ヤフーなど3社が店舗とEC繋ぐ販促基盤――大手飲料・消費財メーカーが参加

 LINEとヤフー、PayPayは12月13日、店舗とネット販売を横断する販促プラットフォームを来年3月に立ち上げると発表した。参加するメーカーの対象商品を購入することでマイルが貯まり、「PayPayポイント」などの特典と交換が可能になる。アサヒ飲料などの大手飲料・消費財メーカーが参加するほか、小売り側はドラッグストア大手、ヤフーショッピングなどが参加する。

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1000億円規模目指す

 プラットフォームの名称は「LINE・Yahoo!JAPAN・PayPayマイレージ」。メーカーなどのさまざまな企業が参加可能で、ユーザーの購買データを活用した継続的かつ効果的な販促をできるのが特徴となる。

アプリのイメージ

新サービスでは、ユーザーは店舗(『PayPay』決済)やECでの購入に応じてPayPayポイントがもらえる。一方、メーカー側は購入者のデータを把握できるほか、「LINE」を活用したクーポン付与などの販促活動が可能となる。

 ヤフーの小澤隆生社長は「これまでは『誰が・何を・どこで買ったのか』をメーカーが把握できず、購入者へのマーケティング活動を継続してできなかった。しかし、オンラインなら顧客データを持っているので、継続したマーケティングができる。一度買った顧客を把握し、ライフタイムバリュー(LTV)最大化のためのマーケティング活動ができるかどうかが店舗とECの成長率の差だ」と述べ、「『PayPay』のおかげで、新プラットフォームではオフラインでの購入者のデータも預かることができる」とした。

LTV最大化へ

 参加メーカーはアサヒ飲料のほか、「大手飲料メーカーや消費財メーカーの参加が決まっている。必ずや大きなマイレージプログラムになる」(ヤフーの小澤隆生社長)。小売り企業に関しては、ウエルシア、オーケー、サンドラッグ、スギ薬局、ツルハドラッグ、さらにECではヤフーショッピングが参加する。なお、ヤフーショッピングの中でも特定店舗のみが参加する可能性もあるという。

 マイル特典としては、ポイント付与以外にも「20本購入で1本無料」「オリジナルグッズがもらえる」など、特典内容を自由に設定できるようにするほか、「新商品のサンプリング」や「購入実績に応じて、顧客ごとに価格変動(ダイナミックプライシング)」といった特典も検討している。「レストランや居酒屋などとも連携すれば、買うだけではなく『消費した』ことも分かるようになる。どんどんマイレージが広がれば消費者の生活が豊かになっていく。メーカーからすると『LTVの最大化』という課題を解決することができる。マーケティング界にムーブメントを起こす一歩目だ」(小澤社長)。

 また、3社ではメーカーや小売りが参画する「LINE・Yahoo!JAPAN・PayPay販促コンソーシアム」も設立。メーカーへのCRM機能の提供と、リアルタイムPOS連携の実現を目指す。こちらは、メーカーではアサヒ飲料、キリン、サントリー他3社が参画するほか、小売り店ではウエルシア、オーケー、コーナン商事、サンドラッグ、スギ薬局が参画を決めている。

 さらにPayPayでは、これまでPayPay加盟店向けに提供してきた販促サービス「PayPayクーポン」の新機能として「商品クーポン(仮)」を2023年5月以降に提供する。クーポンはメーカー向けの販促サービスとなり、ユーザーが「PayPay」アプリ上で事前にクーポンを取得した上で、対象店舗にて特定の商品を購入するとPayPayポイントが付与される。

 メーカーはPayPayアプリでクーポンを発行することで、その時期に注力して販売したい特定の商品をユーザーに訴求することができ、効果的な販促が可能となる。

 12月13日に開催された記者会見では、Zホールディングス代表取締役でLINE社長の出澤剛氏(写真左)、ヤフー社長の小澤隆生氏(写真中央)、PayPay社長の中山一郎氏(写真右)が登壇し、報道陣との質疑応答が行われた。
─サービス開始までの3カ月で「販促コンソーシアム」の参画企業を増やしたいとのことだが、どんなカテゴリーのメーカーや小売り店にアプローチしていくのか。参画企業の目標となる数字は。

中山「まずは普段使う商品を扱う企業を中心に広げていきたい。ただし、あらゆる消費に関するコンソーシアムを結成したいと考えている。明確な数字というよりも『全て』となる。3社であればあらゆる顧客層にリーチできるので、強みを活かしながらメーカー・小売り店のニーズに応えていきたい」

─個別にポイントプログラムを運営している企業は多いが、マイレージとの統合は考えているのか。

中山「個別プログラムを大切にしていきたいと考える企業が多いだろうが、『PayPay』との互換性も案内できるし、代替えすることも可能だ」

─売り上げ1000億円規模の達成時期は。

出澤「時期への言及は避けたいが、市場は大きいし勝者も出ていない状況なので、非常に期待している」

─「LINEポイント」との統合など、ポイント戦略への考え方は。

出澤「PayPayポイントとLINEポイントは統合の方向性で準備を進めている」

─PayPayポイントを共通ポイント化する方針だったはずだが、マイレージプログラムはこれと競合するのではないか。

小澤「マイレージプログラムは特定の商品の対してマイレージが溜まっていく形なので、ポイントがどうこうというよりも『Xという商品に5000円使った』ということが分かる仕組みだ。マイルと呼んではいるが、要は購入金額なので、例えば購入金額がメーカーの指定した1万円に達した時点でPayPayポイントが帰ってく
る。つまり、PayPayが新しいポイントプログラムを作ったということではない」

─販促コンソーシアムで企業が得られるデータとはどんなものか。

小澤「個人情報は入らない。消費者側からの情報提供への同意を取る難易度が非常に高いからだ。消費者の同意を得た上で、預かったデータをマーケティングプラットフォームとして外部から使ってもらうサービスを提供していく。例えば『5万円以上購入した消費者にクーポンを配信する』といったプログラムが実行できるようになる」─マイレージに小売り企業が参画するメリットは。小澤「メーカーやわれわれが一定程度原資を出す中で、店が顧客の受け皿になるという点を前向きに評価してもらっている」

─マイレージに参加するメーカー・小売り店にかかるコストは。

小澤「小売り店は必要ない。メーカーにはマイレージ参加の利用料を求めていく。固定プラス従量課金という仕組みになるだろう」

─マーケティングプラットフォームにはどんな機能があるのか。メーカーは分析などは可能なのか。

小澤「顧客層や属性などが分かる分析機能は備えている。当初はわれわれと一緒に設計していくが、最終的には現場の人間がクリックするだけで設計できるようなプラットフォームになるだろう」

─マイレージの名前が長すぎるように思える。

小澤「ごもっともなご意見だと思う。今日の段階ではメーカー・クライアント・小売り店に『LINEとヤフーとPayPayが3社一緒になって頑張る』というところを見せたかった。来年3月のサービス開始時にはもっと分かりやすい名前にしたい」

─「LINE」、「ヤフー」、「PayPay」のID連携について、マイレージサービスが開始する時期には実現していないが、デメリットは。またID連携の時期は。

出澤「ID連携は23年以降に開始すると公表しており、そこに変更はない。なるべく早い時期で実現したい」
小澤「ヤフーと『PayPay』のID連携はかなり進んでいる。コミュニケーションの部分については連携が進んでいないので、『あと1000円買えば特典がもらえる』といった連絡が当初は『LINE』ではできない。ただ、『PayPay』や『ヤフー』を通じたコミュニケーションはできるので、3月にサービスを開始することにした」

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