欧州委員会、Temuに制裁金――違法製品の流通リスクを過小評価

 欧州委員会は今年5月、デジタルサービス法(DSA)に基づき、中国発のECモール「Temu(テム)」に2億ユーロ(日本円で約371億円)の制裁金を科した。乳幼児が窒息する恐れのある玩具や欠陥のある充電器など違法商品の販売を容認していたという。DSAが求める適切なリスク評価を怠っていたと判断した。

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国内規制当局は静観

 欧州委員会の措置に、日本の行政機関はいずれも静観の構えをみせる。Temuは今年1月、消費者庁消費者安全課が主導する「製品安全誓約」に署名したばかりだが、「あくまでEUにおける判断。同社への確認など特段のアクションは考えていない」とする。同庁で、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法を所管する取引対策課も「広告・表示の監視を対象にするが引き続き注視する」(取引対策課取引デジタルプラットフォーム消費者保護室)としている。

Temu は 23 年の EU 市場参入以後、ユーザー獲得が好調に進んでいる

 経済産業省は、プラットフォーマーとの共同規制を敷くデジタルプラットフォーム取引透明化法を所管する。これには、「同法は競争法で消費者保護を対象にしていない」(商務情報政策局情報経済課)としている。製品安全分野の規制では、ほかに消費生活用品安全法(経産省所管)、有害物質規制法(厚労省所管)もある。

充電器や乳幼児用玩具で違法商品

 欧州委員会は、消費者が違法な商品に遭遇する可能性のある頻度を著しく過小評価したと指摘している。欧州委員会が外部の調査機関に委託して行ったミステリーショッピング(覆面調査)によると、販売されている充電器は、基本的な安全性テストに合格していない製品の割合が高かったという。乳幼児向け玩具も法的な安全基準を超える化学物質を含んでいたり、取り外し可能な部品の一部に窒息の危険性があるものが存在する商品の割合が高かったという。また、レコメンドや提携インフルエンサーによる製品プロモーションを含むサービス設計について、違法商品の拡散リスクがどのように高まるかを適切に評価していなかった。調査結果から、Temuのユーザーが違法商品に遭遇する可能性が高いことを示していると判断した。

DSAのリスク評価義務違反問われる

 DSAは、プラットフォーム運営者に安全性向上に向けた責任を求めている。消費者に損害を与えるシステム全体のリスクの分析・評価、リスク軽減の措置を行うことを定めている。

 制裁金は、違反の性質、影響の重大性、違反行為の期間を考慮し、運営企業の全世界の年間総売上高の6%を上限に罰則を定めている。

 Temuは、同法に基づき今年8月末までに、リスク評価義務の違反を是正するための行動計画を欧州委員会に提出する必要がある。これに基づき、欧州デジタルサービス委員会は、計画の受領から1カ月以内に意見を公表。欧州委員会はさらに1カ月以内に最終決定を行い、改善に向けた取組みの合理的な期間を設ける。決定に従わない場合は、追加的な違約金の支払いにつながる可能性がある。

 欧州委員会は24年10月、Temuにおける違法商品の流通に関するリスク評価義務を含む手続きを開始した。25年7月に中間報告を公表した。

 DSAに基づくリスク評価の不遵守については、情報提供要請に関するTemuの回答、第三者情報、外部の調査機関が行った覆面調査に基づき調査を進めた。調査は、1違法製品販売、不正業者の出品制限のために導入しているシステム、2ゲーム性のある報酬プログラムを含む中毒性のある設計に関するリスク軽減のためのシステム上の措置、3レコメンド等に関する指標の開示などDSAの義務遵守――などに焦点を当てた。

 Temuは近年、EUで高い人気を持ち、業績も堅調に推移している。EUには23年に参入。ユーザー数は、1億3000万人ほどいるとされる。

 国内では、Temuの運営会社であるWhalecoJapan(ホエールコジャパン)が今年1月、モールで販売される製品の安全基準の強化等を目的にした「日本製品安全誓約」に署名している。

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