楽天、モバイルユーザーをポイントで優遇――「獲得上限」は大幅引き下げ

 楽天グループでは、仮想モール「楽天市場」における楽天ポイントの付与条件を、12月から大幅に変更する。携帯電話サービス「楽天モバイル」利用者のポイント付与率を3~4%から一律5%に引き上げる。一方、楽天モバイルや楽天カード、さらには「5と0のつく日」など、各サービスの特典として付与されるポイントの、月間上限ポイントを大幅に引き下げる。ライトユーザーはもらえるポイントが増える一方、ヘビーユーザーは付与されるポイントが減少する可能性が高いことから、楽天市場出店店舗の販促に影響を与える可能性もある。

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楽天は規制方針変わらず

  同社のポイント制度は、通常ポイントとなる1倍(税別購入額の1%)に、各サービスを利用した際の特典分が加算される仕組み。ポイントアッププログラム(SPU)において、これまで楽天モバイル利用者は+3倍(楽天市場のダイヤモンド会員)、もしくは+2倍(それ以外)だった。12月からはモバイル回線契約者は一律+4倍となる。一方で、月間の獲得上限ポイントについては、ダイヤモンド会員は7000ポイント、それ以外は6000ポイントだったものを、一律で2000ポイントに引き下げる。

 こうしたポイント上限の引き下げは、他サービスの特典でも行われる。楽天市場の商品を楽天カードで購入した場合、通常分の+1倍に加え、特典として+1倍が付与されている。これまで特典分の上限ポイントは月間5000ポイントだったが、1000ポイントに下げる。年会費有料のプレミアムカードの場合は5000ポイントが上限だが、プレミアムカード特典分として加算されていた+2倍が無くなり、通常カードと同じ付与率となる。その他、「楽天銀行+楽天カード」や「楽天証券投資信託」「楽天証券米国株式」、「楽天ブックス」など、SPU特典の獲得上限ポイントは軒並み引き下げられる格好だ。

 さらには5と0のつく日特典も変更される。これまでは毎月5と0のつく日に買い物をすると、特典として+2倍ポイントが付与されていた。12月からは+1倍に下げるとともに、月間の獲得上限ポイントが3000ポイントから1000ポイントに下がる。

 楽天では、ポイント付与条件を大幅に変更した理由について「楽天モバイル関連のポイント進呈率を高めることで、より多くのユーザーに利用してもらい、楽天モバイルを中心とした楽天グループサービスのクロスユースのベネフィットを体験してもらいと考え、変更に至った」(広報グループ)と説明。5と0のつく日のポイント付与条件引き下げも同様の理由という。

 既存ユーザーにおいても「全SPU対象ユーザーの8割以上は獲得ポイント数が増加もしくは変わらない、楽天モバイルユーザーの8割以上は獲得ポイント数が増加する試算」(同)。一方で、もらえるポイントが減少する約2割のユーザーの流通額が全体の流通額に占める割合は「回答を控える(同)」とする。

 今回の変更で、例えば楽天モバイル利用者は月間5万5000円(税率10%として計算)買い物をすると、上限の2000ポイントへ達することになる。これについては「高額の買い物をした際には上限以上に達してしまうケースもあると考えられるが、日頃の買い物においては、多くのユーザーの方にとってお得に買い物を楽しんでもらえる」(広報グループ)としている。

不均衡を是正

 今回の変更は出店店舗にはどんな影響があるのか。家電EC企業の担当者は「高い商品を買うとポイント上限に達するとなれば、(セール時に複数店舗で購入することでポイント倍率が上昇する)買い回りがしづらくなることも考えられる。楽天市場の流通額そのものに影響があるのではないか」と危惧する。一方で「ポイント制度の詳細を把握していないユーザーも多いので、そこまで影響は出ないのでは」(別のEC企業の担当者)との声も。11月9日の決算説明会で、三木谷浩史社長は「現場から上がってきてる報告では、(ユーザーも出店店舗も)ポジティブに捉えてる人が大半。ネガティブなコメントはしっかり拾いながらサービスの向上を実現し、満足してもらえるよう頑張っていきたい」と述べた。

 同社の2023年第3四半期における「決算補足資料」では、一部ユーザーにSPUのポイント還元が偏重している現状がグラフで示されている。同社では「一部ユーザーに関連する情報については回答を控える」(同)としているものの、グラフから推定すると、約7%のヘビーユーザーのポイント発行数が全体の20%強を占めているもよう。ポイント制度の変更で「不均衡」の改善を図る狙いもあるようだ。

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