- 物流2024年問題が直撃
- 王者「アマゾン」に行政のメス
- 「ステマ規制」で処分相次ぐ
- 進む生成AI活用
- LINEヤフーの不祥事に行政指導連発
- 中国発EC、日本でも存在感増す
- 楽天市場の出店料が約3割値上げ
- ふるさと納税への「ポイント付与」禁止へ
- メルカリがBtoCに本腰
- 円安、物価高などが市場に悪影響
トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が制限されたことを受けて持ち上がった「物流2024年問題」。EC実施各社にも少なからぬ影響を与えたようだ。また、日本のEC市場におけるトッププレイヤーであるアマゾンに対して、行政処分が相次いだ年でもあった。特に「マケプレ」に出店する事業者に値引きを強要していたとされる事案に行政のメスが入ったことで、今後の市場に大きな影響を与えそうだ。2024年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※ニュースおよび順位は本誌編集部が独断と偏見で選びました)
1位 物流の2024年問題がEC業界を直撃
4月からのトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が制限された。これにより各配送会社における輸送力が低下するというこの問題は近年、輸送事業各社はもちろん、荷主である通販・EC各社でも来るべき時に備えて懸念の声や対応策が議論されていたが、ついに現実のものとなった。
本紙姉妹紙「通販新聞」が2024年夏に主要な通販・EC実施各社を対象としたアンケート調査でも配送事業者各社が打ち出した配送費の値上げに対して、応じざるを得ず、物流コストが増加したり、物流業務を担う人件費が増大したりなど24年問題の影響を受けた事業者が大半で、配送委託先の見直しや物流倉庫内での業務の効率化・DX化の推進、通販カタログの休止や部数削減、商品同梱での配布に切り替えるなどコスト削減に苦慮する事業者も少なくなかった。
また、24年冬に通販各社を対象に聞いた「2024年の通販業界の10大ニュース」でも最も回答が多かったのが「物流の2024年問題」で、「物流問題は利益に直結し、対応の差で業界内でのポジションが変わる可能性もある」、「通販のラストワンマイルは配送会社に委託している企業が多く、今後も運賃値上げや配送サービスの変化はあると想定され、通販企業の業績やサービスレベルに大きく影響する。宅配企業の業績状況による値上げや、新たな技術をもとにしたサービス、環境配慮の側面など、今後も大きな変化はあると推測しつつ、通販の戦略や業績を見立てていかなければならない」、「通販実施企業にとって配送品質は最初の顧客接点でもあるため非常に大事だが、スピード配送が難しくなる時代に備えてEC購入の店舗受け取りなどを強化し、ユーザー自ら商品を取りに来ることに慣れてもらう必要も出てくる」といった声が事業者から寄せられた。
物流・配送を巡る問題は労働者人口が減少していく今後はさらに深刻化していく。EC各社は効率化の工夫や自動化、省人化はもちろん、すでに一部の事業者らが実施している配送日を遅めに設定したり、置き配を選んだ人、再配達なく1度で荷物を受け取った人などにインセンティブとしてポイントを付与する取り組みなど消費者の行動変容を促進するような施策などの取り組みも求められそうだ。
寸評:置き配を選んだ場合にポイントを付与するような消費者の行動変容を促す取り組みをEC各社は積極化すべきか
2位 ECの王者「アマゾン」に行政のメス
日本のEC事業で流通総額では圧倒的な首位を独走するアマゾンジャパンに行政処分が下った。経済産業省が8月2日にアマゾンの通販サイトで商品を販売する出品事業者らに対して販売手数料の変更に関する通知などが不十分だったなどとして事前に開示するように勧告。大手IT企業に取引企業との契約条件の開示などを義務付ける「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」に基づく行政指導の一つである勧告を実施するのは2021年の同法施行以来初めて。
アマゾンの通販サイトでは出品者が販売する商品のタイプとして「商品カテゴリー」を選ぶが、販売手数料率を決める「手数料カテゴリー」はアマゾン側で分類するため、出品者の想定より高い手数料率が課される可能性があった。また、手数料カテゴリーの分類を変える際、出品者への事前通知や理由の説明がない場合もあったという。そのため、同法の第5条第1項(提供条件の開示の方法等)、第4項第2号(提供条件の変更の事前開示)を遵守していないと判断して経産省はアマゾンに事業者に手数料に関する提供条件の内容を明確かつ平易な表現で開示することや手数料カテゴリーを変更する場合には事前に内容や理由を開示するよう勧告した。
また、公正取引委員会が11月26日に独占禁止法違反の疑いで同社に立ち入り検査を実施した。アマゾンは、「マーケットプレイス」に出品する事業者に対し、カートに商品を表示するため他社の通販サイトより「競争力のある価格」になるよう値引きを要求したり、出品者向けの物流代行サービスを利用する事業者をカートの表示で、有利に扱っていた疑いが持たれている。要求に応じない場合、カート表示から外すことを伝えることもあったという。
「日本で事業を開始して以来、継続的な投資とイノベーションを通して、お客様の生活や販売事業者のビジネス、配送パートナー、従業員、地域社会に貢献できるよう務めてきた」とする同社。行政が指摘するように大切にしているはずの出品者への不当な圧力はあったのか。また、行政のメスが入らなければそのままだったのか。公取委が立ち入り検査に入ったことについて、12月のふるさと納税サービス開始に伴う記者発表会に登壇したジャスパー・チャン社長は「調査には全面的に協力していく」とコメントするのみだった。
寸評:公取委はウェブアンケートを行うなど広く出品者から情報収集を進める方針。全容解明が期待される。
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