オイシックス・ラ・大地、球団経営に参加――男性層にブランド認知図る

 オイシックス・ラ・大地は、プロ野球ファーム・リーグ(2軍戦)の新規参加内定球団のメインスポンサーになる。10月、新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ、球団の筆頭株主であるNSGホールディングスの3社合意のもとで資本提携契約を締結した。強みの「食」で球団運営を支援するとともに、男性層へのブランド認知を図る。

球団運営参加の記者会見のようす(左から新潟アルビレックス BC 監督の橋上秀樹氏、オイシックス・ラ・ 大地の高島宏平社長、新潟アルビレックス BC 社長の池田拓史
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新潟アルビレックスBCの会長に就任

新潟アルビレックスBCは、チームネーミングライツ方式による球団運営を導入。新球団名は、「オイシックス新潟アルビレックスBC」になる。契約期間は5年間。資本提携により、球団運営にも関わる。今年12月末に、NSG、オイシックスの2社が新潟アルビレックスBCの株式の過半数以上を取得する予定。オイシックスは年内に少なくとも20%前後の比率で株式を取得する。出資額は、非開示。代表取締役会長にオイシックスの高島宏平社長が就任し、共同経営体制を敷く。

26年に日本代表選手の選出を目指す

 オイシックスは球団運営を通じ、男性層の認知を高める。本業はサブスクリプション型の食品EC。51万世帯に有機野菜など食品を提供する。サービス利用では、「意思決定で男性が果たす役割も大きい」(高島社長)。認知を通じて市場の拡大を図る。

 球団経営では、アマチュアスポーツのチーム運営で培ってきた経験を活かす。18年から務める日本車いすラグビー連盟理事長としては、当初100人ほどだった観客を2万人の来場を見込めるスポーツにまで育成した。本業の強みを活かし、食の提供による選手の身体づくり、観戦客への食の提供など「日本一おいしい球団」を目指す。また、「26年までに日本代表選手の誕生」を新たな目標に掲げる。

 共同経営の相手先であるNSGとも創業時から関係が深い。新潟も食材の仕入れだけでなく、学生時代の知人がいる縁で、毎年、同地で行われる芸術祭とコラボレーションするなど関わりが深い。

 ネーミングライツ取得について、高島社長は「アルビレックスの名前もいい。海外にはあるが、チーム名で複数スポーツを展開するのは日本でここだけ。スポーツエンタテインメントのあり方としてポテンシャルを感じる。各ファンがいて、会場が近いのでハシゴもできる。そうした盛り上げた方ができるのも唯一。他の都市ではできない。アルビレックスファミリーの一員として連携し、新潟モデルが作れたら」と話す。

「日本一おいしい球団」を目指す
オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長に聞く  球団運営への参加と男性層認知の狙いオイシックス・ラ・大地は、有機野菜や安心・安全に配慮した食材のサブスクリプションサービスを提供する。顧客基盤は、女性層。なぜ、球団経営に乗り出すのか。高島宏平社長(=写真)に、球団運営参加の狙いを聞いた(10月26日開催の記者会見での発言や本誌記者を含む報道陣との一問一答から抜粋)

