ファンケルとキリンが資本業務提携 ―― キリン1300億円出資し、筆頭株主に

資本業務提携に合意したファンケルとキリンHD(写真は左から、ファン ケルの島田和幸社長兼CEO、池森賢二会長、キリンHDの磯崎功典社長)

ファンケルは、キリンホールディングと資本業務提携を締結する。キリンが2019年9月6日付で1293億円を出資し、ファンケルの発行済株式の30.3%(議決権ベースで33%)を持つ筆頭株主になる。ファンケルは、キリンの持分法適用会社になる。両社が強みとする研究開発力を背景に共同研究や、商品の共同開発を進める。インフラの相互活用も行う。

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事業重複少なく「相互補完でシナジー」

キリンは、ファンケル会長で創業者の池森賢二氏やその親族から株式を譲受する。提携に伴い、キリンは、ファンケルに3人の役員を派遣する。

提携の理由について、キリンの磯崎社長は「健康寿命の延伸という社会課題に取り組むファンケルの方針は、健康事業を成長の柱として育成するキリンの方針と完全に一致する」。ファンケルの島田社長は、「事業は重複が少なく相互に補完関係にある。幅広い分野でシナジーが期待でき、研究開発型メーカーとしての強みを発揮できると確信している」と話す。

両社は、研究開発力を強みに、独自の素材や製剤技術を持つ。今後、独自素材を活かしたサプリメント、キリンの酵母・発酵技術を活かしたスキンケアの共同開発や共同研究を進める。

販売面でも連携する。キリンの自動販売機チャネルや、ファンケルの直販チャネルなど互いの販売網も活用。キリンは、「研究開発型企業としてよい素材を持っているが、それをどうマーケティングするかという点は単独では難しい」(磯崎社長)とも話しており、ファンケルの持つ知見に期待している。原料の共同調達によるコスト低減、生産設備などインフラの相互活用も進める。

池森会長、会社の将来に「最良の道筋」

提携の背景について、池森会長は、「今年82歳になった。ファンケルの将来をきちんと判断できるうちに社員、役員にとって最良の道筋をつけることが自分に課せられた役割と考えた」と話す。

キリンは08 年、協和発酵工業(現・協和キリン)を子会社化した。それから11年が経過したが、同社の企業風土を尊重し、良好な関係を築き続けている。このため「ファンケルのブランドを守り続け、独立性を維持しつつ、社員、役員を大切にしてくれると思った。以前から品位のある会社として好印象を持っていた」(池森会長)と話す。ファンケルのブランド価値を守るため、「買値を競わせる売り方はしたくなかった」(同)と、当初から意中の1社に絞り交渉を進めてきという。

ファンケルの独立性は維持

資本業務提携で、キリンはファンケルに対する一定の影響力を持つ。今後の経営について、磯崎社長も「ファンケルの経営にコミットする機会もある」と話す。ただ、一般株主を含め、33%からさらに株式取得を進める検討には「現段階で満足している」と否定する。協和キリンのケースは50%超の株式を持つマジョリティ出資。一方、ファンケルは、過半数を割るマイノリティ出資。「十分独立性は保てている」(磯崎社長)と話す。

ファンケルは、多くの愛用者が一般株主でもあり、株主と会社の絆が深い。「経営理念やブランド、お客様との関係など、ファンケルが重視する点を理解し、従業員を大切にしてくれる会社であることが提携の決め手になった。すでに信頼関係は築かれつつある」と、島田社長も話す。上場維持も約束されている。

ファンケルは1980 年、化粧品による肌トラブルが社会問題化する中、「無添加」をコンセプトにした商品を開発、創業した。以来、世の中の「不の解消」を掲げ、健康食品の価格破壊などさまざまな事業領域に挑戦してきたベンチャーだ。社員にとって池森会長は精神的支柱でもある。今後の経営体制について、池森会長は、「提携が成立した段階で退きたいと考えた。ただ、両社から慰留がある。存在そのものが弊害になってはいけない。いることがプラスかマイナスか、自身で考えて結論を出す」と話す。

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