サイト上の接客や販促、 顧客対応など続々と【AIの通販活用】

三越伊勢丹では伊勢丹新宿本店メンズ館で接客に「センシー」を活用

人工知能(AI)の開発や運用が徐々に進んでいる。通販の分野でもAIを使った取り組みが始まっており、例えばアプリや通販サイト上での接客や、最適なタイミングを見計らってサイト上で販促を仕掛けるといったことがすでに行われている。今後は顧客対応や通販サイトでの商品登録など、これまで人間が行ってきた業務をAIによって自動化することも可能になるという。そこでAIによる通販支援の状況や今後の可能性を見ていく。

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ユーザーの“センス”を学習

アプリ開発のカラフル・ボードが手がけている人工知能アプリ「SENSY(センシー)」は、ユーザーに対して同アプリが専属のスタイリストのように商品を提案する。ユーザーはその提案に対して「いまいち」か「いいね」で好き嫌いを選択していく。

これを繰り返すことでAIがユーザーの“ファッションセンス”を学習するため、選べば選ぶほど自分の好みに合ったアイテムが見つけやすくなるという仕組みだ。アプリを通じて見つけた商品は、そのまま提携先ブランドの通販サイトで購入することができる。

11月末には婦人服ブランド「キャサリンロス」などを扱うイケガミの自社通販サイト内に「センシー」を搭載した。企業の通販サイト内に「センシー」が導入されるのは初めてのことで、サイトの訪問客に対して服の好みを尋ねてコーディネートの提案などウェブ上の接客に活用している。

三越伊勢丹も「センシー」を接客に利用している。三越伊勢丹は11月25日から12月31日の期間、伊勢丹新宿本店メンズ館で「センシー」を活用した接客プロジェクトを実施。専用スペースにデジタルサイネージとタブレット端末を設置し、販売員が一人付いて、来店客に操作方法や商品の場所などを案内している。

来店客はまず、タブレットの画面にランダムに並ぶ20度のアイテムの中から気に入ったものをチェックする。その情報をもとにAIが伊勢丹新宿本店メンズ館で扱っている商品の中から客の好みに合ったアイテムを提案する。対応している商品は伊勢丹新宿本店メンズ館の商品のうち500~750アイテム。掲載商品を一覧で見ることができる機能も登載しているため、カタログとしても利用できる。また、アイテム画像をタップすると、三越伊勢丹の通販サイトに遷移してオンライン上で商品を購入することも可能。

三越伊勢丹の伊勢丹新宿本店紳士・スポーツ営業部メンズクリエーターズセールスマネージャーの石田修平氏によると、「『センシー』のアプリをお客様にさわっていただき、好みに合った提案をします。その結果、販売員が『2階と6階に行ってみましょう』といったブランドの枠を超えた接客ができれば、館内に波及効果が生まれると期待しています」と述べる。「センシー」を使った提案によって、買い回りの促進につなげる狙いだ。

三越伊勢丹の「センシー」を使った接客プロジェクトは9月に続き2回目の実施となる。前回は単品の提案だったが今回はバージョンアップし、コーディネートで提案する機能を追加している。さらに伊勢丹新宿本店メンズ館の“バイヤーのAI”によるお薦め商品も閲覧できるようになっている。

また、12 月中旬からは三越伊勢丹とカラフル・ボードの両社によるアプリ「SENSY×ISETAN MEN’ S」の配信も始めた。これによりユーザーは店頭まで足を運ばなくても「センシー」を体験できるようになった。カラフル・ボードの経営企画Divリーダーの石井裕氏は「持ち運べる人工知能として自宅でも店頭でも利用できるため、全国の人に使ってもらいたいです」と期待を寄せている。

マンションの一室で生まれたAI

AIは、通販サイト上の販促ツールとしても活用され始めている。サイトに訪れたユーザーに、最適なタイミングで割引クーポンなどのオファーを提示して購買につなげるというものだが、すでに複数のサービスが運用されている。それぞれインセンティブを与するという点は同じだが、タイミングや対象の抽出方法といったアプローチの仕方はAI によって異なる。

Emotion Intelligence(エモーション・インテリジェンス)は、AI がユーザー「感情」を分析し、買おうか悩んでいるタイミングを見計らって、クーポンで“最後の一押し”をするというツール「ZenClerk(ゼンクラーク)」を提供。「ゼンクラーク」は通販サイに埋めた1行のトラッキングタグから0.03秒ごとにマウスやスクロールの動き、ページ遷移のパターンなどをリアルタイムに取得し、機械学習によってAI に教え込む。

例えばユーザーが通販サイトで様々なワンピースを閲覧し、そのうちの1つの画像にマウスで丸印を付けたり、商品の値段やサイズなどをチェックする。そして最後にレビューを読む。こうした動きをAIに解析させることでそろそろ買いそうな確率や買わない確率が分かる。どのユーザーをコンバージョンさせたいかという企業側の意向を反映させ、最後に「1000円オフ」などのクーポンを出すという仕組みだ。

同社代表取締役の音田康一郎氏によると、ユーザーは流入してからコンバージョンするまでの間にいろんな商品に気持ちを引かれて迷い、買ったり買わなかったりするが、「そういった中間データは今まで捨てられてきました」と指摘する。「それをどうにかウェブ上のユーザーの行動から分析できないかということを続けてきました」(音田氏)という。

「創業メンバー3人が同じアパートに住み、1年間『ゼンクラーク』を作っていました」と語るのは共同代表の桑礎氏。そもそものアイデアは音田氏が、「アマゾン」で買い物をしている桑山氏の様子を後ろから見ていて、「そろそろ買いそうだ」というのが分かったことだという。マウスやスクロールの動き、ページ遷移のパターンなどから購入のタイミングを検知できた。これを機械に応用して、マウスの動きなどを把握してその情報を使うことで、「実際に人間と同じような判断が可能になりました」と音田氏は説明する。リアル店舗では店員が客の行動を眺め、話しかけるべきかどうか判断している。それを機械にやらせているというイメージだ。

「ゼンクラーク」の導入社数は非公表だが、ディノス・セシールやQVCジャパン、日本ランズエンドなどが導入しており、導入サイトの流通額は月間で200 億円程度となっている。

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