ゾゾ、下期の巻き返しへ“切り札” 送料無料&10%ポイント還元開始

【2012年12月号】

スタートトゥデイは、11月1日から運営するファッション通販モール「ゾゾタウン」で全商品を送料無料にするとともに、ポイント還元率を1%から10%に引き上げた。両施策はコスト負担が大きく諸刃の剣となり得るだけに、業界内外でさまざまな意見が飛び交っているが、ゾゾへの対抗策として11月7日に総合仮想モール大手のアマゾンジャパンが「ファッションストア」で10%ポイント還元キャンペーンを開始するなど、規模拡大が見込まれるファッションEC市場を舞台にサービス競争が加速しそうだ。

スタートトゥデイは今下期(2012年10月~13年3月)、「ネット上はもちろん、リアル店舗と比べても圧倒的にお得なゾゾタウンを目指す」(前澤友作社長)とする。というのも、ゾゾの業績自体は底堅く成長を続けているが、2012年3月期は売上高、営業利益とも期初計画にわずかに届かなかった。今上期も、新客の開拓や正価販売比率の改善を図るべく、新たな取り組みを矢継ぎ早に実施したものの売り上げへのインパクトは乏しく、結果的に宣伝費を含めたコストアップが利益を圧迫して減益となるなど、“強いゾゾ”の姿が薄れつつあった。

この局面を打開し、通期で増収増益という期初計画を達成するために打ち出したのが「送料無料」と「ポイント10%還元」という切り札だった。“お得感”を前面に出して既存会員約500万人の購入頻度を高めるとともに、新規客の獲得にもつなげる。

同社は今回の施策を始めるのに当たり、事前にアンケート調査を実施。ゾゾの利用者に限らずファッション好きの20歳~40歳の男女1000人を対象に「欲しいファッションアイテムが1円でも安ければネットで購入するか」を聞いたところ、72%が「はい」と回答したという。

また、同時にゾゾの利用者4396人にメルマガを通じて行ったアンケートでは、「ポイント還元率が3~5%になり、配送料が完全無料になった場合、ゾゾの利用金額はどのくらい増えそうか」という質問に対して、回答者の年間平均購入額は現在の6万9600円に比べて69.5%増の11万8000円になるという結果を得たという。

ゾゾでは「安さを求める72%の消費者を無視できない」(前澤社長)として、今回の施策を決断。ファッション商材のEC化率アップと、ゾゾユーザーの利用頻度向上につなげる狙いだ。

ともに無期限での実施が前提だが、ポイント還元率はアパレル業界全体に影響を与えることが予想されるため、「状況を見極めて判断する」(前澤社長)としている。

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広告宣伝費を原資に

ゾゾでは、送料無料とポイント還元率アップを実施する原資を確保するため、これまでタレントを起用して派手に放映してきたテレビCMをやめるなど、広告宣伝費をギリギリまで抑えてコスト増に対処するという。すでに、アフィリエイトプログラムを11月30日で終了することをパートナー企業および個人アフィリエイターに通知しているほか、リスティングやSEO、ディスプレイ広告といったウェブ集客の定番についても徐々に絞っていく考えのようだ。

送料無料化については、2009年4月から1年間のキャンペーンを実施した経験から、出荷単価が下落する一方、新規客の獲得や休眠客の掘り起こしにつながるといった受注データの変化を蓄積しており、2013年10月に稼働を始める新物流センターも含めて出荷量の拡大に対応する。

ポイントの10%還元はプロパー(正価)商品に限定しており、商品点数、売り上げ規模ともに全体の7割弱を占める。一方、セール品やアウトレット、一部高額ブランドなどに加え、11月12日から取り扱いを始めたブランド古着のポイント還元率は従来通り1%に据え置くが将来的にはゼロとし、正価販売比率の向上につなげる。