Q:提携の経緯は。A:(球団筆頭株主である)NSGグループの池田弘会長は、オイシックス創業時のエンジェルだった。多く人が野菜をネットで売るのは無理と評価されていた時代に出資いただいた恩人のような方。今も日本ベンチャー大賞の審査員として顔を合わせる。以前から野球の話題で会話しており、実際の協議は数カ月だが、構想からすると5年は超える。Q:本業との相乗効果として期待することは。A:プロ野球は日本のプロスポーツの中で圧倒的な人気がある。ネーミングライツで企業名をつけることができる効果は絶大だ。オイシックスの知名度には偏りがある。お母さんは知っているがお父さんは知らない。知ってもらうことで家庭の話題に上がることを期待している。ファーム・リーグならではの面白いアプローチも工夫していきたい。Q:球場での食提供のイメージは。A:まだ構想段階だが、来場者にサンプルを配るという選択肢もある。例えば、〝勝ち飯〟のような名物ができて、それをオイシックスで売りたい。家でも食べれるとなれば面白い。Q:男性の認知を図る狙いは。A:家庭で時々奥さんから相談されないですか。全くの独裁政権?Q:確かに相談される。A:その時に「なにそれ」となるのと「知っているよ、野球やっているところ」となるのは全然違うと思う。サブスクリプションは暮らしの選択だ。ネットフリックスに加入するかしないか、ある暮らしかない暮らしか、家族で意思決定しているケースが多い。購入は女性が多いが、意思決定にお父さんの果たす役割は強い。それから急速に男性客が増えていることもある。購入名義は女性だが、作る人が男性というのはコロナ禍を経て急速に増えている。男性の方もすごくマーケットチャンスがあるなと思っている。Q:スポーツチーム運営の肝は。A:まだ経験値は浅いが、やはりスポーツとビジネスの間には距離があり、そのギャップを埋めることが重要になる。バイリンガル的な人材が必要だ。スポーツとビジネスの相乗効果はあり、強かったり、活躍する選手がいればビジネスとしてもスポンサーがつき、グッズが売れるなどよい相関関係が生まれる。一方でそれができないと組織の中で対立的な構造ができやすく相互理解が低い場合が多い。相互理解して、リスペクトし合い、アイデア出し合いよい循環をつくることが重要だ。Q:野球界どう貢献してきたい。A:球界全体にコメントする立場にないが、オイシックスは創業当時、誰も知ることのない存在だった。少しずつ大きくなり愛していただける会社になった。その意味でチャレンジャーの立場で参加させていただくのは得意だし我々らしい。食の会社なので、食とスポーツの関係は関心がある。選手の成長、勝負のための集中力は多くの人が食と関係がありそうだと思っている。ただ、具体的な関係は分からない。車いすラグビーも海外試合の際に日本の食を用意した時のほうが成績がよい気がする。そのあたりを明確にしていくことが自分達らしいスポーツ界との関わりと思う。Q:球団経営にどう関わる。A:まず食の領域で部分的にできることもある。事業拡大の面でも車いすラグビーでは、代表就任以前から3倍ほどの規模になった。スポンサー収入もそうだし、ふるさと納税の活用、グッズなどやれることはなんでもやる。Q:以前から球団運営に関心があったのか。A:周辺企業でもJリーグなどに参入している知人が多い。例えば鹿島アントラーズは実はメルカリがスポンサー、というのはよく知っている人でないと知らない。その意味で分かりやすさはプロ野球は圧倒的だと感じる。アルビレックスという名前もとてもよいと思っている。海外では多いが、日本国内でチーム名で複数のスポーツを展開しているのはここしかない。初めての事例でスポーツエンタテインメントのあり方としてポテンシャルを感じている。アルビレックスファミリーというか新潟全体をスポーツエンタとして盛り上げていくオポチュニティを非常に強く感じている。Q:他のチームとも連携していく。A:一つのチーム名でさまざまなファンがいて、会場が近いのでハシゴもできる。そうした盛り上げ方ができるのは唯一だ。一員としてうまく連携は図りたい。新潟の皆さんも他の都市から羨ましがられている、そのすごさを分かっているのかなと。他の都市がしたくてもできない。新潟モデルが作れたら面白い。Q:二軍戦でも十分ブランド認知効果はある。A:やりようだと思う。車いすラグビーでは観客は当初、多くても100ほど人だったものが2万人集まるようになった。色んな方を巻き込みながら熱量を生み出していきたい。Q:ファームならではの面白さは。A:もちろん勝負にもこだわるが、勝敗より育成に注力できるのは、当社のような初心者にできることが多い。Q:通販企業でも業界が成熟する中でスポーツに目を向ける経営者が増えている。A:コンテンツとしてネット系と相性がいいことはあると思う。これまでのスポーツは地上波に乗らない限りマイナーだった。ネットを使えば試合、あるいはベンチを含めさまざまなコンテンツを提供できる宝庫のようにスポーツエンタテインメントが見えていた。知名度ということもあるが、自分達の本業のコンテンツにしていきたい思いで参入されている人も多いのではないか。
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