アマゾンジャパン、北海道で生鮮品ECサービス開始へ――食品スーパーのアークスと協業して食品など9000点を

 アマゾンジャパンは今冬をメドに、北海道の一部地域で生鮮品などの食品などを受注から最短2時間で配送する有料会員向けのECサービスを開始する。北海道や東北などでスーパーマーケットチェーンを展開するアークスと組み、同社の実店舗で商品をピッキングし顧客宅に配送する。

 アマゾンではこれまで有料会員「プライム会員」向けに直販での生鮮品を含む食品ECサービス「Amazonフレッシュ」に加えて、ライフコーポレーションやバローホールディングス、成城石井といったスーパーマーケットチェーン各社と組んで、関東や関西、中部で生鮮品のECは行ってきたが北海道での展開は初めてとなる。今回、連携したアークスは北海道のほか、東北や北関東でもスーパーマーケットチェーンを展開しており、今後はそれら地域へもアマゾンと連携した生鮮品ECサービスを展開していく模様だ。

食品ECで連携したアマゾンとアークス(10月3日に札幌市内で開催した記者会見の様子。左からアマゾンの荒川本部長、アークスの横山社長、猫宮取締役執行役員)
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受注から最短2時間で配送

 アマゾンが今回提携したアークスは地域密着のスーパー10社を傘下に持ち、北海道、東北、北関東エリアで合計378店舗を展開するグループ合計の年商5662億円を誇る食品スーパー事業者。そのアークスと組んで北海道の札幌市および北広島市の一部エリアで開始する生鮮品を含む食品のECサービスは、すでにアマゾンと食品ECで連携して各地域で展開中のライフやバロー、成城石井と同様、アークスがアマゾンの通販サイトに出店する形で実施する。「プライム会員」がアマゾンのサイトや専用アプリ上の「アークスネットスーパー」で注文した情報をもとに札幌市および北広島市内のアークス傘下のスーパーマーケットチェーンの「ラルズ」の対応店舗で選任スタッフが当該商品をピッキングし梱包後、店舗でアマゾンの配送員がピックアップ、顧客が指定した時間帯に配送する流れ。最短では注文から2時間以内に配送するという。

スーパー店頭の商品をピッキングして、アマゾンの配送員はピックアップし顧客のもとに配送する(記者会見での資料より)
アマゾンでは直販とスーパー各社との協業で生鮮ECサービスを展開中(記者会見での資料より)

 なお、北海道内にはアークス傘下のスーパーの店舗は220店舗あるが、アマゾンと連携する対応店舗については明らかにしていない。また、配送対応時間や配送料などの詳細も明らかにしていない。「ライフやバローなど(すでにアマゾンと連携して展開中の他社の生鮮品ECサービスと)配送時間帯や配送料金などは同様にしなくてもよいと考えている。地域のニーズの踏まえながら、サービス開始までにアークスと協議していく」(アマゾンジャパンの荒川みず恵Amazonフレッシュ事業本部本部長)という。

野菜や総菜など店頭商品を販売

 取扱商品は今冬のスタート時点ではスーパーの実店舗で取り扱う商品のうち、9000品目を予定。野菜や果物、鮮魚、精肉などの生鮮品のほか、店内で作りたての総菜や酒、日用品を販売していく。価格については一部の商品を除き、店舗とほぼ同等の価格で販売していく予定としている。

 展開エリアにはまず北海道の札幌市と北広島市の一部エリアで開始後、順次、ピッキング対応店舗を増やし、北海道内のほか、実店舗を持つ青森県や岩手県などの東北地域での展開も進める模様。

アマゾンと協業を機にネットスーパー事業を強化

 EC事業の売り上げの目標についてアークスでは北海道内の札幌市を含む9市12町で展開中の自社運営のネットスーパー「アークスオンラインショップ」は実店舗の利用者、アマゾンと連携したサービスではプライム会員とターゲットが異なるため、食い合いがなく、売り上げの積み増しが見込める
としたうえで、具体的な数字については明らかにしていないものの、「(自社運営のネットスーパーの)売上高が今年(2024年2月期)で12億円程度となる見込み。自社サイトもまだまだ強化していき今後もさらに伸びていくと確信しているが、アマゾンとの連携でさらに(EC事業拡大は)強固なものになってくるだろう」(猫宮一久取締役執行役員)としている。

アマゾンの生鮮品EC、次は九州?

 アマゾンジャパンでは生鮮品ECサービスを2017年4月から「Amazonフレッシュ」を直販サービスとしてスタート。当時、対象は「プライム会員」ではなく、同会員にさらに別途月額税込500円を徴収した「Amazopnフレッシュ会員」向けサービスとして展開してきたが、そうした会費や送料などがネックとなったためか、利用数や売り上げが伸び悩んだもようで、幾度か見直しを重ね、現状では「プライム会員」向けのサービスとなっており、食品対応設備を持つ神奈川県川崎市内の物流拠点「アマゾン川崎FC」および2022年11月に東京都江東区内に新設した日本では初めてとなる「Amazonフレッシュ」専用の物流拠点「Amazonフレッシュ葛西フルフィルメントセンター」に保管する約1万5000品目の商品を同拠点から発送する形で、現状のサービス対象エリアである東京都の一部のほか、神奈川県、千葉県の一部の地域のプライム会員に午前8時から深夜12時までの間で2時間単位で指定された時間帯に配送(※追加料金500円で1時間単位指定にも対応)している。

 その後は直販よりも物流拠点の整備等のコストをかけずに効果的に展開エリアを広げることが可能となる大手スーパーマーケットと連携する形で、連携チェーンの実店舗から商品をピッキングしてアマゾンが直接、契約して配送を委託する個人事業主のドライバーである「アマゾンフレックス」の配送員が店舗で商品をピックアップし、「プライム会員」向けに生鮮品を含む食品などを対応店舗の周辺地域に最短で受注から2時間で配送する提携型ネットスーパー事業を積極化。まず2019年9月からライフコーポレーションと連携してスタート。現状は東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府・京都府・兵庫県の一部地域でサービスを展開中。また、2021年6月からバローホールディングスと連携して愛知県の一部でで、2022年3月には成城石井と連携して東京都・神奈川県・愛知県の一部でそれぞれ展開している。

 自社の「Amazonフレッシュ」と協業する4社で北海道、東北、関東、関西はある程度、カバーすることになる。アマゾンでは今後の生鮮ECサービスのビジョンなどは明らかにしていないが、「空白エリアで大都市圏を抱えるのは福岡を中心とした九州。すでに当該地域でスーパーマーケットチェーンを手広く展開する事業者と連携に向けて交渉しているのでは」(某食品小売業界筋)との見方もあり、今後のアマゾンの動きが注目されそうだ。

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