「送料無料化」は潮流に

今回、ゾゾが切った2つのカードについて、競合のファッション通販モールは、「力比べには乗らずに、独自路線で自社のサービス向上に努めるのが優先」とする声がある一方、「ゾゾの施策に追随する企業が出てくるのでは」とし、条件の良い売り場に顧客が流れるのを阻止したい思いもチラつく。

取引先ブランドからは、「ネット売り上げの拡大につながる施策として期待している」などの意見がある一方、「お得感を前面に出したことで売り場のイメージが変わらないか心配」との声があるほか、2つの施策に伴う大幅なコストアップが契約条件に影響しないかを懸念する声もある。

ただ、今回の施策によってゾゾの集客力が一段と高まるのは必至で、ブランド側ではゾゾ向けの展開商品を拡充したり、店頭にもネットにも振り分けられるフリー在庫をゾゾに集中させる動きも出てきているようだ。

施策別に見ると、送料無料化はブランド側でも実質的にサービス化している企業があるほか、物流に強いアマゾンの戦略や、出店者への送料課金に踏み切った楽天の取り組みも含め、ファッションECでも送料無料がスタンダードになるという見方は少なくない。

ポイント還元については実店舗のショールーム化などを危惧する声が多いのも確かで、急速なEC化を歓迎しないブランドの信頼を損なえば、ゾゾの優位性のひとつでもある「品ぞろえ」に影響が出ることもあり得る。ただ、ゾゾの売り場を中心としたネット販売の成長が業績を下支えしている企業もあり、簡単には“ゾゾ離れ”できないのが実情と見られ、大手セレクトショップなどが“ゾゾで買った方がお得”という状況をどこまで容認できるかが、ひとつのカギになりそう。

「地殻変動を起こし続けたい」(前澤社長)とする同社。今回の施策については、あくまで消費者が利用しやすいサービスを追及してのことで、「アマゾンなどの影響はない」(同)と強調する。実際、ゾゾは総合仮想モールに比べてファッション商材の品ぞろえや検索機能の優位性、サイトの見せ方、取引先ブランドからの信用をベースにした在庫連動の取り組みなどで大きくアドバンテージを得ている。

今回の施策でポイントの汎用性や価格優位性などで勝負する総合仮想モールの土俵に乗ってしまう危険性は捨てきれないが、商品取扱高1000億円の壁を乗り越えるには、これまで力を注いできた“ファッション好き”の囲い込みだけでなく、将来のライバルとなり得る巨大モールの客層にも早くからアプローチする必要はありそう。

競合の対策には隔たり

競合でいち早く行動を起こしたのはアマゾンジャパン。11月7日に「ファッションストア」で10%のポイント還元を開始し、従来から実施している「通常配送料無料」「30日間返品送料無料」と合わせて顧客を取り込む。ただ、対象となるのは同社が販売・発送するファッション商材で、「アマゾンマーケットプレイス」の出品者が販売する商品は対象外。そのため、アマゾン内で扱う約3000ブランドのうち80ブランド程度にとどまっており、ややインパクトに欠けるのが実情だ。

他の競合各社は期間限定の取り組みで“様子見”の状況だ。楽天は11月9~16日まで、ブランドの公式ショップを集めた「楽天ブランドアベニュー」で40ブランドを対象にポイント10倍キャンペーンを展開。スタイライフも11月10~17日まで「全品送料0円×ポイント最大10倍キャンペーン」を実施し、購入金額に応じてポイントを5~10倍付与する。また、「ファッションウォーカー」が送料無料期間を延長して対応しているほか、「マルイウェブチャネル」も11月13~30日まで全品送料無料にした。一方でマガシークはこうした動きとは一線を画して独自展開で勝負するという。

当のゾゾについては、大手取引先が「11月以降、ゾゾでの販売量が大幅に増えている」とし、切り札の効果が顕著に出ているブランドもあるようだが、継続的に想定した売り上げにつながるのか、業界内外で注目されそうだ。

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