日本郵便、処分後も「ゆうパック」値上げは行わず――ヤマトや佐川らと運送委託交渉

 日本郵便は6月17日、郵便局における不適切点呼を巡る一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分について、行政処分を受け入れることを国土交通省に報告した。行政処分後に使用ができなくなるトラック約2500台の運送業務の一部については佐川急便をはじめとした外部の物流事業者へ委託していく考え。委託に伴う配送コストの増加などが見込まれるが、現時点では「ゆうパック」の値上げは行わないとしている。

 日本郵便が郵便局において配達員の点呼業務を実施しないまま配達業務などを行った事案を受けて、国土交通省は6月5日までに、一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す方針を固め、処分案を通知。日本郵便では同17日に同処分案について正式に受け入れることを表明した。

 同日に都内で開催した記者会見では千田哲也社長が「郵便・ゆうパックなどのご利用のお客様をはじめ、関係する皆様に多大なるご心配、ご不安をおかけてしておりますこと心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

会見で謝罪する日本郵便の千田社長

 今回、処分対象となるトラック2500台は、地域の集配局から小規模集配局への運送、大口顧客への集荷などを担当。行政処分後はこれらの担当業務について、全体の42%をラストワンマイルの配送などを担っている自社の軽トラックなどによる代替を進め、24%についてはグループの日本郵便輸送へ委託(グループ外への再委託も含む)。残りの34%は他の運送会社に委託する考えで、佐川急便、セイノー、トナミ運輸のほか、地域の運送会社などとも交渉を進めており、加えて、現在、係争中でもあるヤマト運輸にも打診しているという。

 外部への委託比率が拡大することで、コスト増や配達オペレーションの停滞なども予想されるが、「ゆうパックの値上げは今の時点では一切考えていない。集荷や配送についても代替措置の中で影響が絶対に起きないとは言い切れず、なんらかのミスコミュニケーションが出たりする可能性もゼロではないと思うが、そうしたところを除けば影響が出ないことを実現したい」(千田社長)と説明した。手紙などの郵便料金に関してもただちに料金転嫁するような状況ではないと見ており「コスト増は全部料金(値上げ)で解消しなければいけないわけではなく、コスト減や収益増で経営をやっていく」(千田社長)とした。

 また、今回の処分の対象外である軽トラックに関しても点呼不備の疑いがあり監査の対象となっているが、仮にこれらの車両も処分された場合については、代替運送の業務を地域間で使える車両を融通しながらなるべく委託を増やさなくても回せるような対応を検討していく。

 そのほか、処分対象のトラック2500台については今後5年間の使用ができないことから、売却を含めた処分となる予定。それらに従事していたドライバーについては軽トラック・バイクでの配達や周辺業務などに配置転換していく。

 なお、本件に伴い、社長以下執行役員の3カ月間の月額報酬の減額を行うことや、安全統括管理者である浅見加奈子常務が退任することなども明らにした。

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物量が増える中元シーズンを前に配送遅延なども予想

 なお、今回の事業許可取り消しで、通販も含めた国内の物流への影響が懸念されており、通販企業の中には「集荷依頼の企業は影響が避けられない」とする声もある。また、日本郵便が配送を外部企業などに委託を進めていくことについて、委託先の対応能力によっては「物流ひっ迫の加速が懸念される」、「運送のコストが高まる懸念がある」、「適切な管理下で代替車両の確保は困難だろう。とくに物量が増える中元シーズンと重なるため、深刻な配送遅延の可能性もある」との見方がある。業務体制の再編成、教育など、現状のサービス品質を維持できるかは難しいと言えそうだ。

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