コロナ禍が落ちついたことで消費者が通販から実店舗へ回帰する傾向が顕著になっている。こうした中で、消費者を引きつけるために重要なのは、やはり商品力。これまでナショナルブランドを販売していたEC専業が、既存の商品が拾いきれていないニーズの獲得を目指し、プライベートブランド(PB)商品を開発する動きがみられる。また「仕入れ商品を売る」だけでは飽き足らず、社会問題解決の一助とすべく、商品を投入するEC企業もある。商品開発の最前線を追った。
事例1:ストリーム
ドライヤーと除湿機を発売商材拡充しブランド育成へ
家電ネット通販大手のストリームが手掛けるプライベートブランド(PB)「enas(イーネーズ)」では、同ブランド第2弾の商品として高級ドライヤーを、第3弾として除湿機を同社通販サイト「ecカレント」で発売した。
高価格帯で勝負
同社がPBを立ち上げたのは2020年7月。第1弾としてブルートゥースCDプレーヤー「enasEASYCDPLAYER」を発売した。営業本部商品営業部商品MDグループの渡邉航志課長は「間を置かずに新商品を投入したかったのだが、コロナ禍の影響で共同開発している中国メーカーとのやり取りが途絶えてしまった」と振り返る。
3年ぶりに発売するPBとして選んだのは高級ドライヤーだ。近年、ドライヤー市場は、ダイソンが大風量の高級ドライヤーを投入したことを契機に商品単価が向上。パナソニックを筆頭に各社が高額商品を投入し、競争が激化した。コロナ禍が明けてからも、消費者が外出する機会が増えたこともあり、需要は拡大している。
渡邉課長によれば「第1弾の商品はニッチ向けだったが、次は消費者の目に付きやすい価格帯の商品を販売したいと考えた」のが高級ドライヤーを選んだ理由という。
発売する「キャビアドライヤー」(価格は3万4980円)は、キャビアエキスを凝縮したいキャビアエキスピース」をセットにした専用のキャビアノズルを付属しているのが特徴。キャビアエキスピースの成分には、保湿効果や抗酸化作用を持つ各種ビタミンや、髪の紫外線ダメージを回復し、髪の水分を保つ各種アミノ酸などが含まれる。ドライヤーからのマイナスイオンと大風量により、キャビアエキスの有効成分を髪に浸透させることができるとする。
また、他社の高級ドライヤーに搭載されている機能として、温風・冷風を交互に切り替えることで髪へのダメージを少なくする「冷温循環」を搭載。デザインとしては、近年の流行であるショートノズルを採用した。
“隙間市場”を狙う
ドライヤーと同時に発売したのが、コンパクトな除湿機「すみっこドライ」(価格は1万4980円)。最近の除湿機は、衣類乾燥機能を搭載した大型のものが主流だ。「ただ、衣類乾燥をしない場所で除湿機を使用したいというニーズもあるはず。そこで、衣類乾燥機能を外すことで価格を抑え、置きやすさや使い勝手を考えた小型除湿機を市場に投入しようと考えた」(渡邉課長)。
商品名には「部屋の隅の目立たない場所に置いて使ってほしい」という意味を込めたという。利用シーンとしては、玄関にあるシューズケースの近くや、クローゼットの中、押入れの奥などを想定。7色に光る「ムードランプ」を搭載することで、暗い場所に置いても除湿機の位置が分かるようにした。除湿方式にはペルチェ式を採用。金属板に電気を流すだけなので、コンプレッサー式と比較すると機構が簡易なため、小型化しやすいほか、駆動音が小さく、消費電力も抑えられる点がメリットとなる。価格的には大手仮想モールなどで売られている、中国製の安価な除湿機と、衣類乾燥機能付き除湿機の中間に位置する。渡邉課長は「安価な除湿機は性能面で問題があるものもあり、一方で高性能な除湿機は高価でサイズも大きい。その中間となる“隙間市場”に当て込む商品だ」と語る。家電ネット通販大手では、エクスプライスが展開する「マクスゼン」が白物家電や液晶テレビなどを投入し、知名度を高めている。ストリームではイーネーズというブランドを育てるために、家電ジャンルで幅広く商品を投入していく。冷蔵庫や洗濯機、エアコンなども視野に入ってくる」(同)とする。10月25日には、第4弾アイテムとして水拭き掃除機「ウェット&ドライスマートクリーナー」(価格は4万4980円)を発売している。販路に関しても、今回のドライヤーと除湿機に関しては、自社サイトや仮想モール店以外でも販売していきたい考えだ。
[ この記事の続き… ]