仮想モールの「Qoo10」を運営するイーベイジャパンでは、ファッションブランドの公式ショップを集めた仮想モールとして運営する「MOVE(ムーブ)」において、韓国アパレルブランドの取扱高が右肩上がりで拡大している。20代の女性を中心に支持を集めており、日本ファッションブランドの出店者にとっても集客面で相乗効果が見られているようだ。
現在、ムーブでは約900弱のアパレルブランドの出店があり、その内、韓国ブランドは550ほどある。月次では10~20店ほどのペースで韓国ブランドが出店しており、取扱高も年々拡大が続く。毎日、数十点の新商品が更新されるペースとなり、売れているアイテム数もそれに比例して増加しているという。
成長の要因となっているのが、K―POPや韓国ドラマといったエンタメ文化が日本で広く浸透していることが一つある。アイドルや俳優が着用する韓国のトレンドファッションをファンがSNS上で追いかけた結果、それらの商品を多く販売しているムーブに辿り着く。加えて、日本のリアルの売り場に公式店舗を出店していない韓国ブランドも多いことから、必然的にネット上の販売チャネルに顧客が集まる傾向があるようだ。
また、特徴として、韓国の場合は日本よりも比較的高身長の女性が多く、160cm以上でスタイルが良く見えるサイズの商品が充実していることがある。さらに商品自体の特徴としても、他国のブランドが安定や品質面を重視する一方、ムーブに出店している韓国ブランドでは色遣いやデザインのディティールに独自性を持たせて、訴求している面があるというのだ。
ムーブでの商品の見せ方についても、他国のブランドはサムネイルで背景を白にして全身を見せる画像が多いが、韓国ブランドでは自宅や外出先などを舞台に、日常使いをモチーフにした見せ方を採用する特徴がある。さらに、価格に関しても、ムーブの場合は韓国現地からの発送による直販のため、卸を経由する他の日本サイトと比べると価格メリットが大きくなるようだ。
限定企画などで定着化図る
韓国ブランドはエンタメを入り口として火が付いた背景もあるが、その熱を持続させるための仕掛けも欠かせない。特に動画での訴求を強みとするムーブでは、イーベイジャパンが専用スタジオによるライブ販売企画を行っており、それ以外にも、同スタジオで出店ブランドがページ内で使用する動画素材の制作もサポートしている。
動画がテーマの売り場であるため、購入した顧客からのレビューも動画で投稿されることが多くなる。そのため、ページ全体が動きを持ったコンテンツで満たされることになり、「着用感や素材感など静止画では伝えきれないところを少なからず動画で伝えていき、疑似体験を提供できている面がある」(Lifestyle室の丸山恵未部長)と語る。
そのほか、ファンへの特典として、一例では韓国アイドルも着用する人気ブランドの「VARZAR(バザール)」の帽子において、ムーブとのコラボ限定デザインを発売するなどの演出で定着化につなげているようだ。
なお、ムーブでは日本の公式ブランドの出店拡大も進んでいるという。韓国ブランドが多数出店するモールであるため、日本ブランドが単独ではなかなか集客できないような10代~20代の顧客層にアプローチできる絶好の機会となっている。実際に、トレンドのファッションに対しての投資意欲が高い顧客が集まっていることから、若年層の取り込みに悩んでいた日本ブランドにとっては、新規開拓の場として有望視されているようだ。
イベント回帰で関連需要に期待
この1~2年間はコロナが落ち着いたこともあり、リアルも含めてK―POP関連の大規模なイベントも再び開催される傾向にある。それに伴って韓国アイドルが着用するようなファッションの露出が増え、消費者の目に留まる機会も増えていくことから、関連需要はさらに拡大することが予想されている。「個々の認知も広がり、日本進出を目指すブランドも多いと聞くため、活性化していくことは間違いない。韓国への旅行需要も回復していることから期待している」(丸山部長)と説明。
今後は、Qoo10の主力ジャンルでもある韓国コスメとも連動したイベントも検討するほか、物流設備なども整備していき、配送面でのテコ入れを図ることも視野に入れる。「日本国内の消費動向は鈍化しているものの、日本の消費者は〝推し活〟には投資を惜しまない。グッズ購入へのお金の使い方は旺盛だと思う」(同)とし、今後も市場拡大を見込んでいる。