楽天、AIエージェントを提供――まずは通話アプリ、今秋には楽天市場にも

 楽天グループと子会社の楽天モバイルは7月30日、エージェント型AIツール「RakutenAI」の本格提供を開始した。楽天モバイル向けの無料通話アプリ「RakutenLink」に搭載している。「楽天市場」や「楽天トラベル」など、同社が提供するサービス内で、自分が欲しい商品などに関して、テキストや音声、画像を使った横断的な検索を可能にした。今秋には楽天市場にも導入する予定。のに、国会での議論や法改正もせずに告示で禁止したのはおかしい」などと提訴の理由を述べた。

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経済圏を横断検索

 同日開催されたビジネスイベント「楽天AIオプティミズム」の基調講演において、三木谷浩史社長が発表した。

 RakutenLinkでは2024年10月より、チャット形式のAIサービスを利用することができたが、同日よりAIチャットと自動で提案されるプロンプトを活用した「楽天エコシステム(経済圏)」内の横断的な検索が用可能となった。ユーザーはテキスト入力、音声テキスト変換、または画像検索により問い合わせができ、さらにAIが生成する追加質問に対して複数のプロンプトから回答を選択することで、よりスムーズに求めている情報へアクセスできる。

三木谷浩史社長

 今秋導入予定の楽天市場においては、統合された専門家エージェントを活用し、同社が提供するECサービスの利用状況から得られるユーザー属性や好み、購買傾向といった多様なデータを分析することで、一人ひとりに最適化された商品を提案していく。

AIは「スーパー秘書」

 基調講演で三木谷社長は「単純にショッピングのレコメンデーションをするだけではなく、金融・旅行・教育・エンタメといった、楽天エコシステムが提供している、さまざまなサービスのエージェントとして機能していく」と、同社のAIエージェントについて説明。

 講演ではデモも実施した。同氏は愛好しているという万年筆を購入するにあたり、エージェントを活用。愛用の万年筆画像をアップロードすると、エージェントは「伝統的な日本の蒔絵技法を用いている」などと分析した上で、楽天市場における似たような万年筆の商品リンクを提示。さらには音声で「予算2万円で」などと指定すると、条件に合った商品を紹介した。「ショッピングだけではなく、『明日ゴルフがやりたいんだけど、1時間以内で行けるゴルフ場の予約枠はありますか』と聞いてそのまま予約をしたり、さらには帰りの新幹線や飛行機も予約したりできる。今までは検索をして、クレジットカード番号を入力してから予約をして、ということをやっていたわけだが、それもエージェントがやってくれる」。

「Rakuten AI」ブースの様子

 さらに三木谷社長は「エージェントというコンセプトが、今までのインターネットの使い方の概念を根本的に変えるだけではなく、デジタルの世界に『スーパー秘書』が登場し、どんどんどんどん賢くなっていく。賢くなるだけではなく、皆さんのことを良く理解している」と熱弁。例えば検索についても、これまでは言葉に紐づいた結果を示していたが、今後はユーザー個々の購入履歴やプロファイルに基づいた結果を表示する。さらには、常用しているサプリメントが切れそうな時期には、「スーパー秘書」が「そろそろ買っておきましょうか」と問いかけてくれる。

 AIエージェントの開発競争が激化する中、同社の強みについて三木谷社長は「圧倒的なデータ量と、国際的な組織を持っていることによる開発力」とした上で、「これにポイント経済圏を付け加えることで、われわれのエージェントを使ってもらえるようになっていく」と自信を示した。

 また、基調講演に来場した楽天市場の出店店舗に向けて、「皆さんのライブな感覚が重要になってくる。最終的には『人』。あくまでもAIはツールであり、人間的なサービスも大事。そこが楽天市場の強さだ」とアピール。さらに、「『全部ロボットが作り、サービスもロボットが手掛けている』というバッグと、『職人が作った』バッグのブランド力は異なる。最終的には人と人のつながりが重要で、それをより効率的にしていくのがAI。皆さん一人ひとりのサービスや商品に対するこだわりが集合になり、それにAIをかけ合わせると、世界でも類を見ない『人間味がある、最強のAI』が完成する」と呼びかけた。

体験イベントをAIに特化

 同社では7月30日から8月1日にかけて、横浜市の「パシフィコ横浜」で楽天AIオプティミズムを開催。3日間で2万3000人が来場した。

 同社は2019年より毎年、体験イベント「楽天オプティミズム」を開催している。今年は「EmpoweringtheFuture」をコンセプトに掲げ、AIに焦点を当てたビジネスイベントへと発展させた。イベントでは、国内外の業界リーダーが様々なテーマで講演を行う「ビジネスカンファレンス」や、楽天グループやパートナー企業による最先端技術を展示する「エキシビジョン」を実施した。

楽天市場ブースでは「家具の AR」デモなども展示された

 「エキシビジョン」では、AIアバターによる接客が体験できる「AI×DXで拓く法人・コンシューマ体験」ブースや、会話からおすすめホテルを提案する「AIコンシェルジュ」機能が体験できる「楽天トラベル」ブースなど、様々なブースを設けた。

AIの可能性探るデモも

AI チャット開始時には3つの想定質問が表示されて いる

 「楽天市場」ブースでは、RakutenAIを用いたデモ展示などを行った。デモ展示では、AIチャットを用いた商品提案や、画像検索機能を紹介した。AIチャットでは、ユーザーがテキストや音声で質問を入力すると、悩みや要望に応じた商品を提案してくれる。たとえば、「乾燥肌に効く洗顔料が欲しい」と入力すると、楽天市場の商品群の中から適した洗顔料がいくつかレコメンドされる。

 AIチャットは、開始時に3つの想定質問が表示されているため、普段AIを使い慣れていない人も容易に質問を始めることができるという。「セール対象商品は」「2000円以下の洗顔料は」などと追加質問を送ると、さらに商品を絞り込むことができる。

 画像検索機能では、任意の画像を送信すると、画像に似た商品をいくつか提案してくれる。リンクをタップすると商品ページに遷移するため、ユーザーはそのまま楽天市場で商品を購入することが可能だ。

 また、「RakutenAI」ブースでは、生活シーンや業務におけるAI活用の可能性を探るデモ展示などを実施。「展示を通して、お客様に少し先の未来を体験してほしい」(同社)とし、特別に機能をカスタマイズしたツールを紹介した。

 「LifewithAI」コーナーでは、AIエージェントによるパーソナライズ提案を提供。ユーザーの顔写真から雰囲気を判断して、似合う商品をレコメンドする「お買い物コンシェルジュ」機能や、ユーザーの魅力を引き出すコーディネートを提案する「ファッションスタイリスト」機能などを紹介した。

 「BizwithAI」コーナーでは、AIによる業務サポートの体験を提供。ユーザーは好きな会社・職種・タスクを選び、架空のロールになりきって問題解決を行う。「配信者・視聴者の双方が気持ちよく使えるライブ配信アプリUIの提案」などとタスクを設定すると、自動で最適なLLM(大規模言語モデル)を選定し、解決案を提案してくれる仕組みだ。

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