消費者庁、ステマ検討会を設置――「告示」による表示規制など検討か

 消費者庁は今年9月、「ステルスマーケティングに関する検討会」を設置した。並行して行う「景品表示法検討会」において、規制の検討に専門的知見が必要との判断から個別に検討会を立ち上げた。関係者からヒアリングを行い、年内に一定の結論を得る。

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ステマ規制は海外が先行

 ステマ検討会は、景表法による規制の必要性、具体的な規制手法を検討する。会合は、月1~3回のペースで開催予定。9月16日に第1回会合を開催した。

 ステマについては、これまでも度々問題視されてきた。ただ、景表法は、表示内容、取引条件の規制に限られる。このため、景表法による規制が難しいと考えられてきた。

 一方、米国、欧州では消費者が誤認するおそれがあるものを規制するとの観点から、ステマについても内容が虚偽誇大であるかを問わず、広告の明示が必要との認識で規制されている。広告の背景にある関係性を明らかにすることを求める規制があり、罰則もある。

告示規制に消費者庁「選択肢の一つ」

 ステマの規制手法について、一般紙など一部報道では、景表法の告示に追加する形で規制を調整するとの見方が出ている。事務局はこれについて「規制の必要性を含め、具体的な検討はこれから。告示も選択肢の一つだが、何も決まっていない」(表示対策課)としている。

 ただ、ステマはアフィリエイト広告と同様に広告の実施主体が、景表法が規制対象とする「商品供給者」と異なるケースがある。アフィリエイト広告のように「広告主」「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)」「アフィリエイター」の3者で広告の作成・管理が行われる仕組みも確立しておらず、業界による自主規制や法規制が難しい。告示による規制は、一つの選択肢となる。

告示に課徴金賦課の可能性も

 景表法は、「優良誤認」(5条1号)、「有利誤認」(同2号)のほか、消費者に誤認されるおそれがある不当表示として内閣総理大臣が指定する表示行為を告示で禁止する(同3号)。告示は、国会の決議を経ず指定が可能であることが特徴。企業など利害関係者向けの公聴会の開催、消費者委員会、公正取引委員会への諮問などの手続きが必要になる。現在、原産国表示、おとり広告、無果汁の清涼飲料水など表示関係では6つ、景品関係も6つ指定されている。

並行して行う景品表示法検討会は、確約制度の導入や
繰り返し違反に対する課徴金の割り増しを軸に検 討が進む。

 ただ、現状の法規制では課徴金の対象にはなっていない。課徴金は「法人に金銭的不利益を課す処分=国民の財産権を侵害する処分」と理解され、国会において制定された条文ではなく、行政が定めた告示では正当性が裏付けられないとの考え方があるためだ。同じく課徴金制度がある独占禁止法も、告示の課徴金対象化にあたり、条文化した経緯がある。また、景表法の課徴金は、不当表示を行った期間の「売上額」を基礎として算定する。「おとり広告」など、売上額の算定が行えない違反はなじまない。ステマも同様に売上額の算定が難しい。

 一方、あきんどスシローの「おとり広告」に対する措置命令の事例などもあり、「景表法検討会」では、告示への課徴金賦課を求める意見もある。ステマを告示に指定し課徴金対象とする場合、法改正、売上額に代わる算定手法の設計など、課徴金制度全体の見直しも必要になる。

 ステマ検討会の委員は11人。景表法検討会座長の中川丈久氏(神戸大学大学院教授)のほか、片岡康子氏(新経済連盟事務局政策部)、カライスコス・アントニオ氏(京都大学大学院准教授)、菊盛真衣氏(立命館大学准教授)、壇俊光氏(弁護士)、寺田眞治氏(日本情報経済社会推進協会主席研究員)、西田公昭氏(立正大学教授)、早川雄一郎氏(立教大学准教授)、福永さつき氏(全国消費生活相談員協会)、山本京輔氏(WOMマーケティング協議会副理事長)、渡辺安虎氏(東京大学大学院教授)。

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