米価高騰と供給不安を受けて、農林水産省では、随意契約による政府備蓄米売り渡しを進めている。5月26日には随意契約での売り渡しについて詳細を公表。これを受けて、楽天グループやアスクルなど、EC関連企業が随意契約を申請、受理され、通販サイトで販売している。
楽天24やロハコで販売
楽天は5月29日、同社直販サイトにおいて、政府備蓄米の販売を開始した。6月7日より順次発送している。政府から購入した1万トンの備蓄米を精米し、「楽天生活応援米」として商品化した。運営する仮想モール「楽天市場」において、同社が直営店舗として運営する「楽天24」と「Rakutenグルメ館」、さらには子会社の楽天マートが運営するネットスーパー「楽天マート」で販売している。
価格は5kgで2138円。楽天市場の2店は送料込み価格、楽天マートでは、他の商品とあわせて3500円以上の買い物をすると送料無料となる。1人1店につき、1日あたり1回の注文に制限。1回で購入でき個数は、楽天市場の2店は2個まで、楽天マートは1個まで。なお、初回分は予約開始直後に売り切れている。
アスクルは5月29日から、同社通販サイトで政府備蓄米の予約販売を開始した。6月中旬をめどに順次発送する。同日の初回予約分は予約開始直後に売り切れ、販売ページは「現在、在庫切れ」として予約を受け付けていないが、今後、備蓄米の在庫が整い次第、順次販売を再開するとしている。
政府から購入した備蓄米1万トンを精米し、1袋5kgで、グループのLINEヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」内に出店する「LOHACObyASKUL」において税込1998円で初回分として1万袋限定で予約販売。送料は徴収しない。1回あたり4袋までと購入可能数を制限した。なお、予約したユーザーには「ヤフーショッピング」の米カテゴリで使用可能な割引クーポンを付与する予定。
政府備蓄米の売り渡しの随意契約は親会社のLINEヤフーが5月27日に申請。実販売はグループのアスクルが担う。備蓄米は「LOHACO」のほか、グループのPayPayの決済サービスアプリPayPay」内の各アイコンをタップすることで利用者が同アプリ画面上でグループ会社や提携会社が提供するネット販売などのサービスを利用できるミニアプリの1つとなる「ヤフーショッピング」経由でも販売する。また、LINEのアプリからも備蓄米の購入ページに誘導する取り組みなども行う予定。
アマゾンジャパンは6月13日から、同社通販サイトで政府備蓄米をプライベートブランドとして販売開始。同日の午前10時に初回分の販売を開始したが午前中で売り切れた。
フリマでは転売禁止
備蓄米に関連してLINEヤフーは5月28日、転売による価格高騰や供給不足を防ぐ狙いから、運営するネット競売サービス「ヤフーオークション」およびフリマアプリ「ヤフーフリマ」で政府備蓄米の出品を禁止した。また、同29日には運営するポータルサイトで政府備蓄米のおいしい食べ方や関連ニュースをまとめた特設ページ「備蓄米おいしく食べる方法まとめ」の掲載をスタートさせている。
同様に、メルカリも5月30日、フリマサービス「メルカリ」と「メルカリShops」におけ府備蓄米の出品禁止対応を取ると発表(随意契約対象の小売り事業者は除く)。備蓄米の出品を削除するほか、備蓄米を出品したアカウントの制限、AIなどを活用した備蓄米出品の監視を行う。
ECを手掛ける大手企業では、アイリスオーヤマも随意契約を結んだ。5月31日より、通販サイト「アイリスプラザ」とアイリスグループのダイユニカンパニーの一部店舗で販売を開始した。
同社は5月27日に1万トン分の契約を締結。アイリスグループは、玄米の調達から精米・流通・販売までを一貫して自社で担える体制を構築しており、この強みを活かし迅速に販売体制を整えたという。
また、JR東日本も備蓄米の随意契約に参画し、6月中をめどに仮想モールの「JREMALL」や駅構内での販売会イベントなどを通じて販売を行う。合わせて、独自の物流網を活用した米の流通サービスも小売り事業者向けに提供していく。
「争奪戦」続く?
備蓄米売り渡しの随意契約を結んだのは59社で、2021年産・22年合計で約21万トン。小泉進次郎農水相は6月11日、随意契約の備蓄米に関して、20万トンを追加で放出する意向を示した。楽天・アスクル・アイリスプラザともに、10日現在では備蓄米の予約分は完売となっており、ECにおける備蓄米争奪戦はしばらく続きそうだ。