医薬品EC規制訴訟、判決が間に合わず ケンコーコムが訴え変更し第2ラウンドへ

要指導医薬品の指定差し止め訴訟を提起し会見を開いたケンコーコムの後藤代表

ケンコーコム(KC)が国(厚生労働省)を相手取って提起した処方せん薬のネット販売を行う地位確認訴訟と、要指導医薬品の指定差し止め訴訟が第2ラウンドに突入する。いずれも6月12日施行の改正薬事法施行規則(省令)に盛り込まれた規制に関する訴訟だ。

改正薬事法の施行日までに判決が出なければ、訴訟の意味がなくなるため、KCは裁判所側に判決を急ぐよう求めていたが、書面の作成・提出などで国側の時間稼ぎとも受け取られかねない対応もあり、審理の進捗が停滞。裁判所側は5月21日に開かれた期日で、施行日までの判決は不可能との考えを示した。これを受け、KC側は別途の訴訟提起、訴えの内容を変更し、改めて国と争う構えを見せている。

処方せん薬、地位確認訴訟 取り下げ別途訴訟提起を検討

KCの訴えについてをみると、まず、処方せん規制訴訟は、改正薬事法に伴う新省令で処方せん薬のネット販売を禁止する内容が盛り込まれたことを受けて2013年年11月に提起。事前にオープンな検討が行われた形跡がないまま新たな省令に処方せんのネット販売禁止を盛り込んだことを問題視。それまでの省令で処方せん薬のネット販売を禁止する明確な記述がないことなどから、改めて処方せんネット販売を行う地位の確認を求めたものだ。

この訴えは、改正薬事法施行前の旧省令に関するもので、改正薬事法案成立(13年12月)前の段階で東京地方裁判所に提起したもの。KC側としては、早急に法的手段を取るために提起した訴訟だが、改正薬事法とともに新省令が施行された場合、訴訟自体の意味がなくなるという側面もあった。

このためKC側は、裁判所側に迅速な審理を求めていたが、5月21日の同訴訟第3回期日で、谷口豊裁判長は「(改正薬事法の)施行日までに判決を出すのは不可能というのが裁判所の考え方」と説明。先の一般用医薬品ネット販売を行う地位の確認訴訟(13年1月最高裁判決)でポイントとなった規制の違憲性(営業の自由の侵害)に関する審理が不十分で「生煮えのままで判断はできない」(谷口裁判長)とした。

先の一般用医薬品ネット販売規制訴訟で焦点となったのは、規制の違憲性と省令による規制の薬事法の委任範囲。KC側は今回の訴訟の判決を急ぐため、委任範囲の部分のみでの判断も求めていたが、裁判所は違憲性に関する議論は避けられないと判断したわけだ。

一方で、裁判所側は、規制の違憲性に関する議論を十分に行うため、今回の地位確認訴訟を取り下げて別途訴訟を提起する手段もあるとの案を提示。これに対しKC側は訴訟を取り下げ、別途、規制の違憲性を問う訴訟の提起を検討する考えを示した。

要指導医薬品、差し止め請求の訴えを変更へ

一方、要指導医薬品の指定差し止め訴訟は、従来、販売が可能だったスイッチ直後品目を新たに創設した要指導医薬品に分類し、ネット販売を禁止することを規制と捉え、その指定の差し止めを求めて14年1月に提起したもの。こちらも施行日前の判決出しが間に合わないことを受け、KC側は、訴えの内容を指定後取り消し、もしくは要指導医薬品のネット販売を行う地位確認に切り替えて争う考えだ。

KCが提起した2つの訴訟。時間との戦いの様相を呈した第1ラウンドは、時間かせぎとも言える対応が目立った国側の思惑通りになったとも言える。今後、KC側が訴えの中身を変更し、法廷闘争は第2ラウンドに入っていく見込みだが、シビアな憲法問題に踏み込まなければならない案件もあり、長期戦は避けられない情勢だ。

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