コロナ禍を経た通販利用の現状は?ーーファッション通販売上高ランキング

 本誌姉妹紙「週刊通販新聞」が行ったファッション商材の通販売上高調査では、ECモール運営企業を除いた売上高ランキングトップ10のうち、通販会社は4社、有店舗アパレルは6社で前年と同数だった。コロナ禍を経てアパレル上位企業の継続的な成長が目立っており、通販マーケットにおける有店舗アパレルの存在感は一段と高まっている。一方のECモールでは、“ゾゾ快進撃”の流れはとまる気配がない。ファッション通販市場の潮流や有力企業の動向を見ていく。

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ファッション通販の市場分析

トップ10に通販事業者は4社
ゾゾは取扱高で5000億円突破

 カタログやテレビなどの売り場を持つ総合系通販会社の前期は苦戦を強いられた企業が目立つ。通販会社としては毎年トップで、全体でも2位を死守したベルーナの23年3月期は、コロナの影響が一巡し、既存顧客のレスポンスが鈍化傾向となった。また、急激な円安進行や原材料価格の高騰、資材価格の上昇を受けて、第3四半期(10~12月)からアパレル商材の価格を見直したほか、カタログ発行量を抑制するなど収益性確保を優先した事業運営を行ったことで減収となった。

 千趣会の22年12月期は、22年1月に複雑化したシステムと業務の刷新などを目的に基幹システムのリプレイスを実施したが、新システム稼働後に注文を正しく受けられなかったり、予定通りに商品を届けられなかったりといった事象が発生したため、顧客対応を優先して1~2月の販促施策の実施を見合わせたことが響いた。

 販促の縮小で通期の購入会員数は前年比約48万人減の200万人強、新規購入会員は7万人以上減って52万人と振るわなかった。システムトラブルの影響は根深く、ユーザーの会員ステージに関係なく全体的に目減りしたという。また、トラブルが長引いたことで大手検索サイトのアルゴリズムに推奨されなくなり、今期に入っても自然検索の流入で苦戦しているようだ。

 テレビ通販については、通販専門放送大手のジュピターショップチャンネルQVCジャパンがトップ10を守った。両社とも売上高の約3割を衣料品およびジュエリーなどのファッション商材が占めていると見られる。

 ショップチャンネルは23年1月から、通販サイト上で同社の通販番組に出演するメーカー担当者や司会者などのコーディネート画像を提案するコンテンツを開始。コーデ投稿ツールを導入し、ショップチャンネルで扱う100以上のブランドの商品を使用したコーデ画像の中から、利用者は自分の体型や好みに合ったコーデを参考にでき、着用イメージやサイズ選びなどに役立てられるようにし、ファッション商材の売り上げ拡大を狙う。

 衣料品がメインの通販企業については、フェリシモは、主力の定期便においてファッションブランド「リブインコンフォート」でヒット商品が生まれたほか、テレビCMを実施したことで安定した売り上げを確保。一方、22年春先が寒冷であったため春物ファッションの受注に影響が出たほか22年3月に発生した上海市のロックダウンに伴う商品調達の遅れが響き、顧客への出荷数が減少。新規顧客の獲得数は前年を上回ったものの継続率が低下したことで、のべ顧客数が減少した。

 靴のヒラキの23年3月期は中価格帯商品の投入に加え、テレビCMやインフルエンサーを起用した新規獲得と既存顧客の受注促進を図ったが、オリジナル商品については仕入れ価格の急激な上昇に対応するため、秋冬商品の販売価格を値上げしたこともあって通販の受注減につながった。

 また、期初の春夏商品についても製造工場がある中国などのロックダウンによって、オリジナル商品の入荷が遅延。カタログに掲載した商品でも機会ロスが生じた。

モール利用者の拡大続く

 ファッション専業のECモールは消費者のデジタルシフトが定着したこともあり、ゾゾを中心に業績を伸ばしている。ゾゾやジェイドグループ(旧ロコンド)、また、数値非公開のため表にはないが、楽天の「楽天ファッション」などがテレビCMやウェブCMを強化しており、服などをECで買う層は広がっていると見られる。

 表は決算会計上の売上高(※マガシークは商品取扱高)で、商品取扱高で見るとゾゾの23年3月期は前年比8.4%増の5011億円(その他取扱高除く)と断トツだ。

 前期のゾゾは、10年以上前から商品取扱高の中長期目標として掲げてきた「5000億円」を主力のゾゾタウン本店とヤフー店、ブランドの自社EC運営受託などを行うBtoB事業の商品取扱高合計で初めて突破した。

 ゾゾは5月と9月、11月にセールイベントを実施したほか、夏と冬の本セール期間にはテレビCMを放送して集客を強化するなど販売力最大化に努めた。また、多様化するユーザーニーズに応えられる幅広いジャンルのブランド誘致を進めた結果、ブランド各社のリアル店舗が好調な中でも「ゾゾタウン」への在庫供給は増加したという。ゾゾタウン本店の年間購入者数は約1141万人、うちアクティブ会員は約1019万人となり、初めて1000万人を突破した。

 ゾゾは「買う」以外のトラフィックを増やす戦略の一環とし22年12月、東京・表参道に同社初となる常設のリアル店舗を開設した。服は販売せず、独自のAIとプロスタイリストの知見を合わせて利用者の“似合う”が見つかる超パーソナルスタイリングサービス「niaulab(似合うラボ)byZOZO」を始動。無料でサービス提供するなど、新しい挑戦も始めている。

 丸井の23年3月期は、それまで3年連続で減収だったECが再成長し、売上高205億円と健闘した。店舗と連動したイベント型ECの拡大に加え、ウェブ系の専門人材を拡充して広告、CRMを改善しSEO対策を強化したことで訪問者数、売上高ともに伸ばした。

 今後は、通販サイトのUI・UXの改善などに取り組み、中計最終年度(26年3月期)にはEC売上高300億円を目指す方針で、低迷していたECチャネルを再強化する。

 「ロコンド」を運営するジェイドグループの23年2月期は、商品取扱高(内部取引相殺後)が前年比11.4%増の236億円、売上高は同6.0%増の104億円だった。前期の取扱高は、自社運営モールの拡充とブランド自社EC支援などのプラットフォ―ム事業の堅調な成長、リーボック事業の開始が業績を押し上げた。

 同社は積極的なM&Aによって主力のECモール事業ではレディースファッションの「ファッションウォーカー」、サッカー用品の通販サイト「スポーツウェブショッパーズ」などを加えているほか、22年10月にはリーボックの国内事業をブランド事業として展開。主力の「ロコンド」の成長だけでなく、プラットフォーム事業との相乗効果や、新たな販路開拓などにもつなげる。

 集英社のファッション通販サイト「ハッピープラスストア」はこの数年、トップラインの成長よりも利益を重視し、定価販売を強化することで価格競争からの脱却を目指してきたため、EC売上高はほぼ横ばいで推移していた。

 23年5月期については、定価販売が軸のファッションECというブランディングがユーザーにも取引先ブランドにも浸透。商品の魅力を伝える多彩なコンテンツと連動してオリジナルブランドを含めた商品力、企画力が高まったことで、売り上げも大きく伸ばした。

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