブランドとの出会いにもつながる。D2Cブランドにとっては、ブースの場所代のみという低コストで出店でき、ブランド認知や新客の獲得が期待できるほか、リアルなユーザーの声も得られる。加えて、自社ECに集客できるため、継続的な顧客接点が得られる。また、ショールーミングストアのため店頭在庫も不要で、コンパクトなスペースで出店コストが抑えられるメリットがあるほか、販売員やデータ取得に必要な機器なども準備しなくていいことから店舗運営コストや人件費も削減できる。
ショッピングセンター側にとってもスペースの有効活用が図れるほか、体験型ストアの話題性による集客効果やD2Cブランドのファンの来店が期待できるのに加え、将来のテナント候補のブランド獲得にもつながるとしている。
リアル店舗の価値を再定義
当該ストアの運営は京王電鉄とコイルが共同で行う。京王電鉄は出店スペースや什器、計測機器をそろえ、コイルは出店ブランドとの窓口となる。両社と、リテールテック事業などを手がけるクレストがデータ分析を行い、ブランドへのフィードバックを行う。
その場で物を売らない体験型店舗の運営や、外部企業と共同で店舗を運営するのは京王電鉄としては初めてだが、「新しいビジネスモデルの構築に挑戦し、リアル店舗の提供価値を再定義していく」(角田匡平キラリナ京王吉祥寺副支配人)とし、今回の共同事業を基軸に消費者との新しい接点や体験を作り、新しいコミュニケーションの形を生み出していく考えだ。
また、「インゼルストア」で使用しているブースは可動式のため、「同じ空間内でさまざまな見せ方ができる。出店ブランドを定期的に入れ替え、消費者が常に新しいモノと出会える場にしたい」(コイル末廣理史営業部部長)とする。
第1弾の出店ブランドは「PMCパーマネント」や「MEAN(ミーン)、「アイザック・レイナ」「BLAW(ブラウ)」「イーズスタイル」などで、「ミーン」を手がけるPMCの丹羽俊介社長兼ファッションデザイナーは、「コロナ禍でECは伸びているが、こだわりを持って作った服に一度袖を通してから決めてもらいたいというのが本音。ショールーミングストアで商品の良さを実感してもらい、手ぶらで帰って自宅で購入するという買い方が定着すればいい。今回の取り組みでは店内の行動が把握できるも魅力」としている。
ショールーミングストアの来店者数は1日当たり2000人を想定。集客に向けては、キラリナ京王吉祥寺のウェブサイトでのバナーやニュース記事、公式LINEアカウントでのブランド告知、コンコースを結ぶ階段部分での告知などで集客をサポートする。
